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第二章 王国奪還編
第15話 支配の演説
しおりを挟む二人の話しの内容はこうだった。
一週間ほど前、プレイヤーと言われる冒険者がアーティダル王国に出現したらしい。
このゲームがサービスを開始したのは二週間と少し前のことだから、開始して一週間ほどの出来事のようだ。
最初はごく普通に過ごしていたのだが、日が経つにつれて、プレイヤーは口を揃えてこんなことを言い出したと言う。
「ログアウトできない。これからどうすればいいんだ」、「いつまでこんな生活を送らないといけないんだ」と。
路頭に迷うプレイヤー冒険者を、アーティダル王国の国王であり、ルナさんの父親の、トロン・アーティダルさんは、そんな冒険者たちを不憫に思い、救いの手を差し伸べたという。
最初、プレイヤーたちは受けた恩を返すように、モンスターの討伐や採取の依頼などを積極的に受けてくれていたらしい。
だが、いつしかプレイヤーの方から「国のルールなんか聞いてられるか! 報酬を増やせ」や、「モンスターを討伐してやったのは俺らだぞ、感謝しろ」などと、言ってくるようになったという。
数日たったある日、悪夢の日がやってきた。
ギルド、【強欲者の縄張り】と、名乗るプレイヤーの集団がアーティダル王国に突如やってきた。
ギルド、強欲者の縄張りのギルドマスター『ドミニデス』は突然こんなことを言い出したという。
「この国は俺様が支配する。王と話をさせろ」と。
話しを聞こうと、防衛警備団が出迎えると、
俺様は王に用がある、雑魚はすっこんでろ、と言い放ち、防衛警備団の男性を投げ飛ばしたという。
トロン王と面会を果たすことができた、ドミニデスはトロン王に、「この国で一番強いやつを出せ、そいつと戦わせろ。俺様が勝ったらこの国は俺様がもらう」などと自己中な発言をしたという。
困惑していると、近くにいたユナちゃんを人質に取ると、「要求に応じないのなら……。分かっているな?」と、地面を殴り、威嚇したらしい。
そして、防衛警備団アーティダル支部の団長が相手をするも敗北。
そして勝利したドミニデスは「俺様の勝ちだ。今日から俺様がこの国の王となり、俺様の国となる」と言い、トロン王に国民を集めさせ、今日からはドミニデス様が新しい国王となると演説させた。
新しい国王となった、ドミニデスは新たな国の名を『新帝国ドミニデス』とし、これからについて演説をおこなったという。
「これからの時代は我々プレイヤーだ。自由を掴み取れ! ここは強者こそが絶対の国だ。
いずれは、この大陸さえ、ギルド、強欲者の縄張りが支配する! 俺様についてくるものはついてくるがいい」と。
ごく一部だが、反発した勇気あるプレイヤーもいたのだが、ドミニデスが反発したプレイヤーを見せしめとして教会送りにしたらしい。
それを目の前にした、プレイヤーたちは国から出て行ったり、見て見ぬふりをする人が増えたという。
そしてトロン王は、ルナさんとユナちゃんを避難させるため、護衛をグーファーさんに頼み、ドミニデスたちに見つからないように逃したらしい。
そして、辿り着いた先が、ここウガルンダだった。
ルナさんには『ジーク』というお兄さんがいるらしく、そのジークさんは、アーティダル王国と友好関係にある、『ルルード王国』に助けを求めに行ったらしい。
メッセージの主はジークさんからで、ルルード王国に着いたのだが、ルルード王国もギルド、強欲者の縄張りのプレイヤーたちに支配されている状態。
治安が悪くなっていて、動こうにも動けないので、こちらに合流はできそうにないらしい。
ジークさんは身を潜めながら、プレイヤーたちの話しを立ち聞きしてたらしく、僕たちがいるウガルンダに、攻めてくるのも時間の問題らしい。
ルナさんたちの身の危険を案じ、その場から離れろとの事だった。
ルナさんやジークさんは、国に残された国民の事を思うと、不安を隠せないみたいだ。
とてもじゃないが許せない話だ。僕たちと同じプレイヤーがそんな暴挙に出ていたとは。
話を聞いて、第一声をあげたのはヒロさんだった。
「なにそれ酷い! 許せない! そんなのおかしいよ! 私たちと同じプレイヤーとは思えない!」
「なるほど、そんなことが……。だから応援がなかなか来ないのか。なんとかしなければならんな」
渋い表情を浮かべながらザーハックさんは、上の者に伝えてくると言って席を去った。
「容易ならぬ話だと重々承知しております。皆様どうか……アーティダル王国を救っていただけませんか?」
震えた声でルナさんは深々と頭を下げる。グーファーさんもルナさんに続き頭を下げ。
「自分からもお願いします。みなさんの力を貸してください」
「勿論だよ! ドミグラス帝国からアーティダル王国を取り戻そう! このままじゃ、ルナちゃん……じゃなかった、ルナ様たちが可哀想だよ」
ドミニデスだったような気はするけど、まあいいか。
「……ヒロ様、ありがとうございます……。あと、様なんか入りませんわ。いつも通りにして下さい」
「うん! 分かった! 私は行くね。トワ君はどうする? 相手は同じプレイヤーだけど……無理はしなくていいからね」
「はい。僕にも行かせて下さい。早く行って、助けてあげなきゃ、ルナさんたちや国の人が困ってると思いますし」
「トワ様、ありがとうございます。皆様には何とお礼を申し上げたらいいのか……。いやですわ、涙が出てきましたわ」
「お二方ありがとうございます。傭兵グーファー! 必ずや皆さんをお守り致します」
「よーーし! そうと決まれば明日の朝に出発しよう! 今日はいっぱい食べてゆっくり休もう! 今日は解散だね」
いつでもヒロさんは元気だな。こういう人が周りを明るくしてくれるんだろう。僕もこんな風になりたいな。と、ふと、思う。
「そうですね。僕はメルさんたちに事の成り行きをお伝えしなければですし」
「そういえば、トワさんはここでアルバイトをしてましたね。長い間離れる事になると思いますが大丈夫ですか?」
と、心配してくれているグーファーさん。
「何とも言えませんが、シフトの調整はお願いしときます。気になる点もありますし」
「そうですか、すみません。ご迷惑をおかけします」
迷惑を掛けているのはプレイヤー側だと思う。多分、ログアウトが出来ない状況だからプレイヤーは混乱して、誰かに八つ当たりをしているのだと思う。
決して許されない行為ではあるが、混乱する気持ちは分からなくもない自分がいる。ログアウトの方法を探しつつ、国を元の形に戻してあげたい。
そんな事を思っていると、今日はもう遅いので解散する流れになった。
______
話を聞いた僕は、事の成り行きをメルさんに報告をしていた。
「もうそんなに話が進んでいたのですね。ザーハックさんから報告は聞いていましたが、大変な事になっていましたね。
戦闘になると思いますが、大丈夫ですか? トラウマがあるとお聞きしましたが。
シフトの件については、明日マリーさんがお見えになられたら報告しときますね」
「はい。勝手に話を進めてすみませんでした。誰も傷つかず話し合いで解決すればいいのですが。
多分、戦闘は避けられないと思いますが、ルナさんたちのために頑張ります。シフトの件ご迷惑をお掛けします」
「どうした坊主。報告か?」
背後からザーハックさんから話しかけられた。
「はい。ザーハックさんが席を離れた後の報告をしていました」
ザーハックさんにも事の成り行きを報告した。
「そうか。話が早いな。マリーの婆さんがどういうかだな」
「そうですよね。あ、ザーハックさん、お忙しい中すみませんがお願いがあります」
「なんだ?」
「僕にこの世界の戦い方を教えて下さい」
「ほぉ。訓練という事だな。いいだろう、相手になってやる」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
こうして、僕の戦闘訓練が始まった。
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