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第三章 ギルド結闘編
第48話 エルフの里
しおりを挟むメルさんと夢のようなひと時を終え、次の日の朝を迎えた。
僕は、ギルド会館の客間で寝泊まりさせてもらっている。
そして今日はドリアード様の依頼を受ける日だ。
魔物の討伐と言っていたが、メロディアスとも戦闘をすることになる可能性もある。
危険なのでここは入念に準備が必要だと思い、アイテムを購入してから行くことにした。
(そういえば、コロンちゃんに挨拶してなかったな。ちょっと寄ってみるか)
僕は、ギルド会館の裏口から外に出て宿屋コロンへと向かう。
宿屋コロンに着いた僕はドアノブに手をかけ、重い扉を開く。すると、
「こらぁ! コロン! 待ちなさーい! ママをからかうんじゃありません!」
「きゃっははーー。こっちだよーー!」
ドアを開けるとそこには楽しそうに走り回るコロンちゃんと、それを追いかけるユミネスさんの姿だった。
ユミネスさんはネットリした話し方をしてたのを記憶しているのだが、あれはキャラを作っていたのか。
すると、僕を見つけたユミネスさんは、鋭い眼光で僕を睨みつけ、作った声で声をかけてきた。
「あぁらぁぁ。お兄ぃさぁん。久しぶりねぇぇ。でぇ、何かぁ見ましたかぁ?」
あれは見てはいけなかったようだ。僕はあさっての方向を見ながら、
「いえ……。何も見てませんし何も聞いてませんよ? 相変わらず綺麗な店内ですねーー。あっははは」
「なぁらぁ、良かったわぁぁ。うっふふぅぅ。こぁらぁコロン。お兄ぃさんにぃ、挨拶しなさぁいぃ」
「あ、お兄さんこんにちはです!」
「コロンちゃん、ユミネスさんこんにちは。今日は無事に帰ってきた事の報告と挨拶に来ました」
「そおぉなのねぇぇ。おつかれさまぁぁ。良かったらぁ、ランチ食べていかなぁいぃ?」
「お兄さんお疲れ様です! 一緒に食べるですよ!」
「ありがとうございます。では、オムライスをお願いします」
_______
食事をしながら色んなお話をした。ガンフさんが作るオムライスはとっても美味しい。
食べ終わるとコロンちゃんにまた遊びに来ると伝え、宿屋コロンを後にした。
そしてギルド会館に戻る道中、依頼に備えてアイテムを購入した。
ギルド会館のドアを開けると、そこにはヒロたちがいた。お昼頃といってもまだ11時前だ。みんな早いな。
「あ、トワ君おはよう! もうみんな集まってるよー!」
「みなさんおはようございます。遅くなってすみません。お早いですね。僕が遅いのかな?」
みんなと挨拶を済ませて待機する。今日の僕のバイトの内容はドリアード様の依頼をこなすことだ。昨日マリーさんに言われていた。
今回の依頼は僕たちのギルドで受けることになっている。
まだ時間があるので、今後の活動やギルド名について話し合おうと思い、ギルドマスターらしく言った。
「ギルドを結成したのにギルド名が決まってませんね。少し時間があるので決めましょう。何か案はありますか?」
すると、タイミング悪く突如、窓口の方で光が差した。
ドリアード様だ。ギルド名などは後に決めようと伝え、ドリアード様の元へと集う。
「あら、みなさんお早いですね。では、依頼の詳しい内容を伝えますね」
ドリアード様の依頼内容はこうだった。
ルルード大森林やエルフの里の近くに現れた高レベルの魔物の殲滅。
そして、エルフの里の人と交流し、友情を深めることの二つだった。
メロディアスは姿を消したらしいので今は放置でいいらしい。
僕たちのギルド六名とギルド会館代表としてザーハックさんの七名で行くことになった。ザーハックさんも来てくれるなら心強い。
「では、ご案内します。私の近くに来てください。では、テレポート!」
「「「うわっ!?」」」
僕たちは光に包まれた。
光が弱まり視界が戻ると、目の前には鳥居のような門があった。
その門には『ここはエルフの里 人間族は近づくべからず』と書いてある。
バリバリ近づいてますけど……目の前にいるんですけど!? いきなり攻撃されないか心配だ。
まあ、エルフは見たいけど。
「一瞬で……。凄いですわ。便利もいいですわね。私もテレポートを使えるようになりたいですわ」
「ルナ様がその魔法を使えるようになれたらいいですね! 自分に魔法適性がないので使えないでしょうけど」
ルナさんのテンションが上がっている。グーファーさんは魔法適性が無いことを嘆いている。
でも、ルナさんがそんなに魔法に興味があるとは知らなかったな。
確かにテレポートを使えればとても便利だ。ルナさんやリーフィスさんの国にも行けるだろうし。覚えられたらいいな。
すると、ドリアード様が言う。
「着きました。ここが、エルフの里ですよ。まずは、里の皆さんと挨拶を交わしましょう」
「たくさんの自然に囲まれたいい大地です。木々も喜んでいます」
と、リーフィスさん。それに、はしゃぎまくるヒロさん。このギルド……落ち着きがない人が多い気がする。
僕も大概だけどさ。ギルドマスターとしてまとめられるか不安になってきた。
ザーハックさんは腕を組んでカッと睨んでいる。怖いよぉ。
ドリアード様に着いて行ってると、僕の目の前に大きい家が見えた。
素材は木や植物で出来ている。エルフの人たちの集落なのかな。
すごくおしゃれだ。すると、その家から女の子が飛び出してきた。
「ドリアード様! よくご無事で! そちらにいらっしゃるのが、今回、依頼を受けて下さる方々なのですか?」
「そうですよ。トゥビー。長老はいるかしら?」
トゥビーと言われていた女の子は、僕と同い年くらいで、エルフの特徴の一つである耳は尖っている。本物だ。
その子は身長は僕より少し高い150センチくらいかな? 透き通るような銀髪に髪色と同じ瞳を輝かせているショートヘアの女の子だ。
服装は軽装で、緑色の宝石みたいなネックレスを付けている。
ドリアード様の質問に応えるかのように、先程の家に戻った。長老を呼びに行ったのだろう。
そして、同じ家に戻った事をふまえると、さっきのトゥビーって子は、長老の孫ってことになるのかな? まあ、それは少し考えすぎかもしれないけど。
数分が経つと、エルフたちがぞろぞろと集まりだした。
すると、また僕と同い年くらいの、ワインレッドと言うのかな?
燃えるような髪色、茶色の瞳をした少女が、ドリアード様の近くに寄ってきて言った。
「ドリアード様! 考え直してください。人間族の力なんて必要ありません! 僕たちだけで十分です」
僕っ娘か。いいぞ。トゥビーさんは僕たちのことを何も言ってなかったけど、ワインレッドの子は僕たちの力はいらないという。嫌っているからかな?
さらに突然、ドシンッ! と、大きい地響きがなり、大斧を持ったエルフの大男が姿を現して言った。
「そうだぜ。ドリアード様よぉ。こんなひよっこじゃあ頼りにならないぜ。俺たちは獣に餌をあげにいくんじゃないんだぜ」
いきなりやってきて僕たちは魔物の餌にしかならないと。ものすごい喧嘩腰じゃないか。
仲間を餌扱いされるのは、温厚な僕でも怒るぞ。
すると、痺れを切らしたザーハックさんが口を開く。
「ほぉ。俺たちが獣の餌……か。言ってくれるじゃねーか。喧嘩売ってんなら買うぜ!」
その言葉に僕はザーハックさんを宥めるように、
「ザーハックさん。そんな安い挑発にのってはいけませんよ。ここで、喧嘩したら依頼失敗ですよ。こんなやつらは、言わせとけばいいんですよ」
「全然フォローになってないよ? トワ君も少し怒ってる? 言い方が怖いよ」
(あ、やっば。つい、かっとなってしまってた。ヒロさんに言われるとは……。反省反省)
「すみません。言い方悪かったですね。気をつけます」
「トワさんもそんな感情を出すことがあるんですね。意外です」
リーフィスさんが微笑みながら言う。すみません、バリバリ感情が出る子です。
我慢してるだけです。まあ、ドリアード様にはオーラでバレてるだろうな。
「ま、まあ、そうですね。あはは」
僕は乾いた笑いを見せる。すると、ドリアード様が申し訳なさそうに謝ってきた。
そして、ワインレッドの髪色の少女が近づいてきて言った。
「ドリアード様。僕たちも彼らの実力を知りませんし、彼らもまた僕たちの実力を知りません。
そこで、どうでしょう。お互いの実力を知るいい機会です。試合をしてみては?」
「まあ確かに私も彼らの実力は見ておきたいわ。親善試合ってことなら許可するわ。坊やたちもそれでいいかしら?」
僕はみんなに確認すると、やってやろうとのことだったので、その旨を伝えた。
ドリアード様は頭を下げ、ルールを決めてくると言ってエルフの人たちのところに戻った。
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