追憶の電脳世界〜エタニティ・ドリーム・ワールド

夢達磨

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第三章 ギルド結闘編

第100話 次の舞台へ

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 身動きができないゴーレムはジタバタして暴れる。
 
 時間を稼がれたらダメージカウンターが不発に終わるから、『サステナブルエフェクト』の効果で待機時間を引き伸ばす。
 
「アイスウルフ。アイスブレス!」

 アイスブレスはゴーレムの動きを鈍らせる。

「トゥビーさん、お願いします」
「はい! お任せください!」

 トゥビーさんは、ゴーレムの右腕、頭、体、左腕の順番で作業を進める。

 外に出ないようにジークさんたちが上から攻撃する。

「出来ました! いつでも起動できます!」

「では、トゥビーさんの合図で順番通りにお願いします!」

「ーーグランドウェーブ!」

 足掻くように橘さんはグランドウェーブを使う。

「エルフ族の誇りを胸に。美しく、優雅に咲いて。芽吹く命! 『ジャーミネイトシード』」


 トゥビーさんが言い終えると、蔦の葉がゴーレムの体を侵蝕するように次々と伸びていく。
 
 その蔦はゴーレムと橘さんの体の自由を奪う。

「動かせない……!?」

 橘さんの抵抗は無意味に終わる。
 

「水魔法部隊!」
 
 僕の言葉で、ルナさんとトゥビーさんが水魔法で攻撃する。
 硬かった表面は黒ずんで柔らかくなった。

「穿孔部隊!」

 ジークさんはドラゴンスピアー、ザーハックさんは燼滅紅牙を使用して外壁を破壊した。

 そして僕は飛び上がり、空いた穴の中に侵入する。

「橘さん。終わりです」
「いやいや、まだ分からないよ。勝負はこれからさ。これから君を追い出して……」

「無理ですよ。さっきの岩魔砲でMPは空っぽ。回復したMPでグランドウェーブを使った。他のスキルを使うMPは余っていないはずです」

「はっははは。さすがは僕の見込んだ人ですね。その通りです。蔦で僕は動けないし、MPは切れた。しかし、ダメージカウンターも時間切れになっているはずだよ?」

「その点はご心配なく。きちんと対策はしてありますので」

 サステナブルエフェクトの効果でダメージカウンターの反撃待機状態が通常時より長くなっている。
 その状態が終われば僕はダメージカウンターを使うことができる。あと少しの辛抱だ。

「なるほど……僕はもう詰んでしまったということか。はっはっは。まったく。君たちのチームは最高ですね」

 橘さんは嬉しそうに笑った。そして、反撃待機状態が解除された音がした。

「はい。最高です! では、いきますね。ーーダメージカウンター!!!」



「永遠の絆のみなさーん! 優勝、おめでとうございまーす!」

 そう言ってくれたのはメルさんだった。

 僕たちはギルド対抗戦・本戦を優勝することができた。最後の一撃を橘さんとギルドガーディアンに当たるように攻撃をして止めを刺した。
 どちらかのHPがなくなったから試合が終了した。正直どっちを倒せたかは分からない。

「ありがとうございます。メルさんも応援とユナちゃんの面倒を見て頂きありがとうございました!」

「トワ君! お疲れ様! ナイスファイトだったよ!」

「あ、ヒロさん。お疲れ様です。あんまり出番がなくてすみません」

「いいよいいよー! 司令塔は楽しいからね! 勝ててよかった!」

「それなら良かった。みなさんも本戦お疲れ様でした! 今日はゆっくり休んで下さいね。あ、すみません。席外しますね」
「はーい!」


 僕はその場を離れ、窓口にいる橘さんの所へ向かった。

「橘さん。本戦お疲れ様でした」

「あぁ。トワ君。お疲れ様。優勝おめでとう」
「ありがとうございます。楽しい試合でした。またやりましょう」

「ふふっ。やりたい放題やられた僕は全く面白くなかったけどね」
「あははー。すみません……」

「今度は負けないよ。また勝負を挑ませてもらおう」

「はい。喜んで!」

 僕と橘さんは固く握手をした。

「最後に一ついいかい?」
「はい?なんでしょう?」

「僕がゴーレムと一体化した時から、皆さんの息がらぴったりでしたが……まさか、読まれていたのですか?」

「はい! 読んでました! この作戦を成功させるためには、トゥビーさんの力が必要不可欠でした。上手く決まって良かったです」

「そうか、読まれていたか。僕もまだまだですね。では、優勝したご褒美に、このチケットを差し上げましょう」

 そういって、橘さんはゲームパッドから謎のチケットを取り出した。

「どうぞ」

 僕はお礼を言って受け取る。

「これは? ーープレイシス行きのチケット?」

「そうです。このチケットを見せたら船に乗ってプレイシスに行くことができます。
 人数分はないと思いますので、申し訳ありませんがその分は自分たちで出してください」

 祝福の大陸プレイシス。このゲーム本来の始まりの場所。
 そこから僕たちプレイヤーの冒険が始まる。

「おぉ! ありがとうございます! 助かります! でもこれをどこで?」

「兄さんがトワ君たちにと」

「道鷹さんが? なんでだろう」

「プレイシス大陸で兄さんが待っています。それにこのゲームを攻略するなら必要だと思いますよ」

 僕も道鷹さんに会ってみたい。もちろん、この世界から脱出できるように……そしていつか、現実世界とゲームの世界を自由に往復できるようにしたい。

「分かりました。僕もいつか行こうと思っていたので助かります。それに、道鷹さんにも会ってみたいですし」

「ありがとう。兄さんも喜ぶよ」

「おい! 橘ー!」

 威圧的な言い方でこちらに近づいてきたのはドミニデスだった。

「なんですか? 待て、もできないんですか?」
「ふざけるな! 俺様を犬扱いしやがって!」

「何か間違いでも?」
「なんだとぉっ!」

 やばい、立ち去るタイミングを失った。

「見つけたぞ!」

 次にやってきたのは、ジークさんだった。

「ジークさん……」

 僕の声は届かず、そのままドミニデスに話しかけた。

「ドミニデス! お前は俺の恩寵が未完成と言っていたが何か知っているのか!?」

「王子か。まあ、俺様も恩寵の経験者だからな。未完成とは言ったが最後のあの力は良かったと思うぜ」

「あれが恩寵の完全体なのか?」
「それは知らん。俺様が達していたのがあの領域だったからだ。その先の進化がある可能性も否定はできない」

「だからあの時、わざとお前は俺を挑発したのか?」
「挑発? ふっ。なんのことだか」

 二人は恩寵の話をしている。ジークさんのあの姿、すごかったもんな。最後のフィナーレスキルもものすごいものだった。

 ドミニデスも恩寵を経験していたから分かるものがある……か。

 話は進み、ジークさんはドミニデスに手を差し伸べた。

「何だその手は……」
「国や国民に被害を与えたことを俺は許す事はできないが、恩寵によって我を忘れ、お前が暴走していたのは、俺も経験して分かった。
 一歩間違えていたら俺が人々を傷つけ、立ち直れなかったかもしれない。
 だから、まああれだ。お互い恩寵で苦労したもの同士だ。大変だったな」

 ジークさんは手を引っ込め、恥じらいながらも言い切った。

「敵視してきたが、これからは良い強敵《ライバル》としてお互い高め合おう。また勝負をしよう」

 話を続け再び手を差し伸べる。その手をドミニデスは取った。

「あぁ。俺も強くなっておこう。遅くなったが本戦お疲れ」

「おう!」

 二人は仲直り? とは言えないかもしれないが壁がなくなったようで一安心だ。

「良かったですね、ドミニデス君。ずっとその事を気にしてましたもんね」

「おい! それは言わない約束だろう!」

 突然入ってきた橘さんの言葉にドミニデスは慌てふためく。

「二人が良いライバルになれたみたいで良かったです。では王子様、僕たちも良きライバルとして仲良くしましょう」

「インチキメガネ、お前は無理だ!」


 ジークさんはぶれないなぁ。
 僕はクスッと笑いその場を後にした。
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