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同級生が黒幕でした

第14話

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「なんのことやら、わたしにはさっぱり」
 エニシの言葉に動揺をしているらしくサキが肩をびくつかせている。
「必死に隠す必要はないよ。というよりお兄さんとお姉さんもすでに気づいているようだからね」
「そうなんですか?」
 アヤとヌイの顔をサキが交互に見ていた。
「お姉ちゃんだもん」
「まあね。多分、サキちゃんは怪物を見つけることができるんだろうね」
 アヤは右手でピースサインを見せつけて、ヌイはから笑いをする。
「ごめんなさい。隠すつもりはなかったんですが、こう……確信みたいなものがなかったので」
「謝る必要はないさ。サキさんの言っているように不確定な情報はマイナスにしかならないからね」
「そうそう、気にしないでオッケー。できればそういう能力がなかったほうが良かったとは思うけど」
 エニシに同調をしているヌイがアヤの横顔に視線を向けていた。
「なに?」
 テレビを見た状態のままでアヤがつぶやく。
「いや、それよりもエニシはなんで分かったんだ。サキちゃんと出会ったのは今日がはじめてなんじゃなかったのか?」
「そうだが、色々と聞いていたからな」
 エニシもテレビのあるほうを見たが、すぐにヌイと目を合わせている。
「確信したのはついさっきだがね。サキさんはアキグチカサナくんのことを覚えているんだろう?」
「はい。けど、それはみなさんも」
「能力をつかえる者以外は忘れているんだ。だからさっきお兄さんも躊躇をした」
 ヌイが小刻みになん回もうなずく。
「サキちゃんにとってあんまり良くない思い出だと思うし。それにかなり前にも忘れていることを思い出させようとして色々とあったんだよね」
「あれは事故だ。気にすることじゃない」
「そりゃどうも」
 かつてのことを思い出しているのか目を閉じヌイはソファーにもたれかかった。



「なるほど。サキさんがはじめて能力の自覚をしたのはアキグチカサナくんに公園で襲われた時か」
 ソファーに座るエニシがコーヒーを飲む。
「自覚というかその時は目の錯覚みたいなものだと思っていましたね」
「それ以前に、似たような状態の人間を見たことはなかったかな」
「ないと思います。今日の殺人鬼のおじさんを見た時みたいに違和感があると思うので」
「冷静な分析だね。とても助かるよ」
 エニシがほほえんでいるが、その顔つきがこわいのかサキはなんとか表情を明るくしている。
「でも順番がおかしくない? サキが赤い石を見たのはアキグチくんに襲われてからだよ」
「コーヒーの飲みすぎか。それともテレビから脳をもらったのか。良いところに気づくじゃないか」
「ほめているの? それ」
 アヤが眠そうにあくびをした。
「もちろんだ。これ以上のほめ言葉を、おれは今のところ知らないな」
「勉強不足ね」
「痛感しているよ」
 アヤとエニシのやりとりをラジオのように聞いているようでソファーにもたれ、目を閉じているヌイがにやつく。
「お姉ちゃんの言うように、わたしが赤い石を見たのは襲われたあとだと思うんですが、なにか理由は分かっているんですか?」
「確定ではないが。能力をつかえるお兄さんとお姉さんと過ごしていたから同じようにつかえるようになってしまったんだと、おれは思っているよ」
「ウイルス感染みたいな感じか」
「かなり真剣な話なのに風邪をうつされちゃった、みたいな話に聞こえるんだけど」
 アヤの比喩に目を閉じたままでヌイがつっこむ。
「あながち間違った考えかたでもないな。サキさんみたいに、必ず能力をつかえるようになるとも限らないし」
「その宇宙ウイルスみたいなものをもっている状態で赤い石を見たから怪物じゃない殺人鬼のおじさんのことも分かるようになった、という可能性もありますよね」
「赤い石を見たことで能力が強化されたということだね。確かにその可能性もある。なんにしてもサキさんがおれたちと似たような人間を見つけることができる能力。それはとても役に立つものだ」
「なに……目星でもついたの?」
「そのとおり。しかし本当にどうしたんだ。やはりテレビから脳をもらったのか」
 エニシがアヤに拍手をおくっている。
 目を開けてソファーから起き上がったヌイも口笛を吹く。
「すごいよ! お姉ちゃん」
「サキまで茶化すんじゃない! というか、絶対にバカにしているだろう。お姉ちゃんだってかしこい時があるんだぞ」
 アヤがあほっぽいことを言ったからかサキがため息をついている、しばらくすると笑いだした。
 サキの笑顔を見たからかアヤもうれしそうにほほえんでいる。



「ジンノキズナ」
 エニシがつぶやきとともにアヤとサキは笑うのをやめた。ナース服を着るヌイも真剣な表情をする。
「ヌイに赤い石を渡せる可能性が高くて、アキグチカサナと接触をしやすいうえに……シンショウ中学に関係している」
 エニシが親指、人指し指、中指と順番に立てた。
「この三つに該当する人物、それがジンノキズナ。お兄さんは同じクラスだから顔ぐらいは見たことがあるはずだ」
「あー、顔見知りではあると思うけど話したことはないな。野球部に所属していた気もするが」
「わたしもあんまり聞いたことない名前だな」
 ヌイと同じようにアヤもそれほど面識がないようで首を傾げている。
「あのう……ハリヤマさんとアキグチくんに接触をしやすいってことは分かるんですが。どうしてシンショウ中学校に関係しているのが条件になるんですか?」
 話の腰を折ってしまうのを気にしてかサキは申しわさなさそうに質問をした。
「ああ、すまないね。怪物になってしまった人間を調べていくと必ずシンショウ中学校と関係している人物とつながりがあるんだよ」
「でも、わざとそうしている可能性もあるかと」
「なかったことにする能力をもっているし、あえてそういう小細工をする必要はない」
 それにお兄さんとお姉さんがジンノキズナを認識してないこともその能力によるものだと考えるほうが辻褄が合いそうだろう? とエニシは続ける。
 その意見に納得をしているようでサキは首を縦に振っていた。
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