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 ごくん、と喉を鳴らして飲み込んだ翠は肩で息をする俺に覆い被さると、あーあと扉の方を見やるのだ。

「気持ちよくなってくれて嬉しいけどさ、そんなにおっきい声出して、仁くんに聞こえちゃうよ?」
「········っ!!」

 ーーそうだった。この部屋の向かい側には仁の部屋がある。電話の話し声なんかは聞こえてしまうくらい、この家の壁は薄いのだ。

「っ、ひど··········っ、」

 思わず目頭が熱くなる俺を見る翠は、子供をあやすかのように頭をぽんぽんと撫でた。

「綾人くんを思って、これでも慰めてあげてるつもりなんだけどな」
 
 柔らかく口付けられると、心臓がとくんと跳ねた。俺が好きなのは、仁だ。なのにこの頃翠に触れられると、妙に翠を意識してしまう。
 翠に初めて触れられた日から、俺はなんだかおかしくなってしまったようだ。
 ーーこれは、かなり良くない。
 脳が性欲と恋愛を履き違えてしまっているに決まっている。きっと、翠に無理やりされているせいで脳がバグってしまっているだけだ。
 
「せっかくお膳立てしてあげたのに、仁くんに振られちゃった可哀想な綾人くんを元気付けてあげようと思ってさ」
「·····っ、誰も、頼んでない··········っ」

 俺を組み敷いている翠を涙が滲む瞳できっと睨むと、翠は何かを思いついたかのように「あっ」と俺の目を覗いた。

「いっそさ、俺と付き合っちゃう?」
「ーーーは?」

 何を言ってるのかと眉をしかめると、翠はするっと頬を撫でるのだ。

「俺、仁くんより優しくしてあげるよ?だってさっきの仁くん酷くない?綾人くんにあんな態度取らなくてもいいのにさ」

 お前がいきなり変なこと言ったせいだろと言い返そうとする言葉が喉から出かけるが、割れ目を滑る熱い肉の感触に、思わず息を飲んだ。

「っや··········、すい··········っ」
「ほーら、暴れないの。あんまり暴れるとーー」

 仁くんに気づかれちゃうかもね?と、耳元で低く囁かれると、背筋がびくっと震えた。
 こんなところを仁に見られたらと思うだけで寒気がした。顔を青白くさせる俺を見る翠は、仁に来て欲しくなければ言うことを聞け、と言わんばかりに窪みを熱で埋めた。
 すると、達したばかりの下腹部がびくびくと震えてしまうのだ。

「ーーぁ、··········ぅぅ·······ッ」
「可愛い、綾人くん」

 瞼の裏で声を落とされると、覆い被さっている体が俺の中に埋まっていくのが分かり、腰がぶるっと震えた。
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