追憶の電脳世界〜エタニティ・ドリーム・ワールド

夢達磨

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第一章 人工大陸アーティダル ウガルンダ編

第12話 ギルド対抗戦・模擬戦 ザーハックvs紅葉

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 試合が始まって、紅の炎のギルドマスターの紅葉さんは、剣を、煽るようにポンポンと叩く。強者の余裕なのだろうか。

 レベルからしてかなりの実力があるのだろう。野放しにするのは危険だと思い、みんなに伝える。

「紅葉さんがレベル26で、レア度の高い大剣を装備しています。
 物理攻撃のステータスもかなり高かったです。アクティブスキルを受けるのは極力避けましょう。
 右にいる、杖を持った人が持っている杖は『紫魂しこんの杖』です。バインド系スキルの効果を強化するパッシブスキルが付いているので注意してください」

「随分と詳しいな、坊主。なら、お前さんの実力見せてもらおうじゃねえか」

 と、ザーハックさん。実力なんてないんだけどね。ただのゲームの時の知恵だし。
 
 ザーハックさんは紅葉って野郎は俺が相手をすると言いながら、紅葉さんの方へと駆けていった。何か因縁でもあるのだろうか。

 それに続くように、グーファーさんとヒロさんはウィザードのグリーナさんの元へと走りだす。

 僕とルナさんは、守護獣を守るのが役目だ。

 最初に戦闘が始めたのは、ザーハックさんと紅葉さんだ。
 
 ザーハックさんは大鎌で斬りかかる。が、それを紅葉さんは大剣でガードする。鍔迫り合いながら紅葉さんが言う。

「いいですねぇ。血の気の多い方、僕は好きですよ。
 早く戦闘が終わってしまうと盛り上がりに欠けますので、すぐに倒れないで下さいね。期待してますよ」

「ほぉ? この俺を相手にして余裕だな。その余裕がいつまで持つかな?」

 二人は武器を激しくぶつけ合う。ぶつけ合うたびに火花が散る。かなり力が入っているんだろう。
 
 紅葉さんは二メートルくらい後ろに飛び距離を取る。剣を両手に持ちかえ。
 
「後ろの奴ごと葬ってやろう。【爆炎熱波ばくえんねっぱ】!」

 その炎の熱風はザーハックさんを巻き込みながら、僕たちの方へと飛んでくる。

『爆炎熱波』は威力は低いが火属性と風属性の複合属性の全体攻撃だ。

 僕はルナさんを護ろうと剣を盾にする。

「ルナさん、フェアリー! 僕の後ろに隠れて!」

「はい、分かりましたわ。失礼します」

 ルナさんは申し訳なさそうに後ろに隠れる。フェアリーもひらひらっと移動しながら僕を盾とした。
 
 ザーハックさんは両手を組み、仁王立ちをしている。

 やはり、火属性には耐性があるようでまったく効いてない様子。
 すると、ザーハックさんは煽るように。

「ーー今の風……とても気持ちがいいものだったぞ。俺の専属扇風機にならないか?」

  その言葉に紅葉さんが徐々に本性を見せ始める。

「あ? 強がってんじゃねぇよ。お前らは俺たちが目立つように踏み台になっていればいいんだよ。
 踏み台風情ふぜいがいい気になるなよ」

 さっきまでの笑顔や余裕がなくなっているようだ。

「ふん。余裕がなくなった途端、本性を現したな。俺は、お前を以前から気に入らなかった。
 うちの女性スタッフを弄び、イラつけば八つ当たりで暴言や暴力で泣かせ、自分の評判を落とさないよう、脅していたお前を……俺は許さない」

「許さない? 誰が許しをうもんか。俺より弱い奴が俺の言う事を聞かないからこうなるんだ。
 少し躾をしてやっただけの事だ。お前も泣かせてやるよ」

「分かりやすい小物だな」

 ザーハックさんが機嫌が悪かった理由がわかった気がする。その話を聞いていた、ルナさんも少しばかり怒っているようだ。
 
 すると、紅葉さんは剣を地面につけ、剣に炎を纏わせる。ザーハックさんに向かって剣から火花を散らしながら走り出した。

「俺を怒らせた事を後悔させてやる! 『フレイムザッパー』!」

 そう叫びながら、下から上へと突き上げる。
 決まったかのように見えたが、ザーハックさんはそれを片手で掴んでいた。

「こんなもんか。次はどうする? 次の攻撃は通用するといいな」

「ムカつく野郎だ。なら、俺の必殺技を見せてやるよ。これでお前は……」

「何でもいいから、早くこいよ」

「ーー絶対に後悔させてやる」

 そう小さく呟くと。紅葉さんの体から湯気が出てくる。熱が上がっているようだ。

「俺の『フィナーレスキル』を見せてやる。これで終わりにしてやるぅぅ!」

 再び、剣の先を地面に当てたまま走り出す。ザーハックさんに近づき、

「消え去れ! 『炎熱剣《えんねつけん》蒸焦《じょうしょう》』!」

 叫びながら、力の限り切り上げた。

 すると、轟音が鳴り響くのと、同じくらいのタイミングで、大きな火柱が発生し爆発を起こす。その爆発で黒煙と白煙が交互に上がる。

 『フィナーレスキル』は、この世界での必殺技の事だ。高威力の攻撃スキルや強力なバフを掛けたりとさまざまだ。

 一発逆転を狙える可能性があるので打つ場面は選びたい所だ。

 フィナーレスキルはゲームパッドで設定ができる。僕はまだ設定していなけど。
 
 僕はザーハックさんに呼びかける。

「ザーハックさん! 大丈夫ですか!?」

 煙が晴れると。ザーハックさんは足で剣を踏みつけているのが見えた。

「ふん、これがお前の全力か? 口ほどにもない。もう十分目立っただろ? 次は俺のターンだ」

「ば、馬鹿な……俺の技が通用してない……だと……」

 ザーハックさんは剣を踏んづけたまま、鎌を両手に持ち構える。鎌から炎が現れ、それを纏う。

「剣が抜けねぇ! くそっ! 退けよ! ぐはっ!」

 ザーハックさんが一蹴し、紅葉さんは真っ直ぐに転がっていく。

 大勢を整えた紅葉さんを確認した後。物凄いスピードで紅葉さんに近づく。

「すぐに終わってくれるなよ?」

 鎌から炎が放出され、その炎は獣の牙のように形成される。そして、ザーハックさんはスキル名を叫んだ。

「噛み砕け! 【燼滅じんめつ紅牙こうが】!!!」

 振り下ろした瞬間、炎の牙が紅葉さんを噛み砕く! それと同時に炎が周りに拡散し爆発する。

「ぐぁぁああ!!!」

 その一撃を受けた紅葉さんは、ガクッと膝を落とし、うつ伏せに倒れる。

「お前も火耐性あるだろうに、情けないな」

 ザーハックさんは紅葉さんを踏みつけると。

「これじゃあ、俺らじゃなくてお前が踏み台だな。お前もフィナーレスキル使ったんだ。特別だ。俺のも見せてやるよ」

 次の瞬間、ザーハックさんの影から何者かが現れ、弓矢を放つ!

 ザーハックさんは、すぐさま反応し、その弓矢を叩き落とす。

 再び確認すると、その場に紅葉さんの姿はなかった。

「大丈夫ですか! やっぱり、二人で戦いましょう。あの人は強いですよ」

 弓矢を放ったと思われる人物は向井さんだ。

 向井さんは紅葉さんを抱えて、僕たちとザーハックさんとの中間辺りの場所に移動していた。

 いつの間にあんなところに移動していたのか。

「助かった。ありがとう。頼む、優樹のスキルであいつの動きを止めてくれ」

「分かりました!」

 向井さんは元気よく返事をすると、空高くジャンプし、ザーハックさんを狙うように矢を放つ。

「影縫い!」

 放たれた矢は闇に染まる。あれは厄介なアクティブスキルだ。

 攻撃がヒットすると、移動制限が掛けられる。ゲーム時代の嫌がらせスキルの一つでもある。

「ザーハックさん! あれが影に当たると移動が制限されます! 気をつけて下さい」

「そうか。それは面倒だな」

 鎌に炎を纏わせ、矢を焼き払った。

「そんな……あのスピードの弓矢に反応するなんて……」

「二人まとめて相手してやる」

「紅葉さん、走れますか? 僕が援護します」

「あぁ、大丈夫だ。頼んだぞ」

 紅葉さんが走り出す。向井さんは紅葉さんの影に潜り込む。

 ザーハックさんに近づいた、紅葉さんは攻撃を仕掛ける。

 そして、二人の武器がぶつかり合う。その瞬間、影から向井さんが飛び出す!

「ミサイルアロー!」

 ザーハックさんの死角を取った、向井さんが攻撃を仕掛ける。

 攻撃に合わせて鎌で弾き返そうとするが、鎌が当たった反動で爆発を起こす。

「ほぉ、影から攻撃、爆発する矢といい、面白いな」

 本当は僕も参加した方がいいのだろう。だが、足が震えて動けない。自分が情けない。

 ザーハックさんは、鎌を空に向かって大きく切り裂く。

「特別だ。もう一つスキルを見せてやろう。降り注げ! 火の雨よ。『驟雨しゅうう灰燼かいじん》』!」

 引き裂いた、空間から無数の火の雨が降り注ぐ。

 その無数に降り注ぐ火の雨は、広範囲に広がり敵プレイヤーにダメージを与える。一人を除いて……。

 そう、ザーハックさんの攻撃を凌ぐ者がいたのだ。それは巨大な斧を持った橘さんだ。

 橘さんは守護獣を守っているのだろうか、戦わずにじっと待っている。

 橘さんは地属性を得意とするようだ。地面を盛り上げ、土のかまくらを作って火の雨から、守護獣と身を守っているようだ。とても頭が切れる人なのだろう。

 先程の攻撃で、向井さんと紅葉さんほ二人は倒れていた。そして、ザーハックさんは、向井さんを掴み、紅葉さんの近くに投げ飛ばす。

 武器を鎌から槍に変え大きく跳躍し力を貯める。

「これが、俺のフィナーレスキルだ。二人まとめて終わらせてやる。紅き龍よ、流れる星となりて地上に降り注げ!」

 ザーハックさんの背中に、炎の龍が現れる。炎の龍は威嚇するように咆哮する。

 その咆哮は地響きを起こすほど激しいものだった。炎の龍を纏ったまま、二人に突っ込むように加速し降下する。

「『流星ブレイズ紅龍ドラゴン』!!!」

 ザーハックさんはまるで隕石のように、二人がいる場所に落下し、広範囲で爆炎を起こしながら轟音が鳴り響かせた。
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