『小説カフェやすらぎ・フューチャー』

2章

ディメンション・スクール（８）

「なんだか、いつもより、体に疲れを感じるな」
その日の仕事の帰り道、マスターが言った。
「わたしも、体が重い感じがする」
「ハハッ、まるで仕事つづきで、ずっと休みをとれていない疲れた夫婦のようだな」
「それって、これからわたし達が書く小説のようね」
「ってことは、今、別次元に入っているのか」
「あれっ、あれなに？」
歩いている道の先になにか光るものが落ちているのを見つけ、わたしは言った。
「もしかしたら、小説の世界地図かもしれないぞ」
わたしとマスターはその光るものに向かって走った。

マスターが光るものを拾い上げると、本当に世界地図だった。
「この地図のフランスに指をあてるとフランスに行けるのよね」
わたしは地図をのぞきこみながら言った。
「今日は疲れているから、このまま帰ろう。ワールドマップは家に持って帰って」
「うん」
マスターがトートバックに地図を入れていると、前方から強い風が吹いてきた。
「うわーーーーっ！」
わたしとマスターは風に吹き飛ばされ、宙に舞い上がった。