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第三章 ギルド結闘編

第90話 絶体絶命

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 数は……五体……これはまずい。あのスキルは三分で消えるが、それまで耐えられる保証はない。
 ギルドキャノンを使って破壊することも可能。ーーしかし、今使ったら、特殊状態が解除されてしまう。特殊状態はあと、四、五分はあるはず。
 ギルドキャノンは五分に一回、打つことができる。属性コンボの効果時間は十分間。
 まあ、同じ時間に撃っているから、相手の属性コンボは発生しないんだけども。

 少しもったいない気がするが、このままやられるのを見るのも嫌だ。
 
 そんな事を思いながら、『ギルドキャノン』を手に取る。
 そんな僕を見てか、ハニポンが肩をパンッ! と叩いて言ってきた。

「なーに、迷ってんのよぉ! 迷う暇があるなら、さっさと撃っちゃいなよぉ! あんたがしようとしてることわぁ、間違いじゃないんだからぁ」

 分かってはいるんだ。ここで撃たないと後々後悔するって。でも……その前に伝えなきゃいけないことがある。
 
「ハニポンありがとう。大丈夫! 僕は……僕たちは本気で勝ちに行くから! みんなが僕を信じてくれてるように、僕もみんなを信じる! だから、使うのは今じゃない!」

「はぁぁっ!? 何言っちゃてるわけぇ!? 今使わないとか、ありえんてぃーなんですけどぉ!? みんながピンチなんですけどぉ!?」

「大丈夫。僕に考えがある」

「ふ、ふーん。あんたは、孤高のジーニアスと呼ばれてるからぁ、こみこみで策があるんでしょうけどぉ。まあ、お手並み拝見といこうじゃないのぉ」

 橘さんは、トゥビーさんに攻撃を仕掛けているのが分かった。やはり狙いはトゥビーさんか。

 僕は、狙われているグーファーさんたちに向けて言葉を発した。

「戦闘しながらで大変だと思いますが、ヒロさんとリーフィスさんの二人は橘さんの近くへ。
 グーファーさんは、ショーマさんの所に移動してください」

「え? わ、分かりました」
「はい! グーファーさんについて行きますね」
「了解! トワ君!」

 僕の指示通りに三人は動く。
 狙い通り、ショーマさんの所にゴーレムが二体、橘さんの所に一体それぞれ別れた。

「相手の近くで、ゴーレムが攻撃のモーションを見せたら、避けて下さい、そのまま反撃を入れましょう!」

「そんな上手くいく訳ないじゃぁん! しかも、あのゴーレムって召喚者の言うことしか聞かないでしょぉ?」

「うん。聞かないから、基本言われたことしかしない。だけど、橘さんは『あの三人の相手をして』と言った。あのゴーレムは一つの指示しか聞けない。だから、バラけることによって、次のことが起きる」

 ハニポンの質問に返事をして、答え合わせをする。

 ゴーレムは攻撃のモーションを見せると、グーファーさんはショーマさんの後ろに隠れる。

「えっ! おい! やめろーー!!!」

 バッッゴォォォン!!!

 と、鈍い音を立てながらショーマさんとグーファーさんを吹き飛ばした。

 ショーマさんを盾にしたグーファーさんは、すぐさま立ち上がり、ゴーレムにスキルを放つ。

「っ! 『挑発』!」

「あ、グーファーさん! そのゴーレムには挑発は効きません!」

「あ……そうなのですか。恥ずかしいです」

 グーファーさんはその場に赤面しながら立ち止まった。
 
「坊主、すまねぇ。フィナーレスキルを使う暇を作れねぇ!」

「大丈夫ですよ。不利な状況なのに耐えてくれてありがとうございます」

 ザーハックさんの言葉に僕は感謝の言葉を返した。ザーハックさんのおかげで人数的有利は取れている。大変申しわけないと思う。
 

 一方、ヒロさん達は、ゴーレム二体と橘さん、カルリナさん、アルバートさんと対峙していた。

 ヒロさんはアルバートさんの魔法を避けながら、ゴーレムからの攻撃を誘った。
 橘さんは、『マッドショット』でトゥビーさんとリーフィスさんを遠距離から狙う。
 そして、追い詰められた、リーフィスさんにゴーレムは強烈な右ストレートを喰らわせる。

「きゃーっ!!!」
 
 攻撃を受けたリーフィスさんは、端にあるシールドまで吹き飛ばされた。
 
「う、うぅ。はっはぁっ」

「リーフィス王女ぉぉっ!!!」

 ギルドロビーにジークさんの叫びがギルドロビーに轟いた。
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