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神林君とキャサリンさん(9)

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「美優ちゃん、当たったよ! 当たったー!!!」
わたしがカフェのクローズ後、「自動床クリーナー」のセットをしていると、マスターがバックルームから興奮してカウンターに戻ってきた。
「当たったって、やだ! わたし達が申し込んでいたエディー星行きの宇宙船の定期便のこと?!」
「ほら、見なよ! これ! 当選だって!」
マスターが差し出した手紙を見ると、しっかりと「当選」と記されていた。
「すっご~い!! こんなことってあるんだ~」
「これでエディー星の人の署名がもらえるぞ!」
「神林君も、みんなも喜ぶよね!」
マスターとわたしは手を取り合って喜びあった。

ーーーーー

宇宙船でエディー星へ行く日になった。
エディー星行きの宇宙船の定期便の抽選に当たったことを作家さん達に告げたときは、神林君を始めみんなとても喜んでくれた。
「署名、よろしくね!」
「頼んだよ! 署名」
とみんなから言われているので、マスターとわたしの頭のなかは署名のことでいっぱい。でも、生まれて初めて宇宙船に乗ったり、エディー星へ訪れることができるので、もちろんそちらも楽しみにしている。

宇宙港行きの自動運転の電車に乗って、宇宙港へ到着するとマスターとわたしは貴重品以外の荷物をカウンターに預け、ラウンジでミルクティーを飲みながら、宇宙船の搭乗の時刻が来るのを待っていた。
ラウンジの窓からはいろいろなデザインの宇宙船が発着するのが見える。そのたび、わたし達はまわりにいる乗客達と歓声をあげた。
搭乗の時刻になってラウンジにアナウンスが入ると、わたし達はエディー星行きの宇宙船へ向かった。わたし達が搭乗する宇宙船はまわりに大きなつばのついた帽子のようなデザインをしている。
わたしは少し緊張しながらマスターの後について、ビルのドアから宇宙船につながる通路を歩いて宇宙船のなかに入った。
「わ~、きれ~い!」
「おー!」
「すごい~」
マスターとわたしはまわりの人達といっしょに感嘆の声をあげた。
円形の船内は天井や壁がキラキラ光るシルバーの金属でできていて、ところどころにカラフルな色で波のような模様が描かれている。円形の壁に沿って、宇宙船の外が見えるように窓に向かって、白いリクライニングシートが並んでいた。

(9)おわり
つづく
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