20 / 24
危険なショートカット
しおりを挟む
次の目的地であるオトナゲと呼ばれる地域の近くの茶屋でシュウジとメイは休憩をしていた。昼食をとってからそれほど経ってないが彼女は団子に似た和菓子を口に運ぶ。
「甘いものはいくらでも入るんです」
「なにも言ってないが」
木製のベンチに座るメイの横にある高く積みあげられた瓦のような皿をシュウジがちらりと見た。
「わたしの甘いもの好きはともかく……世界最高のイレズミ師がシュウジさんの身体にタトゥーを入れられたらいいですね」
「邪推かもしれないが、結果はすでに分かっているみたいに聞こえるんだけど」
「なにごともやってみないと分かりませんよ。神々の血を凝縮したものを飲み干して耐えられたほどの肉体にタトゥーを入れられるかも不明ですし」
湯気がでているお茶に息をふきかけてメイが半分ほど飲む。目の前に見える雄大な自然の景色を見て癒やされているのか彼女の顔がゆるんでいく。
草木のにおいにまじって人間の腐ったような刺激臭もしているがメイは気づいてなさそうだった。
「なんで、おれがそんな物騒なものを飲んだことをメイが知っているんだ?」
「神さまがテレパシーで教えてくれました」
「そうかい」
「信じてなさそうですねえ。悪人を名乗るシュウジさんらしい考えかただと思いますが」
どうやったら今の話を信じてもらえるのか考えているようでメイが目を閉じて、小さくうなる。
「おおっ……ちょうどいい情報を神さまから教えてもらいましたよ。もうすぐこの場所にシュウジさんの子どもだと名乗る小さな男の子が来ます」
「へー」
小馬鹿にしたようにシュウジがにやついた。
「そのおれの子どもの名前は?」
「スオウくんですね。見た目は五、六歳ぐらいですが。今のシュウジさんでも簡単には勝てないレベルの生きものみたいかと」
「ヘンな言いかただな。おれの息子だとしたら一応は人間なんじゃないのか?」
「いえ。女神さまと人間のハーフみたいで」
はるか上空から勢いよくおりてきたスオウの両足がシュウジの頭を踏みつけ、地面にめりこませた。
「女神さまと人間のハーフみたいで。シュウジさんの頭の上に落下してくるので気をつけてくださいと言いかけたのですが……少し遅かったようで」
ベンチが壊れなくてよかった、と地面に頭をめりこませたシュウジを尻目にメイが口にしていた。
「おい、そこの女。このあたりでぼくのお父さんを見なかったか? シュウジという名前なんだが」
「ほらっ、息子さんが呼んでいますよ。お父さん」
地面にめりこんだままのシュウジの背中のあたりをメイが平手で軽く叩く。
「ちょっとだけ待っててね。今、きみのお父さんをひっこ」
「ぼくを子どもあつかいするなよ。女」
空気をぴりつかせて、なんとかまばたきをできるほどのほんの一瞬でメイを……スオウが魔法で消しとばそうとしたが。
「こらっ、そんなあぶないことしたらダメ。わたしだけじゃなくて山が三つぐらい消えちゃうでしょ」
いつの間にかメイに後ろから抱きしめられていたことに驚いているようでスオウが目を丸くする。
「それとわたしの名前はメイ。まだ名前の知らない女の子を呼ぶときはスオウくんだったらお姉ちゃんが一番いいと思うなー」
「メイ、お姉ちゃん」
「そう」
「メイお姉ちゃん」
「いいねー。スオウくんにそんな風に呼ばれちゃうとお姉ちゃんもほれちゃいそうになるぜ」
メイとスオウがそんな会話をしている間に意識を取り戻したらしく地面から頭をひっこぬきシュウジが首を左右に動かして音を鳴らす。
ゆっくりとしゃがみこんだシュウジがスオウの顔をまじまじと確認する。
「おれの子どもにしては面が善人すぎるな」
「うまれたてはみんな大体こんな感じですよ」
スオウがまた山を消しとばそうとしないようにかメイが彼を後ろから優しく抱きしめた状態で言う。
「そんなもんかね。本当におれとあの女神さまからうまれたんだとしたらスオウだっけ。お前、リンネってやつを知っているか?」
「ああ。ぼくのお嫁さんにする予定だったが、ぼくを子どもあつかいしたから殺した」
「よし、おれの息子で確定だ。よろしくな」
「今ので確定なんですか! しかもさらっと物騒なことも言ってましたし!」
「そんなに物騒でもないだろう……こいつぐらいの年頃の男だったら年上の女を自分の嫁さんにしたいと考えてもおかしくないし」
「そっちじゃありませんよ!」
つっこんでいるメイのことを気にせずシュウジはスオウと力強く握手をした。
「お前がぼくのお父さん?」
「そうだ。まあ、おれなんかを尊敬する必要はさらさらない。今のところはスオウさまのほうが圧倒的に強いんだからな」
「聞いていたとおりのお父さんみたいで」
自分をそれほど子どもあつかいしないシュウジの態度を気に入ったようでスオウがにやつく。
「それで、なんでこんなところにいるんだ? 付き添いがいたってことはおれに会いに来たとかか」
「ああ」
「そうかい。いじらしいことで」
「お母さんとケンカをしているなら、ぼくが仲介役をやってやるが」
「息子さんもこう言ってますし、お母さまとの仲介役をやってもらったほうがいいと思いますよ」
シュウジと女神の事情を正しく理解しているかは不明だがメイがスオウの提案を後押しした。
「仲なおりか。今のおれよりもはるかに強いスオウさまの提案だから拒否もできないよな」
しぶしぶ了承をしたという雰囲気のため息をつきながらメイとスオウには見えないようにシュウジは邪悪そうな笑みを浮かべる。
「思ったよりはやく復讐できそうだよ。女神さま」
とシュウジはつぶやいていた。
「甘いものはいくらでも入るんです」
「なにも言ってないが」
木製のベンチに座るメイの横にある高く積みあげられた瓦のような皿をシュウジがちらりと見た。
「わたしの甘いもの好きはともかく……世界最高のイレズミ師がシュウジさんの身体にタトゥーを入れられたらいいですね」
「邪推かもしれないが、結果はすでに分かっているみたいに聞こえるんだけど」
「なにごともやってみないと分かりませんよ。神々の血を凝縮したものを飲み干して耐えられたほどの肉体にタトゥーを入れられるかも不明ですし」
湯気がでているお茶に息をふきかけてメイが半分ほど飲む。目の前に見える雄大な自然の景色を見て癒やされているのか彼女の顔がゆるんでいく。
草木のにおいにまじって人間の腐ったような刺激臭もしているがメイは気づいてなさそうだった。
「なんで、おれがそんな物騒なものを飲んだことをメイが知っているんだ?」
「神さまがテレパシーで教えてくれました」
「そうかい」
「信じてなさそうですねえ。悪人を名乗るシュウジさんらしい考えかただと思いますが」
どうやったら今の話を信じてもらえるのか考えているようでメイが目を閉じて、小さくうなる。
「おおっ……ちょうどいい情報を神さまから教えてもらいましたよ。もうすぐこの場所にシュウジさんの子どもだと名乗る小さな男の子が来ます」
「へー」
小馬鹿にしたようにシュウジがにやついた。
「そのおれの子どもの名前は?」
「スオウくんですね。見た目は五、六歳ぐらいですが。今のシュウジさんでも簡単には勝てないレベルの生きものみたいかと」
「ヘンな言いかただな。おれの息子だとしたら一応は人間なんじゃないのか?」
「いえ。女神さまと人間のハーフみたいで」
はるか上空から勢いよくおりてきたスオウの両足がシュウジの頭を踏みつけ、地面にめりこませた。
「女神さまと人間のハーフみたいで。シュウジさんの頭の上に落下してくるので気をつけてくださいと言いかけたのですが……少し遅かったようで」
ベンチが壊れなくてよかった、と地面に頭をめりこませたシュウジを尻目にメイが口にしていた。
「おい、そこの女。このあたりでぼくのお父さんを見なかったか? シュウジという名前なんだが」
「ほらっ、息子さんが呼んでいますよ。お父さん」
地面にめりこんだままのシュウジの背中のあたりをメイが平手で軽く叩く。
「ちょっとだけ待っててね。今、きみのお父さんをひっこ」
「ぼくを子どもあつかいするなよ。女」
空気をぴりつかせて、なんとかまばたきをできるほどのほんの一瞬でメイを……スオウが魔法で消しとばそうとしたが。
「こらっ、そんなあぶないことしたらダメ。わたしだけじゃなくて山が三つぐらい消えちゃうでしょ」
いつの間にかメイに後ろから抱きしめられていたことに驚いているようでスオウが目を丸くする。
「それとわたしの名前はメイ。まだ名前の知らない女の子を呼ぶときはスオウくんだったらお姉ちゃんが一番いいと思うなー」
「メイ、お姉ちゃん」
「そう」
「メイお姉ちゃん」
「いいねー。スオウくんにそんな風に呼ばれちゃうとお姉ちゃんもほれちゃいそうになるぜ」
メイとスオウがそんな会話をしている間に意識を取り戻したらしく地面から頭をひっこぬきシュウジが首を左右に動かして音を鳴らす。
ゆっくりとしゃがみこんだシュウジがスオウの顔をまじまじと確認する。
「おれの子どもにしては面が善人すぎるな」
「うまれたてはみんな大体こんな感じですよ」
スオウがまた山を消しとばそうとしないようにかメイが彼を後ろから優しく抱きしめた状態で言う。
「そんなもんかね。本当におれとあの女神さまからうまれたんだとしたらスオウだっけ。お前、リンネってやつを知っているか?」
「ああ。ぼくのお嫁さんにする予定だったが、ぼくを子どもあつかいしたから殺した」
「よし、おれの息子で確定だ。よろしくな」
「今ので確定なんですか! しかもさらっと物騒なことも言ってましたし!」
「そんなに物騒でもないだろう……こいつぐらいの年頃の男だったら年上の女を自分の嫁さんにしたいと考えてもおかしくないし」
「そっちじゃありませんよ!」
つっこんでいるメイのことを気にせずシュウジはスオウと力強く握手をした。
「お前がぼくのお父さん?」
「そうだ。まあ、おれなんかを尊敬する必要はさらさらない。今のところはスオウさまのほうが圧倒的に強いんだからな」
「聞いていたとおりのお父さんみたいで」
自分をそれほど子どもあつかいしないシュウジの態度を気に入ったようでスオウがにやつく。
「それで、なんでこんなところにいるんだ? 付き添いがいたってことはおれに会いに来たとかか」
「ああ」
「そうかい。いじらしいことで」
「お母さんとケンカをしているなら、ぼくが仲介役をやってやるが」
「息子さんもこう言ってますし、お母さまとの仲介役をやってもらったほうがいいと思いますよ」
シュウジと女神の事情を正しく理解しているかは不明だがメイがスオウの提案を後押しした。
「仲なおりか。今のおれよりもはるかに強いスオウさまの提案だから拒否もできないよな」
しぶしぶ了承をしたという雰囲気のため息をつきながらメイとスオウには見えないようにシュウジは邪悪そうな笑みを浮かべる。
「思ったよりはやく復讐できそうだよ。女神さま」
とシュウジはつぶやいていた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
報酬を踏み倒されたので、この国に用はありません。
白水緑
ファンタジー
魔王を倒して報酬をもらって冒険者を引退しようとしたところ、支払いを踏み倒されたリラたち。
国に見切りを付けて、当てつけのように今度は魔族の味方につくことにする。
そこで出会った魔王の右腕、シルヴェストロと交友を深めて、互いの価値観を知っていくうちに、惹かれ合っていく。
そんな中、追っ手が迫り、本当に魔族の味方につくのかの判断を迫られる。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。


魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜
四乃森 コオ
ファンタジー
勇者によって魔王が討伐されてから千年の時が経ち、人族と魔族による大規模な争いが無くなっていた。
それでも人々は魔族を恐れ、いつ自分たちの生活を壊しに侵攻してくるのかを心配し恐怖していた ───── 。
サーバイン戦闘専門学校にて日々魔法の研鑽を積んでいたスズネは、本日無事に卒業の日を迎えていた。
卒業式で行われる『召喚の儀』にて魔獣を召喚する予定だっのに、何がどうなったのか魔族を統べる魔王クロノを召喚してしまう。
訳も分からず契約してしまったスズネであったが、幼馴染みのミリア、性格に難ありの天才魔法師、身体の頑丈さだけが取り柄のドワーフ、見習い聖騎士などなどたくさんの仲間たちと共に冒険の日々を駆け抜けていく。
そして・・・スズネと魔王クロノ。
この二人の出逢いによって、世界を巻き込む運命の歯車がゆっくりと動き出す。
■毎週月曜と金曜に更新予定です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる