90 / 113
高嶺の花はおねだり上手/本編その後if
33
しおりを挟む
椎名が出て行ってからは、類と那智が氷やタオルをかき集めてきては打たれた頬を冷やすなどをされていた。
そんなことしなくていいからやめろと慌ただしく用意をしている二人に言うと、跡が残ったら大変だと逆に怒られてしまった。
もはや何を言っても二人は聞かなそうなので、諦めた俺はもう好きにしろと気が済むまでやらせることにした。
バケツにくんだ水に氷を入れ、その中で冷やしたタオルを頬にしばらく当てていると、徐々に頬の赤みが引いてきた。
椎名に打たれた時のことを考えてぼうっとしていると、頭をぽんぽんと撫でられるのだ。
見上げると、類と目が合った。
「ほっぺた痛かったでしょ。よくあそこまで言ったねえ」
類の言葉に那智も頷いたが、普通に考えれば、あんな風に言う必要はかったと思う。
だが今後俺に関わらないようにするには、ああでも言って突き放すしかなかった。
あのままだと椎名は間違いなく俺から離れないし、今は大丈夫でも、その内日常的に体の関係を持っていたかもしれない。そうなればこいつらが黙っていないだろう。だから、キツいことを言ってでも俺から離す必要があった。
「·····てか、言わせたのあんたらだろうが。椎名が俺に手を出すこと、最初から分かってて泳がせてたんだろ」
「あは·····、バレた?ま、咲良ちゃんから椎名くんを拒否してもらえてよかったよ。そしたら手を引いてくれたし、今回椎名くんは特別に不問なわけ」
椎名がおとがめなしなのは正直、ほっとした。
現在の唯一の友人である椎名との関係が絶たれたのはかなりショックだが、全て俺の自業自得だ。
椎名は良い奴だ。だから、最初から俺に関わるべきではなかったのだ。
椅子に掛け、頬を抑えながらも椎名のことをぼんやりと考えていると「ねえ」と、背にずしっと体重をかけられるのだ。
すぐ後ろに類の顔があり、金色の髪が首をくすぐるとぶるっと体が震え、そんな俺の反応を見る類はくすっと笑った。
「·····咲良ちゃんさ、さっきの続き、しない?俺まだ不完全燃焼でさ~」
「····················え、」
服の上から体をまさぐってくる類に、「やめろ」と体をひねって抵抗した。
すると那智が「おい」と類の肩を掴むのだ。
「·····類、お前は先程咲良としていただろう」
「いや、それはそれでしょ。だってじゃんけんで勝ったの俺じゃん」
「そのじゃんけんも後出しだっただろうお前····ッ!!」
すると未だ俺の上から退かない類は、顔をしかめながらうっざと呟くのだ。
「·····そもそもさ那智さ、予定より30分も早く来たじゃん。まじ有り得ないんだけど」
「「椎名くんが歩くのが早くてね」とか言ってたけどさ、よく考えたら案内してここまで連れて来たの那智じゃん」
「まさか走って来たの?必死すぎてウケんだけど」
類は半笑いで背後にいる那智を見やると、那智はわなわなと肩を震わせるのだ。
「真似をするなッ·····!しかも無駄に似ているッッ·····!!」
すると息を切らし取り乱したことにハッとした那智はごほん、と咳払いをすると、徐々に落ち着きを取り戻していった。
「·····ふん、そもそもそんな猿でも分かることをよく考えないと分からないなんてね」
那智が口元に手を当て類に向かって口角を上げると、類は頬をカッと赤く染めるのだ。
「は、ハア~~~~~~~?!まじうっさいんだけど·····ッッ!!」
頭に血が上っている様子の類は俺を解放すると、ずんずんと那智に詰め寄り「那智だってさあ·····!」と那智を指差して何やら言い返し始めた。
ーーなんなんだ、この小学生低学年レベルの争いは。
まあ、丁度いい。今の内に··········
喧嘩している二人を背に、物音を立てないようゆっくりと入口に近づいた。
忍び足で無事に扉の前に付くと、二人から解放される安心感から、ほっと息を吐いた。
そして、ここまで来たら後は全力で逃げるだけだと、扉に手を掛けた時だった。
突然ふっと背後から伸びてきた二人分の影に、目の前の扉ごと包まれた。
まさか、と恐る恐る背後を振り返ろうとした瞬間、左右から伸びてきた手にダンっと扉を押さえられ、行く手をはばまれてしまったのだ。
「·····ね、咲良ちゃんさ、そんな逃げる元気あるなら、こっちも手加減しなくていいよね?」
「一応けが人だからね。俺達なりに気は使っていたんだが·····、その必要はないようで安心したよ」
そんな二人の声が背後から降りかかり、俺は後ろを振り返ることができなかった。
こんなことなら全力で走って逃げるべきだったと、今になって後悔した。
そんなことしなくていいからやめろと慌ただしく用意をしている二人に言うと、跡が残ったら大変だと逆に怒られてしまった。
もはや何を言っても二人は聞かなそうなので、諦めた俺はもう好きにしろと気が済むまでやらせることにした。
バケツにくんだ水に氷を入れ、その中で冷やしたタオルを頬にしばらく当てていると、徐々に頬の赤みが引いてきた。
椎名に打たれた時のことを考えてぼうっとしていると、頭をぽんぽんと撫でられるのだ。
見上げると、類と目が合った。
「ほっぺた痛かったでしょ。よくあそこまで言ったねえ」
類の言葉に那智も頷いたが、普通に考えれば、あんな風に言う必要はかったと思う。
だが今後俺に関わらないようにするには、ああでも言って突き放すしかなかった。
あのままだと椎名は間違いなく俺から離れないし、今は大丈夫でも、その内日常的に体の関係を持っていたかもしれない。そうなればこいつらが黙っていないだろう。だから、キツいことを言ってでも俺から離す必要があった。
「·····てか、言わせたのあんたらだろうが。椎名が俺に手を出すこと、最初から分かってて泳がせてたんだろ」
「あは·····、バレた?ま、咲良ちゃんから椎名くんを拒否してもらえてよかったよ。そしたら手を引いてくれたし、今回椎名くんは特別に不問なわけ」
椎名がおとがめなしなのは正直、ほっとした。
現在の唯一の友人である椎名との関係が絶たれたのはかなりショックだが、全て俺の自業自得だ。
椎名は良い奴だ。だから、最初から俺に関わるべきではなかったのだ。
椅子に掛け、頬を抑えながらも椎名のことをぼんやりと考えていると「ねえ」と、背にずしっと体重をかけられるのだ。
すぐ後ろに類の顔があり、金色の髪が首をくすぐるとぶるっと体が震え、そんな俺の反応を見る類はくすっと笑った。
「·····咲良ちゃんさ、さっきの続き、しない?俺まだ不完全燃焼でさ~」
「····················え、」
服の上から体をまさぐってくる類に、「やめろ」と体をひねって抵抗した。
すると那智が「おい」と類の肩を掴むのだ。
「·····類、お前は先程咲良としていただろう」
「いや、それはそれでしょ。だってじゃんけんで勝ったの俺じゃん」
「そのじゃんけんも後出しだっただろうお前····ッ!!」
すると未だ俺の上から退かない類は、顔をしかめながらうっざと呟くのだ。
「·····そもそもさ那智さ、予定より30分も早く来たじゃん。まじ有り得ないんだけど」
「「椎名くんが歩くのが早くてね」とか言ってたけどさ、よく考えたら案内してここまで連れて来たの那智じゃん」
「まさか走って来たの?必死すぎてウケんだけど」
類は半笑いで背後にいる那智を見やると、那智はわなわなと肩を震わせるのだ。
「真似をするなッ·····!しかも無駄に似ているッッ·····!!」
すると息を切らし取り乱したことにハッとした那智はごほん、と咳払いをすると、徐々に落ち着きを取り戻していった。
「·····ふん、そもそもそんな猿でも分かることをよく考えないと分からないなんてね」
那智が口元に手を当て類に向かって口角を上げると、類は頬をカッと赤く染めるのだ。
「は、ハア~~~~~~~?!まじうっさいんだけど·····ッッ!!」
頭に血が上っている様子の類は俺を解放すると、ずんずんと那智に詰め寄り「那智だってさあ·····!」と那智を指差して何やら言い返し始めた。
ーーなんなんだ、この小学生低学年レベルの争いは。
まあ、丁度いい。今の内に··········
喧嘩している二人を背に、物音を立てないようゆっくりと入口に近づいた。
忍び足で無事に扉の前に付くと、二人から解放される安心感から、ほっと息を吐いた。
そして、ここまで来たら後は全力で逃げるだけだと、扉に手を掛けた時だった。
突然ふっと背後から伸びてきた二人分の影に、目の前の扉ごと包まれた。
まさか、と恐る恐る背後を振り返ろうとした瞬間、左右から伸びてきた手にダンっと扉を押さえられ、行く手をはばまれてしまったのだ。
「·····ね、咲良ちゃんさ、そんな逃げる元気あるなら、こっちも手加減しなくていいよね?」
「一応けが人だからね。俺達なりに気は使っていたんだが·····、その必要はないようで安心したよ」
そんな二人の声が背後から降りかかり、俺は後ろを振り返ることができなかった。
こんなことなら全力で走って逃げるべきだったと、今になって後悔した。
0
お気に入りに追加
176
あなたにおすすめの小説
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜
ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。
高校生×中学生。
1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
僕の兄は◯◯です。
山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。
兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。
「僕の弟を知らないか?」
「はい?」
これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。
文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。
ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。
ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです!
ーーーーーーーー✂︎
この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。
今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる