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第三章 ギルド結闘編

第46話 大精霊ドリアード

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 翌日。

 僕はギルド会館のアルバイトを再開していた。

 久しぶりのアルバイトで、きちんと、接客や業務がこなせるか不安である。

 まあ、僕は貼り紙を貼り替えたり、チラシを作成しては、折ってみんなが取れるように置くなどの簡単な仕事しかしてないが……。
 
「よし、こんな感じでいいかな。職場が綺麗になると気持ちがいいね」

 僕はこう見えても掃除をしたり、整理整頓をするのが好きなのだ。

 だからといって、別に潔癖な訳でもないし、神経質過ぎたりはしない。

 琴葉が片付けをしないから仕方なく僕がやっていた。その時の癖が抜けていないのかもしれない。

「えっと、次の場所は……っと」

 ここに住まう人たちや冒険者などが食べた後の片付けをしようと思い、そのテーブルに近づこうとすると。

「なぁ、あんちゃん。ヒック。あぁ酒のおかわりだ。美人で若いねぇちゃんが持ってくるようになぁ」

「お酒ですね。承知しました。少々お待ちください」

 朝っぱらから、お酒臭い男に絡まれてしまった。めんどくさい注文だなぁ。

 こんな大人にはならないよう気をつけようと心に誓う。

 厨房に入った僕は、調理長のリッチェさんに言われた事を伝えた。

「あーまた、あの男ね。分かったよ。ありがとうね。トワ君はあんな大人にならないようにね!」

「はい。気をつけます。ご対応よろしくお願いします」

 リッチェさんは若くしてウガルンダ支部の料理長をしており、誰にでも優しく接して、女神のような微笑みを向けてくれるので、とても男性人気がすごい。

 エプロン姿しか見た事がないが黒髪のお姉さんである。髪型も帽子に隠れていてよく分からないけど。

 リッチェさんに一礼して窓口に戻ると、窓口のフィリスさんが全身が黄緑色に光輝いている女性がお話をしている。

 輝いてるっていうと、僕の錯覚かもしれない。普通に考えて人は光らないもんね。

 目を擦ってもう一度見てみる。やっぱり光が見える。僕は疲れているのかもしれない、バイトが終わったら甘い物を食べに行こう! 

 そんな事を思っていると、ガチャリと音を立て、ギルド会館の玄関が開く。お客さんが来たと思い、僕は咄嗟に声をあげる。

「いらっしゃいま……。あれ? リーフィスさん。それに、ヒロさんやルナさんまで。どうかされましたか?」

「トワ様、こんにちは。お仕事に精が出てますね」

「ギルドマスター! こんにちはー! ギルドについて色々話し合おうよー!」

「こんにちは。ありがとうございます。頑張ってますよ。それとヒロさん、ギルドマスターは辞めてください! 恥ずかしいです。
 そうですね。ギルド名とか方針とかきちんと決めないとですね」

 少し遅れて、リーフィスさんが息を切らしながら歩いてきた。そして、深呼吸をし落ち着かせると、

「あ、トワさん。こんにちは。この近くから『大精霊ドリアード』様の力を感じて参りました」

「こんにちは。『大精霊? ドリアード』様ですか? 神話に出てくる、あのドリアードですか?」

「神話……? というのが、私には分かりませんが、大精霊ドリアード様は、この世界に存在する、八大精霊はちだいせちれい一霊いちれいですよ」

 ここでは、いちれいって言うのか。精霊の数え方って、はしらたいだと思ったんだけど、この世界では違うのかな? 
 まあ、僕たちの常識が通じないのは当たり前か。ゲームの世界だし。
 
 そういえば、『七魔帝王セブンスエンペラー』の数え方は、第七柱だいななちゅうとかだったな。
 あれもあれで、はしらって読まなかったもんな。

「いち……れい? ですか。この近くにいらっしゃるのですか? 僕には分かりませんが、見つかるといいですね。特徴とか分かれば、声をかけときますが」

「特徴……ですか。すみません。言い伝えですし、姿を見たことはないのです。でも、女性だとは聞いています」

「そうですか。それだけだと難しいですね。探してどうするんですか?」

「この力を授かった事のお礼を言いたいのと、何故私が選ばれたのか聞きたくて」

 『加護』だっけ? よく分からないが、選ばれた者が大精霊の力を授かる事ができるのか。

 できれば探してあげたいんだけどな。力になれず申し訳ないなと思う。

 すると突然、横から女性に声をかけられた。

「私をお探しですか?」

 声の主の方を振り向くと、先程フィリスさんとお話をしていた、光輝く女性がいた。

 やはり、輝いている。近づくと目を開けられないくらい眩しい。

「お姉さん眩しいよぉ」

 と、ヒロさんが一言。

 「私をお探しですか」ってどう言う意味だろう。そのまんまの意味で捉えていいのだろうか。

「あら、これは失礼しました」

 女性はそういうと光を弱めてくれた。少しずつ視界が回復してきた。

 そこには、背丈が180cmはあるだろう。黄緑色の美しい髪色。背中までに伸びる長い髪の毛。
 白のモコモコした服に茶色と緑色のチェック柄のノースリーブのワンピースを着た美しい女性がいた。

 すると興味津々なのか、ルナさんが目を輝かせながら質問をする。

「あの……! 今のは光魔法ですか?」

「生憎、私は光属性の魔法は使えないの。これは魔法ではないわ。
 あなた……。純粋で美しいオーラをしているわね。優しい人にあるオーラだわ」

「オーラ? ですか? わたくしにそんなオーラがあるのですか?」

「えぇ、私には生物が放つ、オーラが見えるの。人柄が分かる感じかしら。
 あなたは、きっといいお嫁さんになるわ」

「お嫁さんだなんて……。そんな、お恥ずかしいですわ」
 
 女性の言葉にルナさんは頬を赤く染めている。

「ねぇねぇ! お姉さん! 私は? 私はどう?」

「あなたは、人々からたくさんの信頼を寄せられているのね。面倒見が良くたくさんの人から頼られていているのが分かるわ。
 でも、人に寂しさや自分の弱さを見せないために、強がってはいるけれど、本当は心の中で色々と後悔している人のオーラだわ」

「きゃーーー!!! いやーーーー!!! そんな事ないもーーーん!」

 見破られたのか、ヒロさんは恥ずかしそうにギルド会館から出て行った。

 人柄が分かるだけで、こんなに詳しく分かるものなのかな? 
 すごい能力だけど、心の中を読まれているようで嫌だな。その女性は僕を見つめて、口を開く。

「坊やのオーラは、本当の……」
「あ、僕は大丈夫ですよ! お気になさらず!」

 僕は女性の言葉を遮る。

 僕は、苦笑いをしてその場を誤魔化した。なんとなくだが、なんて言われるかは分かる。

「すみません、あなたは、大精霊ドリアード様でいらっしゃいますか?」

 リーフィスさんは恐る恐る質問をした。

「そうよ。ふふふ。私の名前が聞こえたから来ちゃった。私に何か用があるの?」

「貴方様のお加護を授からせて頂いた事、心から感謝しています。
 この力のおかげで、再び王国に自然を取り戻すことができました」

「それは良かった。あなたを選んで良かったわ」

 と、ドリアード様は優しく微笑んで見せた。
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