彼氏持ちの高嶺の花は生徒会の玩具

朝果あさ

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最終章

01

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 ーー深夜0時

 まさか、こんな夜遅くだとは誰も思うまい。
 いつ生徒会室に行くのか、待てども待てども那智は言ってこないのだ。
 那智の隣に座っているソファで、うとうとし始めた時だった。

「咲良、もうそろそろ行こうか」
と、立ち上がった那智の声が上から降ってくるが、眠くて眠くて堪まらない俺は、那智に抱えられて学校へ行くことになった。









「着いたよ、咲良」

 優しく降ろされた場所は低反発で上質な触り心地のする長ソファだった。

「あ、りがとう・・、ございます・・」

 まだ寝ぼけ半分な俺は、今にも寝落ちそうだった。

「俺は作業してるから、そのまま寝てていいからね」

 ちゅっと額にキスを落とされたのが最後の記憶。肌触りの良いソファが心地よく、俺はあっという間にそのまま眠りに落ちてしまった。










「・・・ん、」

 どれくらい寝ていたのだろうか。時間を確認する為に体を起こし、時計を探す。すると、あることに気付いた。

 那智がどこにもいないのだ。

 ーーもしかしてこれは、チャンスかもしれない。

 いや、一旦落ち着こう。
 何か取りに行っているだけの可能性がある。まずは生徒会室の外を確認した方がいい。

 そっと扉に耳を当て足音がしないことを確認し、扉を静かに開けると、こんな夜更けだから当たり前だが全体が薄暗かった。
 左右に続く長い廊下には常夜灯と、離れたところに二・三人いる警備員の懐中電灯だけが点いている状態で、何とも薄気味悪く深夜の学校ならではの雰囲気があった。

 ーーというか、待て。

 何でこんなに警備員の数が多いんだ?俺が逃げ出すことを警戒してるのだろうか。それにしても、このワンフロアで数が多すぎやしないか。

 それに、これまでの出来事を振り返えると、何か引っかかる。

 朝日は俺が生徒会に侵入する時に、夜中の学校のセキュリティは甘いと言っていた。
 そして類は那智に利用され、俺を襲ったと言っていた。

 朝日も那智に利用されていたとしたら?
 那智は、朝日は自らの保身の為に俺を生徒会に売ったと、保健室で言っていた。なぜ朝日は俺を生徒会に売らなければならなかったのか。保健室での2人のやり取りは何やら険悪で、朝日は那智に逆らえないように見えた。

 ーーまさか、朝日は那智に何か弱味を握られている・・・?

 そして生徒会選挙で朝日が生徒会に嵌められ落選させられて頭に血が上った俺に、夜間の学校のセキュリティが甘いということを、那智に命令された朝日が言わされていたとしたら?
 それを鵜呑みにした俺が、夜間に生徒会室に侵入したとしたら?
 よく考えれば、この金持ちな学校のセキュリティがスカスカな訳がない。まさか・・・、俺が侵入する時に合わせて、警備員の数を少なくしたのか?
 そして生徒会室に誘導された俺を類に襲わせ、俺を生徒会の管理下に置くという話になったとしたら、一連の流れに繋がるんじゃないか?

 そう考えるとやばい、かもしれない。
 まさか、それらの俺の一連の行動が、すべて那智の手の平の上だとしたら、今、この瞬間もーー

「やっぱりね」

 ーー約一週間、一緒にいたから分かる。冷ややかで、やけに落ち着いている声色。

「・・・・・那智、先輩、」

 振り返ると、笑顔でこちらに歩み寄ってくる人影があった。
 その表情は落ち着いているように見える、が、これはかなり怒っている時の那智だ。

「駄目じゃないか、勝手に出たら。こっちへおいで、咲良。躾し直してあげよう」
「朝日に会いに行こうとしたんだろう?やっぱり咲良はまだ、朝日が好きなんだね」

「あ・・・、の・・・、」

 後ろに下がると、那智は同じ分だけ俺にじりじりと近付いてくるのだ。

「大丈夫、この間みたく酷くはしないよ。昨日したみたいに、愛してあげる」

 ただし、と呟くと、那智は俺の後ろをじっと見やるのだ。

「彼の前でね」

 彼、とは、まさかーー

 振り向くと、コツン、と足音が廊下に響いた。

 ーー何でお前がここにいるんだ。

「朝日・・・、」

 息を切らしている朝日は那智をキッと睨むと、那智は余裕そうに朝日に向かって微笑むのだ。
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