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第三章 ギルド結闘編
第77話 トワvsジーク再び
しおりを挟む「ところで、ハニポン。恩寵って何か知ってる?」
僕がそう言うと、ハニポンは僕の耳元で囁くように言った。
「恩寵? あー、マスターの独り言を聞いただけなんだけどぉ。
恩寵は、チートの類《たぐ》いとかぁ、神からの贈り物だとかぁ、神が創りだした奇跡だとかぁ、ブツブツ言ってたよぉ?」
「えっ!? そうなんだ! チートなの?」
チートの類いや、神からの贈り物……。ゲームマスターは知っているのか。ますますゲームマスターが怪しく見えてくるな。
「さぁ? マスターの独り言が聞こえただけだからねぇ。
でも、あーしがこの世界のデータを見た時からあったから、だいぶ前からあるんじゃないのぉ? それより、早く始めよぉ?」
「あ、あぁ! ごめんごめん。ジークさんにも待たせてるしな」
「トワさん。手加減はなしだよ!」
「はい。勿論です!」
「準備はいいかーい? よーい! 始めぇ!」
ハニポンの合図で、ジークさんは走ってこちらに近づいてきた。
僕はジークさんに斬りかかる。
「『アクセル』!」
僕の剣は空を裂く。背後に気配を感じたので、すぐさま剣で振り向きざまに攻撃をおこなう。
二つの武器がぶつかり合い、火花が散る。お互いのパワーは互角。
鍔迫り合いのようにその場で押し合う形となっている。
鍔迫り合う中、ジークさんは笑みを浮かべ、
「さすがトワさん。いい反応速度だ。だけど、俺はもっと強くなる! 強くなってみんなが安全に暮らせる国を、俺は作る!」
「僕も強くなりたいです。ギルドマスターとしてみんなを守れるように! はあぁっ!!!」
僕は引き技を使い、ジークさんの体勢を崩し、剣戟を振るう。
「ぐっっ! ……い、今のは?」
「引き技です。ジークさんが押し込んでくるので、わざと僕の方に引いて、体勢を崩させたんです」
「なるほど。一つ勉強になったよ。では、ここからが本番だ! さぁ、行くよ……」
「こい!」
ジークさんは目を瞑り集中する。すると、太陽の紋章が浮かび上がり、メッシュの部分がオレンジ色に変わった。
「自分の意思で、恩寵を……」
「え!? ちょ、やばたんだって! 暑すぎてメイク落ちるんですけど!? いきなりなんなの!?」
太陽の恩寵を初めて見る、ハニポンは驚きを隠せない様子。
「あれがジークさんが使う、太陽の恩寵だよ。前までは、我を忘れて暴走してたんだけど、あれを制御できるようになったらしいんだ」
「太陽サンサンってか、もう太陽そのものじゃーん。あーし、焼きこげちゃうぅ」
「元々、黒いからいいじゃん」
「よくないのぉ! あーしはこれ以上焼くつもりはないんだからぁ!」
「じゃあ離れておきなよ」
「言われなくてもそうするぅ!」
そう言うとハニポンは、ルナさんの方へと向かった。
「ふぅ。お待たせ! さぁ、第二ラウンドを始めようか!」
僕は、剣を突くように攻撃をする。
ジークさんは、炎の翼を生やし、飛翔する。
「あんな事までできるのか!」
感心していると、ジークさんは技を繰り出す準備をする。
左手を掲げると、巨大な炎の塊が出現する。
「いくぞ! 『アポロ・ブラスター』!」
左手を振り下ろすと、炎の塊から無数の炎弾《えんだん》が地上へと降り注ぐ。
僕は、避ける選択をしたが、全てを避ける事ができずに被弾した。
「うわぁぁああっ!!!」
剣を地面に突き刺してなんとか、立てている状態だ。
ジークさんは急降下を始め、猛攻は続く。
「これでラストだ! 『太陽神《アポロ・》の一撃《ブロー》!!!」
僕は、ジークさんの攻撃に合わせ、剣を突き刺すと、剣と拳がぶつかり合う。が、数秒経つと大きな爆発を起こした。
僕は吹き飛ばされ、地面に強く叩きつけられた。
「勝負ありかな?」
「ま、まだです! まだいけます!」
ジークさんの言葉に僕は、食ってかかるように言った。
ふらふらっとハニポンが飛んできて言った。
「いや、勝負ありよぉ。あんたの負けねぇ」
「僕はまだまだやれる!」
「いーや、無理。残念だけどぉ、あんたに勝ち目はないわぁ」
「やってみないと分からないだろ!?」
「あんた、まだ気づかないのぉ? なんであーしが、わざわざ対戦相手を選んであげてたかぁ」
「いや、それは、僕の訓練のためだろ?」
「そうなんだけどぉ、あーしはわざと、あんたがスキルを使わないでも勝てそうな、弱い相手を選んでたのぉ」
「弱い……相手?」
僕とハニポンが話を始めると、何かを察してか、ジークさんはルナさんの手を引きながら、言葉を発する。
「ルナ。今は俺たちは離れておこう」
「分かりました。トワさん失礼します」
そう言い残し、二人は別の所へと移動を始めた。
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