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第一章 初めての依頼

17.認められるということ

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(物に宿った命が見えて話せるって、意味わかんないよね……)


  話していくうちに冷静になっていって、だんだんしりすぼみになっていく。
 颯馬くんは本気で困っていたのに、突然こんな話されて困っただろう。白鳥くんはオカルトなんて信じ無さそうだし、ふざけるなって怒られるかもしれない。


「……それで、この間の事件も、本当は付喪神に力を貸して貰ったんだ。隠しててごめんなさい。あ、信じられなくても気にしないから!なんだったらこの話忘れるしっ!」


 気に病まないように、なるべく明るく付け加える。
 恐る恐る颯馬くんたちの顔色を窺えば、何故か輝くような笑顔を浮かべていた。


「……す」
「えっ?」
「すごいな!!あんなに知識があるのに、付喪神まで見えるんなら最強じゃないか!?」


 ちらりと白鳥くんに視線を向ければ、目を丸くしてとても面白い顔をしていた。でも、悪い感情はないように見える。
 二人とも、私を疑っている様子が少しもない。あまりにもあっさりとしすぎて、逆に心配になってしまった。


「嘘だって思わないの?」
「嘘なのか!?」
「違う!違うけど……付喪神だよ?そんな荒唐無稽な話、簡単に信じられるわけない」


 現に小学校のころは誰も信じてくれなかった。
 だけど、颯馬くんはむしろ不思議そうな顔をしている。


「でも、お前にとっては当たり前なんだろ?そりゃあ、俺だって突然言われたら驚くと思うが、あの時の七瀬を見ているからな!桜二もそう思うだろ?」
「うん。だいぶ驚いたけど、オレもユキが嘘をついてるって思ってないよ。そんなタイプに見えないし」


 流し目を送られて、ドキリとする。


「七瀬の目には負けるけど、桜二の人を見る目だってなかなかだぜ?」


 鼓動が早くなる。
 私、こんな素敵な人たちに認めてもらえたんだ……!


「俺はやっぱり七瀬に頼みたいな。そんな大事な話をしてくれたってことは、期待してもいいのか?」
「――うん!精一杯頑張るよ!」


 大きくうなずいた私に颯馬くんはホッとしたように息をつくと、挑発的な笑みをアキくんに向けた。


「七瀬はああいってるけど、秋兎はどうするんだ?ちなみに、人手が増えるのは大歓迎だぞ」
「もちろん、ぼくも行くよ。一条家の蔵に興味があるのは本当だし」


 アキくんは眉間のしわを深くしながらも、どこか嬉しそうだった。


(一人だと心細いから、アキくんも居てくれるのは嬉しいな)


 その後、颯馬くんたちは英蘭会の仕事があるということでいったん解散となった。私の話で時間を取らせてしまっただろうから、そこは申し訳ない。
 ひとまず次に集まる日付だけ決めて、私とアキくんは一足先に帰ることになった。


(あの時、怖がらないで力を使って本当に良かった)


 蘭の館を出た瞬間、私は呼吸を思い出したかのように大きく息を吸った。
 館に入ったときのような緊張感からではなく、興奮と期待で胸がいっぱいだったからだ。


(よし、それまでに私もできることをやってみよう!)

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