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神林君とキャサリンさん(24)

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私たちは『控えの間』の中央に置かれた、いくつか並んだ青いウェーブ形のベンチタイプの椅子の谷になっている部分に腰をかけた。ここはすごく高いフロアにある部屋のようで窓の外に見えるのは空を飛ぶ宇宙船や、一人乗りの空を移動するスポーツカーに似た乗り物だった。この乗り物は地球でも今、試運転されているので、地球の空でもたまに見かける。

わたし達が宇宙連合の担当者になにを言うか、事前に決めてきたことをそれぞれ頭のなかで真剣に反復していると、アーノルドさんがフッと笑ってから言った。
「大丈夫ですよ。そんなに緊張しなくても。わたしも何度か宇宙連合の人達と話したことがあるけど、そんなに堅苦しくないから」
「そうなんですか」
マスターがほっとした声を出すと、みんなも安心した顔をした。

「地球からお越しのみなさん、お待たせいたしました」
上品な声がして、部屋の入り口をみんなで見ると、首がとても長く、ゆるやかにカールした、オレンジ色に光るブロンドヘアが腰まである女性が部屋に入ってきた。全身にぴたっと張り付く、光沢のある深緑色の服を着ていて、同じ色の光沢のあるロングブーツを履いている。

「お隣のお部屋になります」
女性がわたし達を見てにっこり笑って言って、
「じゃあ、行きましょう」
アーノルドさんが言うと、みんなは立ち上がり、首の長い女性のあとについていった。

女性は部屋のなかのロケットの模型のあいだを歩いて壁の前まで行き、人差し指を壁にあてた。すると壁からボタンが出てきて、女性がそのボタンを押すと、壁に自動ドアが現れピーッと音を立てドアが開いた。わたし達は女性のあとについて隣の部屋に静かに入って行った。

部屋は広く壁の前に間隔を置いて、木や花に似たガラス製の大きなオブジェが並んでいた。ガラスのなかにはきれいな色の宝石がキラキラと輝きを放ち、バランス良く埋め込まれている。部屋の中央に、オブジェと同じ宝石が埋め込まれたガラスの大きくて丸いテーブルと肘掛け椅子が並んでいる。
「担当者の方々、地球からのお客様です。お越し下さい」
女性が言うと、ガラスのテーブルのまわりのそれぞれの椅子にさまざまな姿をした異星人がホログラムで現れた。
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