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第一章 初めての依頼

08.入学

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 四月。とうとう英蘭学園中等部に入学する日がやってきた。

 憧れの制服に袖を通し、身を引き締める。
 白いジャケットに、灰色のタータンチェックのスカート。ジャケットの袖口とスカートの裾には、学年カラーのラインが入っている。私の学年は水色で、二年生が黄色、三年生が紅藤色だ。リボンは自分で結ぶタイプで、きゅっと閉めると少し大人になれた気がした。

 眼鏡が汚れていないかを念入りに確認して、忘れ物がないかもう一度確認する。最後に髪をいつも通り結ぼうとして、採寸式のことを思い出してやめた。髪をおろしただけでも大分印象変わるし、少しは顔を隠せる方が良い。




。。。




 入学式はつつがなく進んでいく。眠らせようとしてくる校長先生の話をよそに、私は小学校とまるで違う空気にドキドキしていた。

 ずっと憧れていたお城のような校舎はピカピカで、昇降口には大きなステンドグラスが輝いている。エアコンは標準装備で、加湿器どころかウォーターサーバーまでついている。
 温水プールテニスコートコンサートホールから始まり、ドーム型の温室に乗馬部の馬用の厩舎まである。なんならお茶を飲むためのサロンもあった。なんというか、カルチャーショックである。

 目立たない程度に周りを見回していれば、ふと周りがやけに壇上を気にしていること気が付いた。いつの間にか入学式は大分進んでいて、もう外部生歓迎の挨拶まで進んでいるようだ。周りの女子……というか、雰囲気的に内部生と思われる子たちがそわそわしている。そんな空気に釣られて、私も前を向いた。

 私たち新入生が座っているところは一番壇上に近い。
 そのおかげで、マイクを持った生徒の姿はよく見えた。サラサラの黒髪はライトの光で天使の輪を作っていて、意志の強そうな瞳はまっすぐ前を見ている。全員の注目を集めているのに、まったく緊張している様子がない。


「初めまして、内部生代表の一条颯馬いちじょうそうまです。この英蘭学園でともに学べることが――」


 一条くんがスピーチを始めると、女子たちは一言でも聞き漏らすもんかと恐ろしい表情で集中している。なんなら外部生の女子にも頬を染めている子が多い。
 一方私というと、彼女たちとは全く違う方向性でそわそわしていた。


(あの黒いセーターの子だーっ!)


 そう分かった瞬間、私はさっと顔を伏せた。
 周りにこんなに人がいるんだから、私に気付くはずもない。そう分かっているけど、どうしても隠れずにはいられなかった。

 そうしてじっと下を向いていれば、やっと颯馬くんが終わりの挨拶をした。実際には三分もたってないけど、私には気絶しそうなほど長く思えた。
 パチパチと周りに合わせて拍手する。ほっと一息ついて顔を上げてば、バチリと颯馬くんと目が合った。……気がした。


(……いやいや、たまたまこっちを向いただけだよね?私を見ていたわけじゃない、よね?)


 私が意識しすぎていて勘違いしたんだろう。
 颯馬くんもすぐに目をそらしたし、きっとそうだよね?
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