上 下
7 / 62

神林君とキャサリンさん(7)

しおりを挟む
そのほかにもたくさんの作家さんが神林君とキャサリンさんの正式な結婚の署名を促すための小説をネットに書いてくれた。署名の数はうなぎ上りに増えていき、見事、目標の数、一万人に達した。マスターは喜び勇んで国連の宇宙局に署名を送り、一ヶ月後、国連の宇宙局から、宇宙連合にかけあってくれるという報告が入った。今、宇宙連合では別の星の星人同士の正式な結婚を認めるかどうか会議をしてくれていて、私たちはその結果を待っている。

「一緒にいつも暮らしていないと、結婚した気がしないんですよねー」
カフェのカウンター席に座っている神林君が言った。
「そうだろうな~」
カウンターのなかでマスターが食器洗い乾燥機からコーヒーカップを取り出しながらこたえた。
神林君とキャサリンさんは現在、正式ではないけれど結婚のスタイルをとっていて、一緒に暮らしたり、決められた滞在期間が過ぎると、キャサリンさんがオリーブ星へ一時戻ったりしている。
「キャサリンさん、こんどいつ地球に来られるの?」
両手でお盆を抱えながらわたしが訊くと
「一週間後なんですよ~」
神林君がこたえた。
「宇宙連合の会議の結果が良いといいよな」
神林君のとなりの席に座っているムーンリバーさんが言った。
「はい」
神林君が言った。
「ポロロン♪ ポロロン♪」
マスターの腕にはめられたメールチェックができる腕時計の着信音が鳴った。
「おっ! 国連の宇宙局からだ」
マスターは腕時計を見て、メールを確認した。
みんなが固唾をのんで見守っていると、マスターが首を横に傾け静かな声で言った。
「神林君、残念だけど、宇宙連合の会議で、別の星の星人同士の正式な結婚は認められなかったそうだ」

(7)おわり
つづく
しおりを挟む

処理中です...