上 下
15 / 62

神林君とキャサリンさん(15)

しおりを挟む
〈ミツバチカフェ〉のドアのないアーチ型の入り口からなかに入ると、広くて日射しのたっぷり入る明るい店内に木の丸いテーブルと切り株のイスがところどころに並べられていて、そこにエディー星人が座って鉢形のお皿に盛られたジェラートのようなものを食べていた。
「おいしそ~う」
わたしがつぶやくと、
「署名をもらう前に、まずは腹ごしらえをしようか」
マスターが言って、
「うん」
わたしはこたえ、空いているテーブルに向かった。

地球より進化しているほとんどの惑星はお金の制度がなくて、エディー星でもお金が必要ないということで、乗り物も食べ物もすべて無料、とエディー星を紹介するパンフレットに書いてあった。だから、このカフェも無料で食事をすることができる。

店の奥にある木のカウンターに、ボタンを押すとジェラートのようなものが出てくる装置があった。その前にエディー星人が並んでいたので、わたし達もその後ろについて順番を待った。装置はふたつあって、右のほうからは黄緑色のジェラート、左のほうからは桜色のジェラートが出てくる。
マスターは黄緑色、わたしは桜色を選んで、装置のボタンを押した。

テーブルに戻って一口食べてみると、これがなんともおいしかった。たくさんの種類のフルーツと蜂蜜を合わせたジェラートのなかにナッツを砕いたような粒が混ざっている食べ物だった。でも、アイスクリームのようにひやっとした冷たさがない。口のなかから胃に入るまでおいしさを感じられる。
マスターのほうのジェラートを少しもらうと、同じような食べ物でフルーツの味ではなくて野菜の味がして、こちらもとてもおいしかった。
一皿食べただけで満腹感があって、なぜか気持ちがハイになってきた。
しおりを挟む

処理中です...