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第二章 王国奪還編

第38話 vsドミニデスその2

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 コンビネーション技でドミニデスに少しだが、ダメージを与えることができた。

 残りのHPは4780。『反撃』で一撃で倒すには、3200以上のダメージを受けるしかない。

 僕の最大HP以上のダメージを受けないと一撃で倒せない。

 もう少し削りたいところだ。
 橘さんのおかげで拘束はできている。油断している今が削るチャンス。

 飛び上がっていた、ジークさんは『ドラゴンスピア』でたたみかける。

 『ドラゴンスピア』は30%の確率で相手の物理防御を無視して攻撃ができる。
 ドミニデスとジークさんのステータス差があっても大きなダメージを与えることができる。

 僕はジークさんにチャンスがあったら、『ドラゴンスピア』で削って欲しいと伝えていた。

 ドミニデスは拘束していた砂を力任せに破壊し、ジークさんを目掛けて、

「まずはお前だ! 元王子!『#鋭裂爪__せつれつそう』!」

 それをよんでいたのが橘さん。

 『グランドウェーブ』から、派生スキルの『砂蛇』を使用し、ジークさんを救出する。
 ドミニデスの『鋭裂爪』は空を裂いた。

「っち。橘が厄介だな」

 助けられたジークさんは、頬を赤く染めながら言う。

「助けてくれと頼んだ覚えは……ないですよ」

「はい。僕もデレてくれとは言った覚えはありませんが」

「べ、別にデレてなんかないやい! くうぅ。調子が狂う」

 橘さんはまたジークさんをからかって遊んでいる。そんな事をしている場合ではないのだが……。

 ドミニデスは橘さんに狙いを定めたのか、走って距離をつめ、

「『ブレイククロー』!」

「はぁ。僕を狙っても意味がないと思いますがね。『砂壁サンドウォール』」

 ドミニデスの放つ『ブレイククロー』は橘さんの『砂壁』に阻まれる。

 砂の壁を壊したドミニデスは追撃を加えようとするが、そこに橘さんの姿はなかった。

「くそっ。さすがに人数不利か。仕方ない。とっておきを見せてやる」

 ドミニデスはそういうと、纏っていた黒いオーラを複数の弾丸に変え、縦横無尽に飛ばす。

 僕は剣で弾きながら避けていく。

 当たってしまったら何が起こるか分からないから怖い。あんまり周りを見ている余裕はない。
 橘さんはいつものように砂でガードしているようだった。

「元王子! お前の心を支配する!」

 ドミニデスはジークさんに近づき、黒いオーラを伸ばし、ジークさんの体を締め付ける。

「ううぅ。あぁああ。……体が動かない」

「さぁ、元王子よ。お前のその『太陽の恩寵』で全ての敵を焼き払ってしまえ! フィナーレスキル発動! 『パーフェクトドミネーション』!」

 スキル名からして対象を支配することができるのか? 

 すると、すぐに、黒いモヤがジークさんを完全に飲み込んだ。

「ジークさん! 大丈夫ですか!? しっかりしてください!」

 僕は呼びかけるも反応はない。ジークさんの髪の色が変わりだす。

 今回は白い湯気ではなく、黒いモヤが変わりに出ている。
 あれは、まさか『太陽の恩寵』!? またあの状態のジークさんと戦わないといけないのか。

「ぐぁぁぁあ!!!!」

 ジークさんが大きな雄叫びをあげる。

「ガハハハハっ! いいぞぉ! 太陽の恩寵の力を俺に見せてみろ! 元王子、お前は橘に攻撃しろ。あとは俺が相手をする」

 ジークさんはドミニデスの言われた通り、橘さんに攻撃を仕掛ける。

「やれやれ、また、王子が暴走してしまいましたか。暴走をするのが好きな人ですね」

 これは非常にまずいかもしれない。何か考えなきゃ。ジークさんを元に戻す方法を探さなきゃいけない。

 このままだとドミニデスにダメージを与えられない。

 攻撃のかなめのジークさんが暴走していたら、単純なダメージソースが減ってしまう。

「『太陽神の一撃アポロブロー!』」


 橘さんは再び砂壁を展開するが、ジークさんの一撃で突破されてしまった。

 やはり、恩寵スキルは強くて厄介なのが多い。前に戦闘した時よりも火力が上がっているのか? 橘さんの防御札が簡単に壊されている。

「やりますね。僕の砂壁を一撃で壊すとは。黒いモヤでパワーアップしているんですか? MPが持つか怪しくなりましたね」

 橘さんのMPが少なくなっているようだ。一回僕と交代して回復してもらおうと思い周りを見渡す。

 するとドミニデスが、ガーッハハハと笑いながら言葉を発する。

「そうだ。そいつは俺の支配の恩寵の恩恵を受け、パワーアップしている。
 俺と同じでステータスが50%ずつアップ! さらに、太陽の恩寵本来のステータス上昇もしている。
 レベルが同じくらいだったら俺よりステータスが高かっただろうな」

 恩寵のステータス上昇は二つ重ねがけできるのか。だから、橘さんの壁を一撃で壊せたのか。チートすぎる。

 僕はジークさんのステータスを確認してみる。

名前 ジーク・アーティダル レベル20
職業 ランサー
ステータス

HP 3720/3800 (1900+1900)
MP 200+200
物攻 300+20+320
物防 350+175
魔攻 230+10+240
魔防 280+140
素早さ160+80
特殊スキル
太陽の恩寵
支配の恩寵

 物理攻撃合計が640。特殊スキルのところにも、太陽の恩寵と支配の恩寵の文字がある。

 計算式を見ている感じ、太陽恩寵+支配の恩寵でステータスが上がっている。

 さすがの橘さんでも今のジークさんの攻撃をまともに受けてしまったら耐えられないだろう。考えろ。考えろ僕。

 少し考えながら、後ろを見る。後ろにはグーファーさんとリーフィスさんがいる。

 確か、グーファーさんはアクティブスキル『挑発』が使えたはず。

 上手くジークさんを操作できれば……やってみる価値はありそうだ。

 ドミニデスは僕を狙ってきた。鉤爪の間に剣を刺し拮抗する。これで少しでも時間を稼ぎたい。

 僕はマイストレージからアイテムをこっそり取り出す。そして、近づいてくるザーハックさんたちに向かって、

「ザーハックさん! すみませんがジークさんの相手をしてください。
 その間に橘さんはMPの回復を! グーファーさんとリーフィスさんはこちらに寄って下さい!」

「分かった!」
「「はい!!」」
「何か策があるんですね。それにのりましょう」

「何をするつもりだ? 残りの二人も纏めて俺がぶっ潰してやるよ。おい! 元王子! そいつらは無視して、橘を狙え!」

「ガァァァァァ!」

「残念だったな、ガキ。何をするつもりかは知らんが、あの元王子は橘を狙う。MPの回復はさせんぞ」

「それはどうかな? ふふっこれ、なーんだ」

「なんだそれは!」

 僕は取り出していたアイテム、『ネバネヴァネット』をドミニデスにぶつける。

 ネバネヴァネットは罠の一つで、よく、昆虫型モンスターなどを捕まえるために使用するアイテム。

 モンスターなどに使用すれば、相手の素早さを下げることが出来る。

 実際に使ってみると、ネバネバの糸がドミニデスに絡まっていて動きづらそう。

 ネバネバが体に付着すると、大抵の人はもがいて剥がそうとするだろう。だから、時間稼ぎに使えそうだと思った。

 本来の使い方とは違う方法だがとても役に立つ。

 どんなに攻撃力や素早さが高くてもネバネバの前では意味がない!
 僕はネバネバが付いてないところを狙って剣で攻撃する。

「くそ! どんどん絡まって動きづらくなりやがる」

「そりゃあ、もがけばもがくほどいろんな箇所にくっつくから動きづらくなるよ。ごめんね、僕は卑怯者だから」


「トワ君。MP回復できたよ。どうするんだい?」
 
「できるかは正直賭けですが……。最初に僕をグランドウェーブで運んでくれてたと思うのですが、それを今回はグーファーさんを運んでほしいんです」

「ふむ。グーファー君を運んでどうするのですか?」

「俺ですか? 囮になればいいんですか?」


「まあ、ざっくり言えばそうですね。まずは、グーファーさんがジークさんにスキルの挑発をします。
 うまくいけば、ジークさんはグーファーさんを狙うはずです。
 それで、橘さんには、そのままグランドウェーブでグーファーさんをドミニデスの方へ運んでほしいんですよ」

「容易い御用さ。それでそのあとはどうするんだい?」

「グーファーさんに寄っていくジークさんとドミニデスをぶつけます。一か八かですが、やってみる価値はあるかと」

「なるほど、確かにおもしろ……いえ、やってみる価値はありそうですね。
 ですが、王子を狙わせるのであれば、リーフィス王女を運んだ方が早くないかな?」

「まあそんな事を言うとは思っていましたよ。僕は橘さんのようにドSではないので。
 それにリーフィスさんには、回復スキルを使ってもらいたいので待機です。僕とザーハックさんはチャンスを狙って攻撃ですね」

「分かりました! 俺やってみます!」
「私も待機了解です」
「おう!」

「では、グーファー君。しっかり王子を挑発してくださいね」

「ジーク様にそんなことをするのは気が進まないですが……。まあ我を忘れているっぽいですし、いいか……」

「囮役は大変だとは思いますがよろしくお願いしますね。では、作戦開始です!」
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