上 下
35 / 101
第二章 王国奪還編

第35話 月の恩寵

しおりを挟む

 ここは、王国内の中心部にある憩いの場。

 以前遊びに来た時には人で溢れて、賑やかな場所だったのに。

 今では閑散している。

 国民たちは、ドミニデスが行方をくらましたって言ってたから、無事であることを願う。

 そんなことを思いながら進んでいると、

「『獅子炎陣』! はぁぁぁっ!」

 声がする方へ向かうと、ザーハックさんがスキルを使用しているのが見えた。

 対戦相手は……ドミニデスだ!

 獅子炎陣は自分の物理攻撃力と物理防御力を一分間、10%ずつ上昇させ、火属性の威力を20上昇させる、火属性のアクティブスキルの一つ。

 でも、10%上がっただけでは、ドミニデスのステータスには到底及ばない。どうしよう。

 行くべきかな? 行ったところで邪魔になるだけだろうし……。

 ザーハックさんは鎌を振り下ろす。ドミニデスは軽々と避ける。

「『ハウリングフィアー』!」

 ザーハックさんはハウリングフィアーの効果を受ける。

 まずい! さっき私が受けたコンボだ!

 ドミニデスは続けて、

「『毒祭』!」

 ザーハックさんは武器を盾にするが、ドミニデスの力が強すぎて吹き飛ばされる。

「ぐっっ! ぐはっ。これは……毒か。厄介だな」

 ドミニデスの攻撃の手は緩まない。

「まだまだぁ! 『傷悪しょうあく』!」

 鉤爪から、黒い影が浮かび上がりザーハックさんを引き裂いた。

 攻撃が命中すると、ドミニデスに回復効果のエフェクトが発動した。

 あのアクティブスキルには回復効果があるようだ。

 ダメージを負ったザーハックさんは、その場に膝をつく。

「くっ。はぁ。はぁ。聞いてた以上の強さだ。だが、面白い。暴れがいがありそうだ」

「ガッハハハ! いいぞぉ! 立て! 戦え! そして、俺に支配されろぉ! とっておきを見せてやろう。瞬きするなよ」

 このままだとザーハックさんが危ない。

 私は回復アイテムを取り出し、ザーハックさんに駆け寄ろうとした。が、ドミニデスのアクティブスキルの発動の方が早かった。

「俺のとっておきのスキルだ。『星盗とうせい』!」

 黒い影のエフェクトが、ザーハックさんの胸を貫く。

「!? 何をした?」

 ザーハックさんの疑問にドミニデスは高々と笑いながら。

「『盗星』は補助スキルだからな。ダメージはない。だが、お前のレベルを見てみろ。何か気づかないか?」

「な!? 俺のレベルが……下がっている!? レベルを下げるスキルというのか!?」

「レベルを下げるだけじゃない。こいつは、相手のレベルを一つ奪うスキルだ。
 CTが十分もあるがな。これを続ければ、いずれ俺とお前のレベル差もひらいてきて、お前はどんどん不利になる」

 あれが、さっきドミニデスが言っていた、とっておきのアクティブスキル、『盗星』。なのか。

 恐ろしいスキルだ。あんなのを十分に一度使えるとかおかしすぎる。本当に【恩寵】ってなんなの。
 
 私は居ても立ってもいられず、ザーハックさんに駆け寄り、回復アイテムを手渡した。

「ザーハックさん。大丈夫ですか? これ、回復アイテムです。使って下さい。毒も回復できます。二人で戦いましょう」

「回復アイテムは助かるな。すまない、頂こう。お前さんは、ルナ王女の所に行ってやってくれ。
 様子がおかしかったから心配だ。ここは俺が時間を稼ぐ。頼んだぞ」

 ザーハックさんは、回復アイテムを受け取ると、すぐに使用し、そう私に告げた。

「分かりました。死なないで下さいね。約束ですよ」

「あぁ。約束だ」

 私はザーハックさんと約束をして、ルナちゃんがいたという場所に向かった。



「え? る、ルナちゃん……?」

 顔や服装で判断したのだけど、見違えるほど変わったルナちゃんがそこにいた。

 髪色が、月のように綺麗で明るい色に変色している。

 ルナちゃんの背後から、黄金に輝く弓を持った美しい女神のような女性が見える。まさか、ルナちゃんのスタンド能力!?

 周りには知らない二人の男が倒れていた。

 ルナちゃんがやったのかな? ステータスをみてみると、『ジュラ』と『デリシャス』と書いてある。

 ギルド名を見る限り、ドミニデスの残りの幹部的な二人と思う。

 私は、ルナちゃんに声をかけながら近づく。

「ルナちゃーん! ユナちゃんとグーファーさんは? ルナちゃんにこんな力があったなんて知らなかったよ。強いんだね」

 すると、ルナちゃんは私を見るなり、スキルを使用した。

「『月の女神の裁きの光アルテミス・ジャッジメント」』

 背後にいる弓を持った女性が空中に光のエネルギーを貯める。

 え? これって私に攻撃を仕掛けてきてるの? 

 戸惑っているうちに、チャージが完了したみたいだ。

 集まった光を光線に変え、攻撃対象である私にむかって発射する。

 私は急いでスキル、『スパイラルマジック』を使用して光の光線にぶつけた。が、私は押し負けてしまい、吹き飛んだ。

 ゆっくりと体を起こしルナちゃんのステータスを確認する。

特殊スキル
月の恩寵

① 自分のMP、物理防御力、魔法防御力を50%上昇し、HP継続回復効果を得る。
② 光属性攻撃が強力なものになる。光属性スキルの威力が2倍になり、光属性の属性ダメージを0にする。
③ 発動中、特殊なスキルが使用可能になる。


 支配の恩寵の次は、月の恩寵!? ルナちゃんも恩寵を持っていたんだ。ステータスの伸びがおかしいよ……。

 これでみんなやられたのかな? 光属性の属性ダメージ0にするって私の、『煌めく星』が効かないってことかな? それってメタじゃん……。

 さっきの攻撃で私は、右足を怪我をしてしまったようだ。

 それにしても重い一撃だった。痛みを我慢しながらルナちゃんを呼びかける。

「ルナちゃん。私だよ! ヒロだよ! 元に戻って!」

 私の声は届いてないのか反応がない。すると後ろから、男の声が聞こえてきた。

「さっきはよくも……。さぁ、第二ラウンドといこうぜ」

 あれは、デリシャス。職業はパラディン。レベルは25。ドミニデスのあとだと低く見える。

 もう一人の男も立ち上がる。ジュラはウィザードのレベル24。
 
 二対一だと部が悪い。ルナちゃんも恩寵とやらで私にも攻撃を仕掛けてくる。注意しなきゃいけない。

「『月の女神の金矢アルテミス・ゴールドアロー』」

 黄金に輝く矢が二人に襲う。二人は避け、ルナちゃんに近づいていく。私はルナちゃんの前に立ち、

「『煌めく星』!」

 攻撃は二人に命中する。
 
 怯みながらも体制を整え、ジュラは魔法スキルを唱える。

「『ファイヤーボール』」

 『ファイヤーボール』とかこの世界で初めてみた。やっぱり使いたくなるよね。

 スキルレベルが高いのか、かなり威力が高い。

 ルナちゃんも『月の女神の金矢』で攻撃を開始した。が、『ファイヤーボール』はぶつかり合うことなく、通り過ぎて、ルナちゃんに直撃した。

「ルナちゃん! ごめんね。大丈夫?」

 ルナちゃんは立ち上がる。

 すると突如、体を纏っていた光が拡散し、倒れてしまった。

 背後にいた女性の姿もなくなった。髪色も元の綺麗な藍色に戻っていた。
 
 私はルナちゃんを守ろうと二人に攻撃を仕掛ける。

「『煌めく星』!」

 攻撃は命中。しかし、向こうも諦めずにまた、『ファイヤーボール』を飛ばしてきた。

 私はルナちゃんを庇い背中に命中した。

 気絶しているルナちゃんを抱え、私は安全な場所まで避難しようと考えた。

 しかし、足に激痛がはしり、うまく歩けない。

 ルナちゃんに残り最後の回復アイテムを使用する。HPは回復したけど、目は覚まさない。  

「ごめんね。ルナちゃん。ルナちゃんたちは私の命に代えても必ず守るから。
 あーあ。デスペナルティ受けたあと、どんな顔をして、みんなに会えばいいのか分かんないよ。……それに、トワ君ごめんね。もう体がもたないや」

 背中が熱くなった。多分、ファイヤーボールが飛んできているのだろう。
 
 大きな爆発が起こったあと、何か懐かしい風景が浮かび上がってくる。

 これが走馬灯か。薄れていく意識の中、誰かが私を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、そのまま私は気を失った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

処理中です...