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2章
ディメンション・スクール(31/ラスト)
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わたし達はすぐに、ワールドマップを使って、今朝、カフェへ向かう途中だった道へ戻った。足早に歩き、カフェに着くと、マスターは長財布の半分くらいの大きさの折りたたみ式のパソコンのボタンを押した。パソコンは自動的に上下左右に開いてサイズが大きくなり、マスターはディメンション・スクールの予約の状況を調べ始めた。
「美優ちゃん、ラッキーだったよ! 今日の晩の、3次元に戻るレッスンに申し込める」
マスターはパソコンを操作しながら言った。
「ほんと? じゃあ、これでもう小説のなかに入り込まなくなるのね」
「うん。十分、醍醐味は味わったし、もういいだろう」
わたしとマスターはホッとした顔をした。
「それよりも、潤ちゃん、今回のエルミタージュ美術館の旅の教訓ってなんだったと思う?」
わたしが言うと、マスターは腕組みをして、
「う~~~ん」
と言って考えてからこたえた。
「夫婦は時々、声を出して感謝し合おう、かな。ぼく達がお互い感謝の気持ちを言い合った後、あのスズメがまた現れて、こうやって、ここへ帰ってこられたから、そうなんじゃないかな」
「アハッ、ほんと! じゃあ、時々、そうした方がいいわね」
わたしはこたえ、わたし達は微笑みあった。
その日、仕事を終え、ディメンション・スクールへ行くまでの道で、今になって、マスターが最初に書いた小説の主人公のパイロットみたいな男性がたくさんの女性に囲まれて歩いているのを見たり、わたしが最初に書いた小説の主人公のシンガーに似た女性がマネージャーのような男性と歩いてるのを見たりした。
けれど、スクールでレッスンを受けた後、わたし達は無事に3次元に戻ることができて、帰りの道ではもうそんなことはなくなっていた。
不思議なことにマンションに戻って、マスターがトートバックを開くと、なかに入っているはずのワールドマップも消えていた。
完
「美優ちゃん、ラッキーだったよ! 今日の晩の、3次元に戻るレッスンに申し込める」
マスターはパソコンを操作しながら言った。
「ほんと? じゃあ、これでもう小説のなかに入り込まなくなるのね」
「うん。十分、醍醐味は味わったし、もういいだろう」
わたしとマスターはホッとした顔をした。
「それよりも、潤ちゃん、今回のエルミタージュ美術館の旅の教訓ってなんだったと思う?」
わたしが言うと、マスターは腕組みをして、
「う~~~ん」
と言って考えてからこたえた。
「夫婦は時々、声を出して感謝し合おう、かな。ぼく達がお互い感謝の気持ちを言い合った後、あのスズメがまた現れて、こうやって、ここへ帰ってこられたから、そうなんじゃないかな」
「アハッ、ほんと! じゃあ、時々、そうした方がいいわね」
わたしはこたえ、わたし達は微笑みあった。
その日、仕事を終え、ディメンション・スクールへ行くまでの道で、今になって、マスターが最初に書いた小説の主人公のパイロットみたいな男性がたくさんの女性に囲まれて歩いているのを見たり、わたしが最初に書いた小説の主人公のシンガーに似た女性がマネージャーのような男性と歩いてるのを見たりした。
けれど、スクールでレッスンを受けた後、わたし達は無事に3次元に戻ることができて、帰りの道ではもうそんなことはなくなっていた。
不思議なことにマンションに戻って、マスターがトートバックを開くと、なかに入っているはずのワールドマップも消えていた。
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