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2章

ディメンション・スクール(3)

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けれど、別次元へ行くことを楽しんでいる作家さんもいる。
マリリンさんは小説で会社の新入社員の採用の面接官をしている女性社員を書いていて、面接に来た男性を超美形にしたら、現実の世界で翌日、電車のホームの椅子に座っていると目の前を超美形な男性が横切ったり、電車に乗って椅子に座れば隣の空いた席に超美形の男性が座ったり、ちょっと寄ったカフェのウェイターさんが超美形の男性だったり、と超美形男性のオンパレードだったらしい。マリリンさんはそれをいいことに小説を採用がなかなか決まらない設定にして、面接に来る男性、来る男性すべてを超美形に書いているそうだ。

ムーンリバーさんやマリリンさん以外の作家さんも同じように、小説にデパートのフレグランス売り場の販売員のことを書いたら、現実の世界ですれ違う人、横に座る人、目の前を通り過ぎる人、男女問わず香水の香りをさせていたり、刑事物の小説を書いたら、現実の世界でスーパーのなかに目つきの鋭い、長いコートを着た刑事風の男性が店員の控え室に入っていくのを見たり、タイを舞台にした小説を書いたら、現実の世界で地下鉄のホームを歩いていると、オレンジ色の袈裟を着たタイのお坊さんが歩いているのを見たり、小説のなかで昔のアメリカの大統領リンカーンを書いたら、現実の世界でリンカーンに似た風貌の日本人を続けて二人見たり、ホラー小説を書いていたら、現実の世界で道を歩いていると特撮メイクをしたような形相の人が近寄って来て、顔を近づけてきたり、ほかの人が聞いたら「ほんとにそんなことあるんですか?」と言いたくなるようなことがつづいているようなのだ。

その他にも悲しい話しを書くと、翌日、街の人がみんな悲しい顔をしていたり、みんなで声をあげて笑った話しを書くと、翌日、街や乗り物のなかで笑い声をよく聞いたり、黒髪のおかっぱ頭で黒くて縁の太い眼鏡の女性を小説に書くと、翌日、現実の世界でその女性にそっくりな人に会ったりする、と聞いた。
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