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寝息を立て始める綾人の頬を、翠は愛おしそうに撫で上げた。
起きなければならない時間までまだ時間はある。綾人の寝顔を眺めながら可愛いなあ、とぽつりと呟いた時だった。
ーーカタッ
音がする扉を睨み、まだいたのか、と思わずちっと舌を鳴らしてしまう。
寝ている綾人を起こさないように、なるべく足音を立てずに入口へ向かい、静かに扉を開けた。
するといきなり開いた扉に驚いたのか、扉の脇の壁に寄りかかっていた仁の肩がびくっと揺れた。
「ーーあや、」
まさか、綾人の部屋に俺がいると思っていなかったのだろう。
こちらへ振り向くと同時に綾人だと思って伸ばしかけていた仁の手は、俺と目が合ったことにより空中でぴたっと止まった。
「·············翠、何で、ここに··········、」
「あは、なんでだと思う?」
挑発するように目を細めた瞬間、胸ぐらを捕まれ、ドンッと壁に押し付けられてしまう。痛みで顔をしかめるが、仁の手が緩められることはなく、その額にはうっすらと青筋が浮かんでいた。
「··········ね、例えさ、俺と綾人くんが何してようと仁くんには関係ないよね?だって、別に君たち付き合ってるわけじゃないでしょ?」
翠の正論に対して仁は眉を寄せた。すると、部屋は少しの間静寂に包まれた。
何も言い返してこない仁に、翠は話にならないと言わんばかりため息をついた。そんな翠を見る仁は何かを考えた後に、鋭い目付きで翠を見やるのだ。
「俺が綾と付き合えば、お前は綾になにもしないんだな?」
「······は、仁くんさ、別に綾人くんのこと好きじゃないって言ったじゃん。好きでもない子のためにさ、フツーそこまでやる?」
「····お前には、関係ないだろ」
仁の射るような視線に思わず目を逸らしてしまう。まるで俺の心の奥を見透かしているような、力強い眼差しだった。
「翠·······、お前こそ、綾のこと好きなんじゃないのか」
ーーこういう時、俺たちは本当に双子なんだと思う。
仁は普段鈍感なのに、どうしてこういう時だけ気付くのか。双子ならではの勘のようなものがあるのだろうか。
ーーでも、俺は··········、
「········は、なに言ってんの?好きなわけないじゃん」
「今綾人くんの部屋にいたのもただの気まぐれだし、そもそも綾人くんなんて全然好みじゃーー」
ーーガチャ
その時、タイミングよく綾人の部屋の扉が空いた。綾人の赤く染まった瞳は確かに俺を捉えていて、その小さな肩は震えていた。
「··········あ、やと·····、く··········」
ーー本当、なぜこんなことになってしまったんだろう。綾人くんを、傷付けたかったわけじゃないのに。
起きなければならない時間までまだ時間はある。綾人の寝顔を眺めながら可愛いなあ、とぽつりと呟いた時だった。
ーーカタッ
音がする扉を睨み、まだいたのか、と思わずちっと舌を鳴らしてしまう。
寝ている綾人を起こさないように、なるべく足音を立てずに入口へ向かい、静かに扉を開けた。
するといきなり開いた扉に驚いたのか、扉の脇の壁に寄りかかっていた仁の肩がびくっと揺れた。
「ーーあや、」
まさか、綾人の部屋に俺がいると思っていなかったのだろう。
こちらへ振り向くと同時に綾人だと思って伸ばしかけていた仁の手は、俺と目が合ったことにより空中でぴたっと止まった。
「·············翠、何で、ここに··········、」
「あは、なんでだと思う?」
挑発するように目を細めた瞬間、胸ぐらを捕まれ、ドンッと壁に押し付けられてしまう。痛みで顔をしかめるが、仁の手が緩められることはなく、その額にはうっすらと青筋が浮かんでいた。
「··········ね、例えさ、俺と綾人くんが何してようと仁くんには関係ないよね?だって、別に君たち付き合ってるわけじゃないでしょ?」
翠の正論に対して仁は眉を寄せた。すると、部屋は少しの間静寂に包まれた。
何も言い返してこない仁に、翠は話にならないと言わんばかりため息をついた。そんな翠を見る仁は何かを考えた後に、鋭い目付きで翠を見やるのだ。
「俺が綾と付き合えば、お前は綾になにもしないんだな?」
「······は、仁くんさ、別に綾人くんのこと好きじゃないって言ったじゃん。好きでもない子のためにさ、フツーそこまでやる?」
「····お前には、関係ないだろ」
仁の射るような視線に思わず目を逸らしてしまう。まるで俺の心の奥を見透かしているような、力強い眼差しだった。
「翠·······、お前こそ、綾のこと好きなんじゃないのか」
ーーこういう時、俺たちは本当に双子なんだと思う。
仁は普段鈍感なのに、どうしてこういう時だけ気付くのか。双子ならではの勘のようなものがあるのだろうか。
ーーでも、俺は··········、
「········は、なに言ってんの?好きなわけないじゃん」
「今綾人くんの部屋にいたのもただの気まぐれだし、そもそも綾人くんなんて全然好みじゃーー」
ーーガチャ
その時、タイミングよく綾人の部屋の扉が空いた。綾人の赤く染まった瞳は確かに俺を捉えていて、その小さな肩は震えていた。
「··········あ、やと·····、く··········」
ーー本当、なぜこんなことになってしまったんだろう。綾人くんを、傷付けたかったわけじゃないのに。
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