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神林君とキャサリンさん(8)

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翌週の日曜日、カフェでは神林君とキャサリンさんのことをみんなで話していた。
「なんとかならないのかしらね~」
カウンターに頬杖をついている聡子さんが言った。
「神林君、肩を落として、かわいそうだったんですよ。宇宙局から結果のメールが来たとき」
わたしは聡子さんの前にカフェオレを置きながら言った。
別の星の星人同士の結婚が認められないと宇宙連合の会議の結果が出た日から作家さん達の気持ちは沈みこんでいた。
「フーッ」
だれかがため息をつくと、店内は静まりかえった。
その静けさを打ち消すように、マスターがみんなに声をかけた。
「みんな、時間がかかっても署名を10万人集めようか。それで、僕たち自身で宇宙連合にかけあおうよ」
「わたしは賛成です。わたし達が署名のために書いた小説を、外国語に翻訳してネットに載せてもいいんじゃないですかな。外国の人にももっと署名をしてもらえるように」
七福神さんが言った。
「みんなで宇宙船の定期便の抽選に申し込んで、抽選に当たったらその星へ行って署名をもらってもいいですよね」
ムーンリバーさんがつづけた。
「そうよね、まだまだ方法があるんだった!」
「がんばろうぜ! 神林君とキャサリンさんのために」
みんなの気持ちが盛り上がってくると、
「ねえ、みんなで、駅前に立って署名をもらわない? 人通りの多いところを選んで」
聡子さんが元気な顔になって言うと、
「いいわね! そうしましょうよ」
マリリンさんが顔を輝かせてつづけた。

その日からわたし達は宇宙連合に直接かけあえる10万人を目標に署名を集めていった。小説の翻訳は自動翻訳機を使って諸外国の言語にしてネットに載せた。作家さん達は何人かで時間を決めて集まって、人通りの多い駅前に立ち、街の人からの署名を集めている。別の惑星へ行ける宇宙船の定期便はマスターとわたしも含めてみんな抽選に申し込んだ。

(8)おわり
つづく
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