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第二章 いざ捜査へ
24.一条家
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一条くんの家は、まるで大河ドラマに出てくるような日本家屋の大御殿だった。
果てが見えないほど長い塀に囲まれた内側にはたくさんの建物があり、庭の池では錦鯉が優雅に泳いでいる。
「ちゃんと案内してやりたいんだけど、今日大広間の方がバタバタしてて」
「どうりで人の出入りが多いわけね。観光地かと思ったよ」
アキくんの言う通り、さっきから何人ものスーツを着た大人たちが出入りしている。中には着物を着ている人もいたけど、みんな早足で移動していて忙しそうだ。
「ここ一か月ずっとこんな感じなんだ。騒がしくて悪いな」
「別邸の鍵が見つからないんだっけ。ソウのひいおじいちゃんが使ってた」
顎に手を当てて言ったそう白鳥くんに、アキくんは嫌そうな顔をした。
「物なくしすぎじゃない?」
「耳が痛いな。これから気を付ける」
「ちなみに、鍵の捜査に人員が割かれているせいで寄木細工が放ってかれてるんだぜ」
どうやらそれまで千代さんが別邸を管理していたみたいで、鍵も一人で保管していたんだって。遺品整理と同じタイミングで別邸にも入ろうとしたところ、鍵が紛失したことに気付いたようだ。
「鍵屋さんを呼ばないの?」
「なかなか古くて珍しい鍵でな、できれば壊したくないらしい。おかげで親戚も巻き込んだ大捜索が続いてるんだが……父さんたちもその関係で出かけてる」
それは寄木細工が見つからないわけだ。
大事な物も別館にいっぱいあるらしいから、必死になって鍵を探す気持ちも分かる。最後まで千代さんが大事に持っていた寄木細工と違って、鍵の方はいつなくしたのかも分からないし。
(だからって寄木細工を諦める理由にはならないけどね!どっちも大切なものなんだから、一緒に探せばいいのに)
千代さんが持っていた寄木細工のことを思い出して、少し八つ当たりをしてしまう。
「邪魔するわけにはいかないからこのまま蔵に直行するつもりだ。ちゃんともてなせなくて悪い」
「大丈夫!気持ちだけで十分だから!」
むしろ助かった。こんな立派なお屋敷の広間でたくさんの大人に囲まれてゆっくりなんて、できるわけもない。
作法もよくわからないし、何より不相応すぎて緊張する。
「ひいばあちゃんの部屋と蔵は敷地の奥だ」
颯馬くんに案内されるまま、私たちは進んでいく。
白鳥くんは慣れた様子だけど、私とアキくんは言葉を失って呆然とあたりを見回している。友達の家というよりは文化遺産を見学している気持ちになって、足を止めずに付いていくのが精いっぱいだった。
「ここ、眼鏡外したらそこら中に居そうだね」
「家自体も古いから、そこの柱とかにもいるんじゃないかな?」
というか、この屋敷自体が付喪神になってるのかも。
上手く言えないけど、屋敷に入った時から空気が違う気がする。直感的に居ると思わされたというか。
すっかり圧倒されている私を現実に戻すかのように、突然声をかけられた。
果てが見えないほど長い塀に囲まれた内側にはたくさんの建物があり、庭の池では錦鯉が優雅に泳いでいる。
「ちゃんと案内してやりたいんだけど、今日大広間の方がバタバタしてて」
「どうりで人の出入りが多いわけね。観光地かと思ったよ」
アキくんの言う通り、さっきから何人ものスーツを着た大人たちが出入りしている。中には着物を着ている人もいたけど、みんな早足で移動していて忙しそうだ。
「ここ一か月ずっとこんな感じなんだ。騒がしくて悪いな」
「別邸の鍵が見つからないんだっけ。ソウのひいおじいちゃんが使ってた」
顎に手を当てて言ったそう白鳥くんに、アキくんは嫌そうな顔をした。
「物なくしすぎじゃない?」
「耳が痛いな。これから気を付ける」
「ちなみに、鍵の捜査に人員が割かれているせいで寄木細工が放ってかれてるんだぜ」
どうやらそれまで千代さんが別邸を管理していたみたいで、鍵も一人で保管していたんだって。遺品整理と同じタイミングで別邸にも入ろうとしたところ、鍵が紛失したことに気付いたようだ。
「鍵屋さんを呼ばないの?」
「なかなか古くて珍しい鍵でな、できれば壊したくないらしい。おかげで親戚も巻き込んだ大捜索が続いてるんだが……父さんたちもその関係で出かけてる」
それは寄木細工が見つからないわけだ。
大事な物も別館にいっぱいあるらしいから、必死になって鍵を探す気持ちも分かる。最後まで千代さんが大事に持っていた寄木細工と違って、鍵の方はいつなくしたのかも分からないし。
(だからって寄木細工を諦める理由にはならないけどね!どっちも大切なものなんだから、一緒に探せばいいのに)
千代さんが持っていた寄木細工のことを思い出して、少し八つ当たりをしてしまう。
「邪魔するわけにはいかないからこのまま蔵に直行するつもりだ。ちゃんともてなせなくて悪い」
「大丈夫!気持ちだけで十分だから!」
むしろ助かった。こんな立派なお屋敷の広間でたくさんの大人に囲まれてゆっくりなんて、できるわけもない。
作法もよくわからないし、何より不相応すぎて緊張する。
「ひいばあちゃんの部屋と蔵は敷地の奥だ」
颯馬くんに案内されるまま、私たちは進んでいく。
白鳥くんは慣れた様子だけど、私とアキくんは言葉を失って呆然とあたりを見回している。友達の家というよりは文化遺産を見学している気持ちになって、足を止めずに付いていくのが精いっぱいだった。
「ここ、眼鏡外したらそこら中に居そうだね」
「家自体も古いから、そこの柱とかにもいるんじゃないかな?」
というか、この屋敷自体が付喪神になってるのかも。
上手く言えないけど、屋敷に入った時から空気が違う気がする。直感的に居ると思わされたというか。
すっかり圧倒されている私を現実に戻すかのように、突然声をかけられた。
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