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第三章 ギルド結闘編

第58話 エルフ族の過去

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 手を振りながら、こちらに走ってくるリーフィスさんの姿があった。

 そんな走らなくてもいいのに。なにかあったのかな?

「あ、トワさん。お忙しい中すみません」

「いえ、特に何もしてないので大丈夫ですよ。どうかしましたか?」

 リーフィスさんの言葉に僕は返すと、ドリアード様が手を挙げて言った。

「あっ、ごめんなさいね。私が呼んでほしいって頼んだの。
 ギルドハウスを購入したと聞いたから。一度見ておきたくてね」

「そうだったのですね。購入したばかりでまだ中身はないのでお恥ずかしいですが」

 僕とリーフィスさんは、ドリアード様に、中身がスカスカのギルドハウスを案内して回った。

 家具などはまだないけれど、家の構造や大きさには自信がある。

 案内を終えると、ドリアード様は笑顔を取り繕いながら感想を述べた。

「素敵なギルドハウスね。中身はまだないようだけど。
 あ、そうそう。この前のお礼も兼ねてプレゼントを持ってきたの」

「あ、ありがとうございます。中身は……これから集めようと思います……。
 プレゼントですか? せっかくですので頂きます」

「そんな、かしこまらなくていいのに。はいどうぞ」

「ありがとうございます! 助かります!」

 ドリアード様は、家具や野菜の種などをカード化の状態で渡してくれた。

 野菜は育てようと思っていたので、嬉しい。

 土地はあるし、一部を畑にするのもありだな。

 そして、僕は、気になっていた事を聞いてみる事にした。

「あの、ドリアード様。二つほど聞きたいことがあるんですがいいですか?」

「えぇ。いいわよ。何かしら」

「答えられない質問もあると思いますので、答えられる範囲でお願いします。
 一つはドリアード様は大精霊だからと納得できます。
 が、なぜ長老さんたちは、レベルや職業があったのに、ウェーンさんやトゥビーさんたちには、レベルや職業がないのはなぜですか?
 二つ目は、エルフ族が人間を嫌う理由ってなんですか?」

「あーそれね。まあ、気になるわよね。少し長くなるわよ」

「はい、構いません」
 


「数百年前までは、人間もエルフも他の種族も、レベルや職業なくて、みんな力を合わせて生きていたの。
 エルフ族は他の種族のように、街に住んでいる子もいたし、人間と冒険に出る子もいたわ。
 でも、ある日、人間族が新たに開発した、レベルや職業を持つ制度によって状況は一変したの。
 今の君たちのようなプレイヤーの様な感じね。死んでも、教会で生き返るの。でも、老衰などでは生き返らないんだけどね」

 そんな制度があったのか。
 
 勝手に、『プレイヤーシステム』と名付けておこう。 

 なら、そのシステムを利用した者は、もれなく全員、HPが0になっても教会で生き返ることができるってことか。

 職業やレベルがある、ルナさんやリーフィスさんたちも、それが適応されているってことだよね?

「その制度で、種族間のパワーバランスが崩れ始めたの。
 まあ、それだけなら良かったんだけどね。
 その制度を利用すると、死んでも生き返ることは出来るけど、ステータスや本来の力が制御されてしまうの。
 レベルが上がるにつれ、ステータスなどが上がって強くはなるんだけどね。             
 エルフ族は元々、長寿だし、知力や魔力が高かったから、そんな事をしなくても十分強かったし、回復スキルも豊富だから、致命傷を受けても回復ができたの」

 そりゃあ、そのシステムがあれば、俗に言うゾンビだ。

 争いでも起きれば、いつかは人間が勝利してしまう。死んでも生き返るんだから。

 エルフ族はよく、知力や魔力が高いと言われてるもんね。

 ドリアード様は少し沈んだ顔を浮かべて、話を続けた。
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