追憶の電脳世界〜エタニティ・ドリーム・ワールド

夢達磨

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第二章 王国奪還編

第29話 恋のライバル!?

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 紅葉さんが消滅したのを確認した僕たち。

 いよいよ、ドミニデス帝国と直接対決だ。

「よし、もう大丈夫です。リーフィス王女、お膝ありがとうございました。おかげさまで落ち着きました」

 子どものように泣きじゃくっていた、ジークさんが泣き止んだようだ。

 それを見たリーフィス王女は、安堵の表情を浮かべ、

「どういたしまして。ジーク様もありがとうございました」

「では、改めてご挨拶を。初めまして、ジーク王子。僕は橘と申します。以後お見知り置きを」

 橘さんは軽く会釈をし挨拶する。ジークさんも返すように、

「初めまして、アーティダル王国のジーク・アーティダルです。
 橘さんに助けて頂いたみたいで。ありがとうございます! この御恩は忘れません! 必ず報いて見せます」

「別に構いませんよ。たまたま通りかかっただけです。それに、トワ君とギルド対抗戦の約束もできましたし、楽しみが増えました」

「ギルド対抗戦、少し興味がありますね。橘さんと戦えるのであれば、手合わせ願いたいです」

 リーフィス王女は立ち上がり、橘さんの方へ近づき、

「改めまして、助けて頂きありがとうございます。
 感謝の気持ちでいっぱいです。橘様は何か欲しい物はありませんか? 私にできることがありましたら、お役に立ちたいです」

「欲しい物ですか。そうですねぇ。んー。……今は思いつきませんね」

 リーフィス王女はもじもじしながら、

「そうですか、何かありましたら何でも仰って下さいね。用意させて頂きますね。
 あと、……橘様は年下女性は……その……恋愛対象になりますか? きゃっ! 言っちゃった!」

 そのリーフィス王女の言葉に、ジークさんが反応しない訳がなかった。

「リ、リーフィス王女!? それはどういった意味でしょうか!? もしかして、橘さんの事が……」

「うふふ。惚れましたわ」

「がぁぁあ。あぁぁぁ。そ……そんなぁ」

 ジークさんは、この世の終わりのような顔をして、固まってしまった。

 早く想いを伝えないと取られてしまうぞ!

 橘さんは、顔をにんまりしながら、

「ありがたき幸せ。年下女性ですか。
 もちろん、恋愛対象になりますよ。とくにリーフィス王女のようなお美しい方なら特に」

 橘さんは絶対ジークさんの気持ちを知りながら、わざと言ったな。

 橘さんの性格の悪さが滲み出ている。橘さんはジークさんの方を向き、勝ち誇ったように鼻で笑ってみせた。

「本当ですか。橘さんに振り向いてもらえるよう、私、頑張りますね」

「トワさん。橘さんとギルド対抗戦をする時は、絶対に俺も呼んでくれ! フルボッコにしてやるぅ!!!」

 ジークさん危うし。僕はジークさんを応援しようと思う。

「分かりました。絶対に勝ちましょうね。二つの意味で」

 すると、奥の方からボロボロの姿のアルダー王が話しかけてきた。

「皆のもの、力になれずすまなかった。俺もまだまだ未熟だった。それで今はどういった状況かな?」

「では、僭越せんえつながらこの橘が説明させて頂きます。まず、先程の者は隣にいる、トワ君が倒しました」

「え? 僕はトドメだけですよ。美味しいところを頂いただけです」

「おぉ。あの者を倒したのか! 礼を言う。次はドミニデスという男だけか」

 橘さんは続ける。

「左様でございます。そして今から、動ける者でドミニデスを倒しに行こうと思います。
 ドミニデスの側近が残り三人います。三人とも手練れでございますので、人数は多い方がよろしいかと」

「うむ、なら、ジーク殿に頼まれていた事もあるし、我々の群も力を貸そう。俺も少し休んだらそちらに向かう。先に向かっててくれ」

「ご理解頂き光栄です。では、参りましょう」

 リーフィス王女は張り詰めた声で言う。

「父上、私も一緒に行ってもよろしいですか?」

 アルダー王は頬に手を当て、弱った顔を見せる。少し悩んだあと言葉にした。

「気持ちは分かるが、リーフィスでは経験不足だろう。橘殿の足を引っ張ることになる」

「僕は構いませんよ。ドミニデスと戦うのは僕とトワ君でやればいいので、問題ないでしょう」

「そうか。橘殿がそう言うのであれば構わんが。リーフィス。くれぐれも無理はするなよ」

「はい、父上! ありがとうございます」

 その言葉に勢いよく声を上げた者がいた。そう、ジークさんだ。
 
「俺も行きます! リーフィス王女は俺が……。俺が……。次こそは守って見せます!」

「う、うむ、ジーク殿も頼んだぞ。では、橘殿、トワ殿、アーティダル王国を頼みましたぞ」

「はい!」

「えぇ」

___________

 話が終わり、城内から出た僕たちは、ドミニデス帝国に向けて、出発しようとしていた。

「ここからだと、ドミニデス帝国はどのくらい時間かかるんですか?」

 僕の質問にジークさんが答えてくれた。

「俺が近道を知っているので、そこから行きましょう。普通は一時間くらいかかるんですが、四十分くらいで着きます」

 すると、橘さんは鼻で笑い、

「僕のルートだと二十分で着きます。四十分もかけられません」

「そんな、ありえない! 片道四十分でも十分早いのに、二十分で着くなんておかしい!」

「まあ、任せて下さい。こういうのは得意なんです」

「二人ともありがとうございます。早く着く方がいいですね。お願いします」

 歩いて片道、四十分かかると言っているのに、二十分で着く方法なんてあるのだろうか。

 橘さんは大人なので何かいい考えがあるに違いない。そう思っていると、

「『グランドウェーブ』」

 スキルの『グランドウェーブ』を使い、全長三メートルくらいの箱型の泥を作り出す。
 
 持っていた大剣を使って器用に削り始めた。
 
 二、三分待っていると、泥と土で作られた、戦車のような車が完成した。

「かっこいいですね! でも、これ動くんですか? 材料って砂と泥ですよね?」

「動きますよ。時間があれば、アイテムを使ってエンジンとか組み込むのですが、時間があまり残されてないので、今回はこんなものでいいでしょう。僕が動かすので気にしないでください」

「分かりました。お願いします」

 ジークさんとリーフィス王女は出来上がった車を見て、驚いた表情を見せた。

「こんなの、初めて見ました。さすがは橘様です。頼りになります」

「この泥の……」

 ジークさんが話そうとすると、橘さんはそれを遮り、

「では、みなさん乗り込んで下さい。トワ君、アーティダル王国を取り戻したら、僕たちと本気のギルド対抗戦ですよ? 忘れないで下さいね?」

「はい、もちろんです。次は負けません。まずはギルドを作る所からですね」

「約束です。では乗り込んで下さい。食事などは用意してありますので決戦の前にどうぞ」

「「ありがとうございます」」

 僕は泥戦車に乗り込もうとすると、

《今の……なら、この……を使えるはずです……。きっと。この……で……を救って。……を信じて》

 僕の脳内に謎の人物の言葉が響く。

(まただ。やっぱりこの前のも気のせいじゃなかったんだ。一体誰が)

「トワさん? どうかしました?」

「はい? すみませんジークさん、何か言いました?」

「いや? 急にボーッとしてたから……。大丈夫ならいいのだけど。無理はしないでほしい」

「はい、すみません、ありがとうございます」

 僕たちは泥戦車に乗り込んだ。

「では、出発しましょう。少々荒い運転になりますので、気をつけて下さいね」

 橘さんは、スキルを使用して泥戦車を動かす。

 最初は遅かったのだが、どんどん加速していき、三十秒も経つとものすごいスピードになった。

 橘さん以外の三人は泥戦車の内部で激しくぶつかり合った。

「いたたぁ! どこが少々荒い運転ですか! どこを走っているんですか!?」

 すると、橘さんは涼しい顔をしながら言った。

「どこって、森の中を突っ切っています。この方が早いので」

「まじですか……」

 こんな調子でドミニデス帝国に向かうのだった。
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