30 / 41
ルートA
25話目
しおりを挟む
また、ここか。何回目なのかも忘れてしまった。
わたしが八雲ユニなのは覚えている。殺されるたびにこの真っ黒な場所に戻ってくることもこれまでの出来事も。
坂田くんだったら確実にわたしの水中自殺を疑う。
おびただしいほどの死を体験してきたわたしじゃなければ、溺れると推測をするはず。
坂田くんは遺体のわたしをどうするだろう?
遺体だったわたしが時間を巻き戻し、また生き返ってきたらどうするのだろう?
もちろん、わたしは魔法使いなんかじゃない。
どうして死ぬたびに時間が巻き戻るのか分からない。
けど、わたしは死んだとしても生き返れることを思い出せた。これまでの失敗した回数とどんな風に殺されてしまったのかをわたしは大体覚えている。
わたしだけが特別ではないのも知っている。
わたしはあのみずみずしい遺体のおかげで。
「八雲さん、今日は帰ったほうが良いんじゃない。下北さんや坂田にはおれが上手いこと伝えておくからさ」
公園か、遺体が大好きな山本くんには色仕掛けも通じないし……今のわたしと同じだったら。
「八雲さん?」
先程まで流れ星を探していたユニと雰囲気が全く違うと感じ取ったのか山本が首を動かす。
「えと、ありがとう。でも家に帰るんだったら直接言わないと失礼だと思うから、もう少し待つことにするよ」
「律儀だね」
「普通じゃない」
とりあえず今は家に帰ってはいけない……山本くんが坂田くんに報告したからかどうかは知らないけど、あの片目の二人組にまた。
「普通じゃないとおれは思う。覚えているんでしょう、八雲さんもさ」
このパターンは記憶にないな。山本くんの目的はあのみずみずしい遺体の入手。坂田くんよりもわたしと協力するほうが得だと考えたのか、それとも鎌をかけているだけか。
「覚えているって、なにを?」
「演技はしなくて良いよ。前回の水中自殺の件でおれも坂田も八雲さんがこれまでの記憶を覚えている状態なのは分かっているし」
「死んだから、また記憶が消えたとは考えなかったの」
「さっきの返事でその可能性はないと確信したよ。八雲さんって頼まれたらほとんど断れない性格なのに肝試しに参加しないことを直接伝えられるわけがない」
断るための明確な理由があれば別だけど、例えばこのまま家に帰ったら死んじゃうとかさ。という山本の推理にユニが拍手をする。
「うかつだったな」
「白々しくない……おれがこれまでの記憶を覚えていることぐらい」
「どっちにしても、わたしには関係ない。利用できるかできないかしか今のところは興味がないし」
「八雲さんの目的は?」
「あのみずみずしい遺体にもう一度会いたい」
「遺体を生きた人間扱いしてくれるんだね」
生きた人間扱いか。山本くんはそもそも知らないのか今回は覚えていないだけか、どちらでも別に良いか。
「できることなら坂田くんとも手を組みたいとわたしは思っているんだけど。ほしがっている情報も提供できるはず」
「水中自殺に追いこまれたのに坂田を恨んでないの」
「どうせ殺しても生き返るだけで意味がないし……今はみずみずしい遺体についての確認が最優先。それにこれまでの記憶持ちが三人もいる状況は坂田くんも有効活用したいんじゃない」
「こちらを見たということは透明化ポンチョとその欠点も知っているんですね」
フードのめくれに合わせて景色が歪み、坂田の生首が現れるもユニも山本も驚いていない。
「着脱のしやすさの反面、今日のような夜風の強い日は屋外では使いづらいですね……透明化ポンチョのことを知っている相手であればなおさら」
「わたしを殺すつもりだったとか」
「まさか、せいぜい拘束をするぐらいでしたよ。ぼくがほしがっている情報とはなんでしょうか?」
「みずみずしい遺体の正体」
「別に知りたくありませんけど。なんとなく、まだ八雲さんは切り札を隠していそうな感じが」
口を閉ざしたままのユニの目を坂田が見つめる。
「ぼくと手を組みたいということは、友達の下北さんを裏切る覚悟もあると判断をしても」
「カホちゃんを洗脳しているくせに、わたしが裏切るもなにもないような」
「貧乏くじを引かせまくったツケが回ってきましたか。にしても、拷問をされる可能性もあると分かってながら今みたいな強気な態度をとってますよね」
これまでに経験をしてきた拷問の内容を詳細にユニが口にする。平然とした様子で語る彼女や坂田とは裏腹に山本は胃液を吐いた。
「それだけの拷問をしたということは、その時のぼくも八雲さんが重要な情報を持っていると判断したわけですが……聞き出せた記憶がありませんね」
「わたしは今回じゃなくても構わない。また時間移動をして次のチャンスを」
「このタイムリープに回数制限があるとは考えてないんですか? 人間が過去に戻るためには膨大なエネルギーが必要なことぐらい」
「本当にわたしはどっちでも良いの。みずみずしい遺体を確認できたらラッキー程度にしか考えてないから」
「弱りましたね」
ユニの言葉がはったりではないと思っているのか坂田がうなっている。
「ちなみにですが、みずみずしい遺体のなにを確認したいんでしょうか? 八雲さんもご存知の通り……金の力ですでに調べ尽くしていますよ」
「大したことじゃないわ。少なくとも坂田くんのプラスにもマイナスにも全くならない」
「彼は?」
坂田が四つん這いになっている山本を見下ろす。
「遺体愛好家としてだったらプラスになるかもしれないわね」
「あらかた八雲さんが確認をしたいことは分かりましたが、その程度であればここでぼくが教えられますよ」
「直接じゃないと無意味なのよ」
「そうですか。ぼくも立ち会いをさせて」
「あのみずみずしい遺体がどうやっても破壊をできないのは坂田くんのほうが詳しいでしょう」
「確かに」と坂田が笑った。
わたしが八雲ユニなのは覚えている。殺されるたびにこの真っ黒な場所に戻ってくることもこれまでの出来事も。
坂田くんだったら確実にわたしの水中自殺を疑う。
おびただしいほどの死を体験してきたわたしじゃなければ、溺れると推測をするはず。
坂田くんは遺体のわたしをどうするだろう?
遺体だったわたしが時間を巻き戻し、また生き返ってきたらどうするのだろう?
もちろん、わたしは魔法使いなんかじゃない。
どうして死ぬたびに時間が巻き戻るのか分からない。
けど、わたしは死んだとしても生き返れることを思い出せた。これまでの失敗した回数とどんな風に殺されてしまったのかをわたしは大体覚えている。
わたしだけが特別ではないのも知っている。
わたしはあのみずみずしい遺体のおかげで。
「八雲さん、今日は帰ったほうが良いんじゃない。下北さんや坂田にはおれが上手いこと伝えておくからさ」
公園か、遺体が大好きな山本くんには色仕掛けも通じないし……今のわたしと同じだったら。
「八雲さん?」
先程まで流れ星を探していたユニと雰囲気が全く違うと感じ取ったのか山本が首を動かす。
「えと、ありがとう。でも家に帰るんだったら直接言わないと失礼だと思うから、もう少し待つことにするよ」
「律儀だね」
「普通じゃない」
とりあえず今は家に帰ってはいけない……山本くんが坂田くんに報告したからかどうかは知らないけど、あの片目の二人組にまた。
「普通じゃないとおれは思う。覚えているんでしょう、八雲さんもさ」
このパターンは記憶にないな。山本くんの目的はあのみずみずしい遺体の入手。坂田くんよりもわたしと協力するほうが得だと考えたのか、それとも鎌をかけているだけか。
「覚えているって、なにを?」
「演技はしなくて良いよ。前回の水中自殺の件でおれも坂田も八雲さんがこれまでの記憶を覚えている状態なのは分かっているし」
「死んだから、また記憶が消えたとは考えなかったの」
「さっきの返事でその可能性はないと確信したよ。八雲さんって頼まれたらほとんど断れない性格なのに肝試しに参加しないことを直接伝えられるわけがない」
断るための明確な理由があれば別だけど、例えばこのまま家に帰ったら死んじゃうとかさ。という山本の推理にユニが拍手をする。
「うかつだったな」
「白々しくない……おれがこれまでの記憶を覚えていることぐらい」
「どっちにしても、わたしには関係ない。利用できるかできないかしか今のところは興味がないし」
「八雲さんの目的は?」
「あのみずみずしい遺体にもう一度会いたい」
「遺体を生きた人間扱いしてくれるんだね」
生きた人間扱いか。山本くんはそもそも知らないのか今回は覚えていないだけか、どちらでも別に良いか。
「できることなら坂田くんとも手を組みたいとわたしは思っているんだけど。ほしがっている情報も提供できるはず」
「水中自殺に追いこまれたのに坂田を恨んでないの」
「どうせ殺しても生き返るだけで意味がないし……今はみずみずしい遺体についての確認が最優先。それにこれまでの記憶持ちが三人もいる状況は坂田くんも有効活用したいんじゃない」
「こちらを見たということは透明化ポンチョとその欠点も知っているんですね」
フードのめくれに合わせて景色が歪み、坂田の生首が現れるもユニも山本も驚いていない。
「着脱のしやすさの反面、今日のような夜風の強い日は屋外では使いづらいですね……透明化ポンチョのことを知っている相手であればなおさら」
「わたしを殺すつもりだったとか」
「まさか、せいぜい拘束をするぐらいでしたよ。ぼくがほしがっている情報とはなんでしょうか?」
「みずみずしい遺体の正体」
「別に知りたくありませんけど。なんとなく、まだ八雲さんは切り札を隠していそうな感じが」
口を閉ざしたままのユニの目を坂田が見つめる。
「ぼくと手を組みたいということは、友達の下北さんを裏切る覚悟もあると判断をしても」
「カホちゃんを洗脳しているくせに、わたしが裏切るもなにもないような」
「貧乏くじを引かせまくったツケが回ってきましたか。にしても、拷問をされる可能性もあると分かってながら今みたいな強気な態度をとってますよね」
これまでに経験をしてきた拷問の内容を詳細にユニが口にする。平然とした様子で語る彼女や坂田とは裏腹に山本は胃液を吐いた。
「それだけの拷問をしたということは、その時のぼくも八雲さんが重要な情報を持っていると判断したわけですが……聞き出せた記憶がありませんね」
「わたしは今回じゃなくても構わない。また時間移動をして次のチャンスを」
「このタイムリープに回数制限があるとは考えてないんですか? 人間が過去に戻るためには膨大なエネルギーが必要なことぐらい」
「本当にわたしはどっちでも良いの。みずみずしい遺体を確認できたらラッキー程度にしか考えてないから」
「弱りましたね」
ユニの言葉がはったりではないと思っているのか坂田がうなっている。
「ちなみにですが、みずみずしい遺体のなにを確認したいんでしょうか? 八雲さんもご存知の通り……金の力ですでに調べ尽くしていますよ」
「大したことじゃないわ。少なくとも坂田くんのプラスにもマイナスにも全くならない」
「彼は?」
坂田が四つん這いになっている山本を見下ろす。
「遺体愛好家としてだったらプラスになるかもしれないわね」
「あらかた八雲さんが確認をしたいことは分かりましたが、その程度であればここでぼくが教えられますよ」
「直接じゃないと無意味なのよ」
「そうですか。ぼくも立ち会いをさせて」
「あのみずみずしい遺体がどうやっても破壊をできないのは坂田くんのほうが詳しいでしょう」
「確かに」と坂田が笑った。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
会社員の青年と清掃員の老婆の超越した愛
MisakiNonagase
恋愛
二十六歳のレンが働くオフィスビルには、清掃員として七十歳のカズコも従事している。カズコは愛嬌のある笑顔と真面目な仕事ぶりで誰からも好かれていた。ある日の仕事帰りにレンがよく行く立ち飲み屋に入ると、カズコもいた。清掃員の青い作業服姿しか見たことのなかったレンは、ごく普通の装いだったがカズコの姿が輝いて見えた。それから少しづつ話すようになり、二人は年の差を越えて恋を育んでいくストーリーです。不倫は情事かもしれないが、この二人には情状という言葉がふさわしい。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/9:『ゆうじんのかお』の章を追加。2026/1/16の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/8:『ついてきたもの』の章を追加。2026/1/15の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/7:『かわぞいのみち』の章を追加。2026/1/14の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる