上 下
18 / 101
第二章 王国奪還編

第18話 神が齎す奇跡 その名は恩寵

しおりを挟む
 ※ゲームマスター視点

 彼らがギルド会館を出て、数分経った。

 ここは私の研究施設。

「報告します。彼らは先程、王国奪還作戦のため、ルルード王国とアーティダル王国へと旅立ちました」

 私は忙しい身で、この世界にそこまで干渉できない。だからこうして、部下から報告を受けている。それで今の状況を把握しているのだ。

「ありがとうございます。あの子も一緒ですか? まあ、あの子なら着いていきそうですがね」

「はい。同じパーティーです」

「そうですか。それは安心しました。どうなるんでしょうね。結果が楽しみです」

「お言葉ですがマスター。これはマスターが仕組んだ事なのですか? それでしたら、流石にやり過ぎかと」

「さぁ、どうでしょうね。この世界の行く末は私が決めるのではない、彼らは、なんて言いましたかね?
 現住人でしたっけ? そんな彼らとプレイヤーである皆さん。そして、私が研究している、この子です」

 私は近くにある、部屋の四割を占めるであろう、縦長の巨大なコンピューターを触ってみせる。

 この子は今、力を使い果たし深い眠りについてしまっている。

 元々は、虹色に光り輝いていた。だが、私が酷使しすぎたのだろう。今は輝きを失っている。
 
 この子を目覚めさせるには大量の経験値が必要なのだ。

 プレイヤーが死亡すると『デスペナルティ』として、経験値を少し失う。その量はレベルが高い程多くの経験値を失う事になる。

 失った経験値はこの施設に送られるよう改造してある。その経験値がこの子の養分となり、いつかはまた目を覚ますでしょう。

「彼らが戦っている間私たちは、何をしたらいいのですか?」

「私たちに出来る事は神に祈る事だけです。さぉ、祈りましょう。
 そうすれば、神も答えてくれるでしょう。あなたにも素晴らしい【恩寵】を授けてくれますよ」

「……はい。承知しました」

 恩寵とは、神が創り出した奇跡と言われている能力の事。
 
 俗に言う『特殊能力』や『チート』の類いになるだろう。

 私の研究では、『太陽の恩寵』、『月の恩寵』、『支配の恩寵』の三つが確認できている。
 
 研究の一つだが、私はその神がどうすれば現れるのか、恩寵は現実の体に一体どんな影響があるのか。
 恩寵は自分たちで作ることができるのか。まだ私にも分からないことだらけだ。

 その力を私の思い通りにしてみせる。そしていつか必ず……。

 そんな事を思っていると。
 
「ねぇ。マスター? あーしもそろそろ外に出たいんですけどぉ? いつまでこんな所に居なきゃいけないのぉ? 暇なんですけどぉ?」

 彼女は旧エタニティ・ドリーム・ワールド。そう、ゲームの時代からいる、マスコットキャラクターの一体であるハニポンだ。

「もう少し待ってください。この戦いが終わったらイベントクエストを用意しております。
 そちらの説明の時には外に出ていいですよ。まああんまり、自由にされると困りますので、約束は守ってくださいね」

 私はゲームマスターなので、この施設で現住人の方たちやプレイヤーのみなさんに楽しんでもらえるよう、スキルを開発したり、ゲーム内イベントを開発したりしている。

 ここには、私以外に現実世界と電脳世界を往来できる人間がいる。彼らもまた、研究者であり開発者の私の仲間です。

 すると、ハニポンは私に笑顔を浮かべながら言う。

「わぁい! 分かったー! マスターありがとぉ。そう少し我慢するねぇ」

「こらこら、ハニポン。マスターを困らせてはいけませんよ。マスターはとてと忙しいの。ちゃんと仕事はしなさい」

「分かったよ、ママァ」

 彼女はマスコットキャラクターの一体、カンガルーがモチーフのガルポン。
 とても優しい彼女は、みんなのお母さん的存在である。そして、私の良き理解者です。

 そして突然、私の携帯に着信が鳴り響く。

 
「さて、そろそろお時間が来たようです。私は現実世界に戻るとします。
 報告ありがとうございました。
 私は心の底からあなたにあった恩寵を授かる事を祈っております。
 また時間が出来次第こちらに参りますね。頼りにしてますよ、マリーさん」

 私はマリーさんにそう告げると現実世界に戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

処理中です...