『小説カフェやすらぎ・フューチャー』

2章

ディメンション・スクール（２７）

歴史の重みや重厚感のある絵画や一つ一つ特徴のある部屋の説明をガイドさんから聞きながら、グループの後についてわたし達は館内を歩いた。どの絵も部屋も素晴らしく、わたしとマスターは食い入るように絵を見たり、部屋の美しさにため息をついたりした。

しばらくして、そのグループが自由行動になると、わたし達は日本へ戻ることにした。
マスターがワールドマップを開いて、わたしがマップの中の日本を指差そうとした時、一羽のスズメが突然、マップのそばまで飛んで来た。
「さっきのスズメ！？」
わたしが言うと、スズメはいとも簡単にマップをくちばしでくわえ、マスターの手から持ち去ってしまった。
「ああっ！！」
マスターとわたしは叫んで、スズメを追って人混みをかき分け館内を走った。さんざん走って、一つの部屋に入るとスズメの姿を見失ってしまった。人の姿もない部屋だった。

「スズメ、いなくなっちゃったな」
マスターが立ち止まって言った。
「人もいなくない？」
わたしは周りを見て言った。