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2章

ディメンション・スクール(6)

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そこで、わたしはカフェに来る作家さん達に訊ねてみた。
「どんなふうに書いたら、みなさんみたいに、小説のなかの世界や別次元に行けますかね~」
作家さん達はこんなふうにこたえてくれた。
「ひとつじゃなくて、もっとたくさん小説を書くのよ」
「小説に対する思い入れをもっと強く持てばいいんじゃないんですかな」
「いいじゃない。別次元に行けなくたって」(聡子さんは今、自身が執筆している小説のことで頭がいっぱいだったらしく、こんなふうな冷めたこたえだった)

わたしとマスターは作家さん達の意見を参考にして考えて、わたしとマスター二人の共著にして小説を書くことにした。二人分のパワーが出て、作家さん達のように別次元に行けると思ったのだ。
カフェで仕事をしながらわたしはマスターに言った。
「書く小説、童話にしない? そしたら、かわいいお姫さまとか架空の動物が具現化して、わたし達の前に現れるかもしれない。おもしろそうじゃない?」
「童話かー。それもいいけど、世界中を旅する夫婦の小説はどうかな? 行く先々の国で誰かに出逢ったり、何かが起きたりして、そのたびに教訓を得るような。そうすれば、世界にまつわるものが目の前に現れて、教訓を得られて、一石二鳥だよね」
「フフッ、いいわね」
「フランスとかエジプトとかドイツとか、興味ある国がいっぱいあるから、海外ものにしたいな」
「うん、じゃあ、そうしよ!」

そのあとわたし達は海外を旅する夫婦の小説の構想を練りながら仕事をした。
そしてカフェの仕事を終えて、わたしとマスターは店から出て、歩いて10分の自宅のマンションに向かった。
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