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全ては意外と見えている①
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ナナが提案した館の一階以外はできるだけ二人組で行動作戦が順調なようで。シイが壊された日からなにも起こってない。
日記を書いた昨日が金曜日だから今日は土曜日。
自室でイチからもらったミニスカートを穿こうか迷っていた。
前回は長いタイトスカートのせいで心臓がお腹の中で暴れたが。丈が短いこれだったらアクティブなわたしにも平気だとか。
でも、アクティブの称号を入手してないので普段通りのジーンズを穿こうとしたのと同時に部屋の扉を七回ノックする音が聞こえた。
ナナと決めた合図なので彼女が来たはずだ、眼球認証で扉の鍵を開ける。
パソコンで注文をしたのかナナが灰色のステッキを隠すように持って、部屋の前に立っていた。
「サービスショットは期待してなかったんだがね」
「ナナが突然ノックをするからかと」
「次からは気をつけるから許しておいてくれ」
今日はわたしとデートしたいらしく、ナナにジーンズを穿くように言われた。おそらく下半身を露出させるほどストレスが溜まっていると勘違いされてしまったのだろう。
勉強不足のナナはストレスが溜まりすぎると左右の耳から放出されることを知らないようだった。
「どこに行くつもりなんですか」
「ハチもわたしに聞きたいことがいくつかありそうだし。のんびりできて会話をできるところといえば夢世界かな」
部屋の扉の鍵がかかったのを確認してからナナとわたしは南の階段から八階に向かう。
「そういえば開かない扉はどうして存在しているんでしょうか。開閉ができないならあってもなくても問題がないような」
質問でもないが、階段を上がる直前に開かない扉が見えてしまったからかナナに聞いていた。
ナナも階段の途中で動きを止めて、開かない扉のほうへ視線を向ける。
「ハチは哲学者だな。わたしもその考えに同意するが単純に壊れているんじゃないか。部屋の扉と同じ素材だと博士が言っていた記憶もあるし」
「部屋の扉も壊して中に入るのは不可能ということですね」
「サンが例の斧を数十回ぶつけても傷一つつかないぐらいは頑丈。窓や壁も似たような強度だが案外、三階にある博士の薬品を使用すれば簡単に壊れたりして」
冗談なのかナナが普段よりも明るい声で言う。
「ナナは試してみたことがあるんですか」
「反抗期の時にね。結果は見ての通りだよ」
「話は変わりますが館のアンドロイドは人間みたいに病気になったりとかは」
「シイが神経質になりすぎた時期に睡眠薬を飲んでいた気がする」
ニイも本の読みすぎで、目薬を使っていたような記憶はある。と口にしつつ再びナナが階段を上がり始めた。
「不眠症と疲れ目ですか」
わたしもナナを追いかけて階段を上がっていく、二階と三階の踊り場の辺りで。
「他に質問はあるかい」
こちらに視線を向けないままでナナが声をかけてきた。わたしの気のせいか、灰色のステッキを床に叩きつける音が大きくなったような。
四階が近づいているからか、わたしもあそこから聞こえてくる音は苦手だしな。
「ハチも四階は苦手なようだね」
ナナの横に並び同じぐらいの速度で階段を上がる姿を見てか、彼女が泣き笑いのような表情をした。
「どうしてですかね、音がうるさいだけなのに」
「多分、館のアンドロイドが全て四階で誕生をしたからかな」
「だとしたら変じゃないですか。故郷だとしたら、普通は感動の涙を流したりするのでは」
「言われてみれば、そうだが。アンドロイドの性質で生命の危機だと感じてしまうのかもしれないね」
四階に到着してしまった。音の発生源がある部屋に入ってないのに、耳も塞いでいるのにうるさくて頭がくらくらとする。
動けないほどではないが、アンドロイドにはないはずの心や魂がざわついているような感覚に。
さっさと五階まで階段を駆け上がり、休憩がてら部屋の中に入った。
「あらあら、珍しいこともあるわね。ナナとハチも今日はファッションセンスを高めに来たのかしら」
入口のすぐ近くにある赤いドーナツ型のソファーに座っていると奥からイチとニイが歩いてきた。
ニイの服装が普段よりも近代的になっているのは脳味噌がボイコットしているようで、上手く働いてくれない。
「四階を通ってきてね。頭がくらつくから、ここで休憩させてもらっているんだ」
「休憩している最中なら、少しぐらいファッションセンスを高める時間もあるわよね」
へそ曲がりのナナでもイチの純粋な迷惑。もといファッションに対する一途な思いを蔑ろにできないようでニイと同じ諦めた顔つきになっていた。
ハチ、イチの誘いを上手に断ってくれないかい的な視線をナナから向けられたけど。わたしも万歳をすることしかできなかった。
「ハチ、なにをしているの」
「最近ヨガがマイブームでお手上げのポーズをしてみたくなりました」
お手上げのポーズには、全てを受け入れて流れに身を任せるべき。という意味も含まれているらしいなどとナナが真っ赤な嘘をイチとニイに教える。
イチは騙されたのかわたしと同じポーズをして、ニイはアンドロイドなのに共感してくれたのか軽く笑っていた。
日記を書いた昨日が金曜日だから今日は土曜日。
自室でイチからもらったミニスカートを穿こうか迷っていた。
前回は長いタイトスカートのせいで心臓がお腹の中で暴れたが。丈が短いこれだったらアクティブなわたしにも平気だとか。
でも、アクティブの称号を入手してないので普段通りのジーンズを穿こうとしたのと同時に部屋の扉を七回ノックする音が聞こえた。
ナナと決めた合図なので彼女が来たはずだ、眼球認証で扉の鍵を開ける。
パソコンで注文をしたのかナナが灰色のステッキを隠すように持って、部屋の前に立っていた。
「サービスショットは期待してなかったんだがね」
「ナナが突然ノックをするからかと」
「次からは気をつけるから許しておいてくれ」
今日はわたしとデートしたいらしく、ナナにジーンズを穿くように言われた。おそらく下半身を露出させるほどストレスが溜まっていると勘違いされてしまったのだろう。
勉強不足のナナはストレスが溜まりすぎると左右の耳から放出されることを知らないようだった。
「どこに行くつもりなんですか」
「ハチもわたしに聞きたいことがいくつかありそうだし。のんびりできて会話をできるところといえば夢世界かな」
部屋の扉の鍵がかかったのを確認してからナナとわたしは南の階段から八階に向かう。
「そういえば開かない扉はどうして存在しているんでしょうか。開閉ができないならあってもなくても問題がないような」
質問でもないが、階段を上がる直前に開かない扉が見えてしまったからかナナに聞いていた。
ナナも階段の途中で動きを止めて、開かない扉のほうへ視線を向ける。
「ハチは哲学者だな。わたしもその考えに同意するが単純に壊れているんじゃないか。部屋の扉と同じ素材だと博士が言っていた記憶もあるし」
「部屋の扉も壊して中に入るのは不可能ということですね」
「サンが例の斧を数十回ぶつけても傷一つつかないぐらいは頑丈。窓や壁も似たような強度だが案外、三階にある博士の薬品を使用すれば簡単に壊れたりして」
冗談なのかナナが普段よりも明るい声で言う。
「ナナは試してみたことがあるんですか」
「反抗期の時にね。結果は見ての通りだよ」
「話は変わりますが館のアンドロイドは人間みたいに病気になったりとかは」
「シイが神経質になりすぎた時期に睡眠薬を飲んでいた気がする」
ニイも本の読みすぎで、目薬を使っていたような記憶はある。と口にしつつ再びナナが階段を上がり始めた。
「不眠症と疲れ目ですか」
わたしもナナを追いかけて階段を上がっていく、二階と三階の踊り場の辺りで。
「他に質問はあるかい」
こちらに視線を向けないままでナナが声をかけてきた。わたしの気のせいか、灰色のステッキを床に叩きつける音が大きくなったような。
四階が近づいているからか、わたしもあそこから聞こえてくる音は苦手だしな。
「ハチも四階は苦手なようだね」
ナナの横に並び同じぐらいの速度で階段を上がる姿を見てか、彼女が泣き笑いのような表情をした。
「どうしてですかね、音がうるさいだけなのに」
「多分、館のアンドロイドが全て四階で誕生をしたからかな」
「だとしたら変じゃないですか。故郷だとしたら、普通は感動の涙を流したりするのでは」
「言われてみれば、そうだが。アンドロイドの性質で生命の危機だと感じてしまうのかもしれないね」
四階に到着してしまった。音の発生源がある部屋に入ってないのに、耳も塞いでいるのにうるさくて頭がくらくらとする。
動けないほどではないが、アンドロイドにはないはずの心や魂がざわついているような感覚に。
さっさと五階まで階段を駆け上がり、休憩がてら部屋の中に入った。
「あらあら、珍しいこともあるわね。ナナとハチも今日はファッションセンスを高めに来たのかしら」
入口のすぐ近くにある赤いドーナツ型のソファーに座っていると奥からイチとニイが歩いてきた。
ニイの服装が普段よりも近代的になっているのは脳味噌がボイコットしているようで、上手く働いてくれない。
「四階を通ってきてね。頭がくらつくから、ここで休憩させてもらっているんだ」
「休憩している最中なら、少しぐらいファッションセンスを高める時間もあるわよね」
へそ曲がりのナナでもイチの純粋な迷惑。もといファッションに対する一途な思いを蔑ろにできないようでニイと同じ諦めた顔つきになっていた。
ハチ、イチの誘いを上手に断ってくれないかい的な視線をナナから向けられたけど。わたしも万歳をすることしかできなかった。
「ハチ、なにをしているの」
「最近ヨガがマイブームでお手上げのポーズをしてみたくなりました」
お手上げのポーズには、全てを受け入れて流れに身を任せるべき。という意味も含まれているらしいなどとナナが真っ赤な嘘をイチとニイに教える。
イチは騙されたのかわたしと同じポーズをして、ニイはアンドロイドなのに共感してくれたのか軽く笑っていた。
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