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第三章 ギルド結闘編

第88話 絶対防御の巨人

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 橘さんの早めに登場したことにより、迷いが出てしまった。
 僕たちの作戦を悟った瞬間に、司令塔に戻られたら、失敗してしまう可能性があるからだ。

 早めにもう一人キルできればいいのだけど。

 戦場に姿を見せた橘さんは、スキル『グランドウェーブ』で、泥の波を発生させ、そのままギルドガーディアンを包み込んだ。

 相手のギルドガーディアンは、分厚い泥の装甲を纏った。元々高いゴーレムの防御力がさらに上がってしまった。

「さて、下準備は済みました。トワ君がどう出てくるか……楽しみですね。ーークルト君、こちらも手筈通り行きましょう」

「あぁ! 任せてくれ!」

 言い終えると、橘さんはゆっくりと歩き出した。
 その方向にはトゥビーさんがいる。僕は橘さんの狙いはトゥビーさんだと確信したので、言葉を発した。

「トゥビーさん! 橘さんの狙いはトゥビーさんです! 気をつけて下さい!」

「分かりました! 気をつけます!」

 ギルドキャノンはまだ打てない状態。今僕ができるのは、状況を判断してみんなに共有する事と、サポートする事だ。
 
 他の戦況を見てみると、アルバートさんとヒロさんのメイジ対決が始まっていた。

「いっくよー! 『スパイラル・マジック』!」

 アルバートさんはそれを華麗に避け、スキルを放つ。

「どこを狙っている。その精度じゃ、俺に当てることはできんぞ! 『エアロスワール』!」

「うぎゃっ!」

 風の魔法で吹き飛ばされながら、変な声を出すヒロさん。
 スワール系の魔法はダメージは少ないが、大きく吹き飛ばすノックバック効果がある。アルバートさんは、一気に距離を詰めるとーー
 
「この距離では、避けられまい! ーー我が求めるは暗黒の力! その力で敵を葬れ! 闇魔法! 『ダークネス……』」

「ーー『ライフドレイン』!!!」
「ーー『幻影斬』!!!」

「ぐわぁぁぁっ!!!」

 隙だらけのアルバートさんにヒロさんと駆けつけた、グーファーさんの攻撃が直撃する。

「詠唱が長いから隙だらけだよぉ! グーファーさんありがとう!」

「いえいえ、僕の助けは必要ありませんでしたね。作戦のために、早くもう一人脱落させましょう!」

「いやいや助かったよ! そうだねぇ。んーーっとー。グーファーさんはトゥビーちゃんの加勢に行ってもらっていいかな? 
 橘さんがトゥビーちゃんとリーフィスちゃんを狙ってるっぽいし。今私たちも欠ける訳にはいかないから」

「了解です! 行ってきます!」
「うん! よろしくねー!」

(ヒロさんなら大丈夫そうだな)

 そう思いながらザーハックさんを見てみると、クルトさんとショーマさんの二人と戦闘を繰り広げていた。

 ザーハックさんが攻撃をしても、ショーマさんの回復スキルで倒せない状態。
 さすがのザーハックさんも、サポートが張り付いた状態の相手をするのは難しいだろう。
 
 ショーマさんを狙おうとしてもクルトさんが防ぐので、ダメージにならない。
 もちろん、別の場所で人数的有利は作れているので助かってはいるのだが……。

「ザーハックさん、フィナーレスキルでクルトさんを狙えますか?」
「あぁ、狙えるとは思うが、ヒーラーでなくていいのか?」

「はい。ステータス的に物理防御にかなり振っていますので、後でリーフィスさんかヒロさんに当たってもらいます」

「分かった。任せろ!」
「お願いします」

 ここで、ザーハックさんにクルトさんを倒してもらえるとありがたい。
 大変だけど、ザーハックさんにクルトさんとショーマさんの相手をお願いした。
 一対二の戦いが再び始まろうとしていた。
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