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第二章 王国奪還編

第32話 ユナ救出作戦

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※ヒロサイド


 オボロンにユナちゃんを連れ去られてしまった。
 私たちは急いで外へと走り出した。

「くそっ。不甲斐ない俺が許せません」

「いえ、わたくしの目の前にいながら連れ去られてしまったのです。

 わたくしの責任です。グーファーさんは悪くありません」

「いえ、ルナ様のせいではありません。護衛の俺の責任です」

 二人のせいではないのは分かっている。

 私が感知スキルを使って、何も感知しなかったからと、スキルや自分を過信しすぎた私の責任だ。

「二人は悪くないよ。感知スキルを使ったのは私だし。それに、自分を過信しすぎた私が悪いよ。ごめんね」

「いえ、ヒロ様はわたくしたちのために、スキルまで使用してくださりました。お気になさらないで下さい」

「そうですよ! 今は早く、ユナ様を取り戻しましょう!」

「だね。ユナちゃんを取り戻すのが先だね。ありがとう。
 さっきのオボロンはアクティブスキルの『隠密』を使ってたのかもしれない。
 だから、私の感知スキルに引っかからなかったのかも」

「確か、アーチャー系の得意分野でしたね。俺はナイトですから、よく分かりませんが。
 隠密が得意ならまた、どこから現れるか分かりませんね」

「うん、気をつけよう」

 そんな事を言っていると突然。

 轟音が鳴り響いた。何かが爆発した音かな?

 誰かが戦闘をしているのかもしれない。

「中庭の方ですわ。こちらです」

 ルナちゃんの案内にかわり、迷宮のような城を抜け出す。

 中庭に到着した私たち。そこは、崩れて水が溢れ出る噴水。地面に散ったたくさんの花びら。

 庭とは言い難いほど、散らかっている。少し離れた場所から誰かの話し声が聞こえてきた。

「ドミニデスさん。チビ姫を連れてきたぜぇ。このチビをどうするつもりなんだ?」

「あぁ、オボロンか。ご苦労だったな。そいつは、逃げ隠れした、臆病な元国王たちを誘き寄せる餌さ。
 民間人とともに、どこかへ行方を眩ませたからな。それと、オボロン。最近休んでないだろ? 休んでいいぞ」

「なるほどぉ。まあなんでもいいけどよ。ありがたい話しだけど、それどころじゃないんだよな。
 他に、三匹のネズミが王国に侵入してるんだよ。もう一人は、ここの娘らしいけどな」

「そうか。橘と紅葉はどうした? ルルード王国に行ったきり戻ってこないみたいだが。
 交代して休んでもらいたいんだが。いないなら、西と東を守っているジュラとデリシャスの三人でそいつらを捕まえろ」

「あいよー」

 先程のオボロンとボスのドミニデス。オボロンがいるっていうことは、近くにユナちゃんがいるって事だ。

 周りにはその二人しかいないように見える。

 後ろ姿だが、筋肉質で長身。黒い髪に所々に赤い線が入った大男が立っている。あれがドミニデスか。

「いやだ! 離して! お姉様の所に戻して!」

 ユナちゃんの声だ! でも、オボロンは何も抱えていない。すると、グーファーさんが小声で、

「ユナ様だ!」

「え? どこ?」

 私にはどこにいるのか分からなかったので聞き返す。

「あいつらがいるところの電灯の上です」

 指をさされた場所を見てみると、電灯にユナちゃんが括り付けられているのが見えた。

 ルナちゃんは見てられないのか手で自分の顔を隠した。

 早く助けたいけど、動けない。頭が真っ白になって何をするべきなのかが分からない。行っても、ドミニデスに見つかってやられるだけだし。

 ユナちゃんを助けてグーファーさんとルナちゃんで逃げてもらって私が戦うのもありだけど、他に仲間がいる事を仄めかしていたからリスクが大きい。

 すると、オボロンが私たちがいる方向へ歩いて向かってくる。

 内心ドキドキしながら、時が過ぎるのを待つ。私たちを探しているのだろう。

 相手がどんなスキルを持っているのか分からない以上、こちらも迂闊に手を出せない。

 ボイスチャットで何かを話しながら、私たちの横を通り過ぎて、城内に入っていった。

 どうするべきか、考える。……。

 今はドミグラスが一人。……。そして、私は二人に提案をした。

「二人はユナちゃんの近くに行ったあと、私が弓でユナちゃんの紐を切るから、二人はユナちゃんを助けてすぐに逃げて。ドミニデスは私が戦って時間を稼ぐから」

 私の提案に二人はあまりいい反応はしなかった。

「ヒロ様でもさすがに無茶ですわ。みんなで戦った方がいいですわ」

「そうですよ! ヒロさんだけで戦うだなんて。俺が身代わりになりますよ!」

 でも、ここは私がやるしかない。そう思った。二人は死んでしまったらどうなるか分からない。

 私は死んだとしてもデスペナルティを受けて、一定時間が経てば復活ができる。

 二人はそう思ってはいないだろうけど、ユナちゃんが連れ去られたのも私の責任だし。

「大丈夫。時間を稼ぐだけだから。二人の方がこの国に詳しいでしょ? 
 私は一度来たことがあるし、ある程度道は把握しているつもり。大丈夫。心配しないで」

 ルナちゃんは心配そうに私を見つめ。

「分かりました。心苦しいですが、よろしくお願いします。無理はしないでください」

「うん。大丈夫。ユナちゃんの近くに着いたら、私にメッセージ頂戴」

「分かりましたわ」

「俺も腹をくくります。ヒロさん、よろしく頼みます。ルナ様行きましょう」

「よし! 作戦開始だぁ! 頑張ろう!」

「「はい」」

 二人と別れ、私は職業を『ウィザード』から『スナイパー』に変更した。

 一分くらい待っていると、ルナちゃんから、着きました。とのメッセージがきた。私は十秒後に仕掛ける。と送った。

 私は心の中で数える。

 十、九、八、七、六、五。あと少し。弓を構える。四、括り付けられている紐に狙いをすます。   

 三、二、一、零! 

 発射! 私が放った矢は紐に命中し、ユナちゃんが悲鳴をあげながら落ちてくる。

「きゃぁぁ!」

 即座に私は職業をウィザードに変更し、無心で走る。ドミグラスはユナちゃんの方を見ている。

 私には気づいていない。チャンスだと思い、私は魔法で先制する。

「『煌めく星トゥインクルスター!』」

 私の声に、ドミニデスが反応した。

 よし、これでいい。このまま私と勝負だ!

 煌めく星がドミニデスに命中したが、ドミニデスは首元を掻いて余裕を見せる。全然効いていない。

 だけど、私にヘイトが向けばそれでいい。すかさず次の攻撃を仕掛ける。

「スパイラルマジック!」

 杖から、赤紫色をした螺旋状のオーラを放出する。ドミニデスは高くジャンプして避ける。

 私は次の攻撃に備えスキルを準備する。スキルにはCTがある。

 一度使用した、スキルは一定時間が経たないと再び使用することは出来ない。

 その事を踏まえ、時間調整をしながら魔法を使っている。

 ふと、ルナちゃんたちがいた場所を目視すると、 そこには誰の姿もなかった。

 無事に逃げることができたのかな? 良かった、と安心していると、一通のメッセージが飛んできた。

 ルナちゃんからだ。

 今、ザーハックさんと防衛警備団の人たちと合流できたらしい。

 ザーハックさんが私のところに駆けつけてくれるらしい。余裕はないので返信はできないけど。

 ドミノデスは私の近くに着地し、静かに私を見つめた。
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