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第3章 冒険者育成学園ー1年目前期編ー
第21話 夢見る少女は海を楽しむ!
しおりを挟む「うっみだーーーーーーっ!」メルジーナの大声が響き渡り、その声にソフィアは思わず耳を塞ぎました。
「全く、貴族の娘ってのは、海や山で叫ばなきゃ死ぬのかい?」ソフィアは呆れたように問いかけます。
「だって海よ? しかもプライベートビーチよ? 久々の休暇だし、たっぷり遊ばなきゃ損でしょ!」メルジーナは嬉しそうに叫び、元気よく続けます。「さぁ、遊び尽くすわよ!」
「おぉーっ!」一同はその言葉に応え、海の風を受けながら気持ちが高揚していきます。
ここはカイセドリー領にあるプライベートビーチ。ソフィアは領主であるバロン侯爵に許可をもらい、この特別な場所を手配しました。
ソフィアはすでに、白いスクール水着を思わせるシンプルなデザインの水着を着ていますが、その上に彼女の象徴である白衣を羽織っています。白衣から覗く水着は、彼女の真面目さと、どこか抜けた面白さを示しており、クールでありながらも親しみやすい雰囲気を醸し出しています。
一方、メルジーナは勢いよく服を脱ぎ捨て、水着姿になりました。彼女の水着は、赤とピンクを基調としたビキニで、美しい桜の柄があしらわれています。花びらが舞うようなデザインが、彼女の華やかさとエネルギッシュな性格を象徴しています。
「そこに簡単な更衣室を作っておいたから、アリアたちはそこで着替えてくれたまえ」とソフィアが指さした先には、白いレースで囲まれた野外テントタイプの更衣室がありました。
「ソフィアちゃん、ありがとう!」
「ありがとうございます。」
アリアとツバキは感謝を述べ、メルジーナから手渡された水着を持って、それぞれの部屋に入っていきました。
そしてものの数秒で、ツバキはすでに水着に着替え、外に出てきました。
「着替えるの早っ! 忍者って早着替えも得意なんですね!」と驚くメルジーナに、ツバキは冷静に答えました。
「変装とか得意だからね」
ツバキが着ているのは、黒と水色の縞模様が印象的なビキニです。シンプルでありながら爽やかな色合いが、彼女の活発さと落ち着いた性格を引き立てています。控えめなデザインが、彼女の自然体な魅力をより一層強調しています。
「で、でもこの水着、僕にはちょっと大胆すぎないかな? 胸もキツイし……」アリアが恥ずかしそうに言いました。
「いいじゃないか。その胸を強調するために選んだんだから。君はもっと自分に自信を持つんだ」メルジーナは笑顔で励ましの言葉をかけました。
ツバキは水着姿になっても、フードと顔の布マスクを外しません。彼女は恥ずかしそうにしゃがみ込み、か細い声で言います。
「ぼ、僕にはこの格好は無理だよ……恥ずかしいし、みんなみたいに可愛くないし……」
そんなツバキを見かねて、アリアが更衣室から「ひょこっ」と顔を出して声をかけます。
「メルジーナちゃん、水着ってどうやって着るの?」
「今行きまーす!」メルジーナはスキップしながらアリアの元へ駆け寄り、同じ部屋に入っていきました。部屋の中からは「あぁ! アリアさん、いいわー! 素敵よっ!」という歓声が聞こえてきます。
その声にツバキは「ひぃぃっ!」と顔を引き攣らせました。
一方、ソフィアは指を器用に動かしながら、ツバキに語りかけます。
「さぁ、ツバキ……君も全てを曝け出す時が来たんだ……今は、私しか見ていないからチャンスだぞ」
「嫌ですよぉ! 僕の顔を見たって何も面白くないですよぉ!」
「いいじゃないかっ! 私とは胸を揉み合った仲じゃないかっ!」
「僕が一方的に揉まれてただけですっ!」
そのやり取りを聞いていたメルジーナが、アリアの着替えを手伝い終え、部屋から出てきます。
「お待たせしましたわー! あら? ソフィア、何をしてるの?」
「見てわからないのか? ツバキの全てを見せてもらおうと思ってな」
「やめなさいよ。怖がってるじゃない」
メルジーナがツバキをかばうように言い、その瞬間、アリアが新しい姿を披露しました。
アリアは、深い紫色のビキニを身にまとい、その胸元とパンツには繊細なフリルがあしらわれています。フリルが風に揺れるたびに、彼女の可憐さが際立ち、無邪気で愛らしい魅力を引き立てています。
「えへへっ。初めての水着だよっ。みんな、ありがとう!」
「おぉ、可愛いじゃないか」
「アリアさんは何を着ても可愛いのよっ!」
「アリアちゃん、似合ってるね」
みんなに褒められて、アリアは幸せそうに微笑みます。その笑顔に触発されるように、彼らは一緒に水を掛け合ったり、ビーチバレーをしたり、ビーチフラッグで競ったりと、存分に夏の海を満喫しました。
一通り遊び尽くした後、アリアたちは砂浜で休憩していると、メルジーナが得意げに話を切り出します。
「さぁ、夏の海といったらこれ! 『ドラゴンスケイルウォーターメロン』割りをしましょう!」
そう言ってメルジーナが大きな袋から取り出したのは、名前の通り、竜の鱗をまとったような見た目のスイカでした。その硬さは伝説級で、そう簡単には割れません。しかし、中の果肉はジューシーで甘く、高級フルーツとして広く人気を誇る一品です。
「では、綺麗に割れたら呼んでくれたまえ」
ソフィアはそう言いながら、サングラスを掛け、ビーチパラソルの下にある白いビーチチェアにゆったりと腰を下ろしました。
「なんでよっ! せっかくなんだからやろうよ!」とメルジーナが誘いますが、ソフィアはサングラスをクイッと上げ、冷静に答えます。
「オチは見えている。どうせメルジーナは外すだろう? ツバキは上手く割れるとして、アリアはその馬鹿力でバカ硬いスイカを粉々にして、この辺り一面が悲惨なことになるだろう」
ソフィアの言葉にメルジーナは困惑しつつ「アリアさん、そんなことありませんよね?」と尋ねます。アリアは少し不安そうに「多分?」と答えました。
「ま、まあ、普通のスイカも持ってきていますから、アリアさんにはそれに挑戦してもらって、ツバキさんにはドラゴンスケイルウォーターメロンをお願いしましょう」
ツバキはドラゴンスケイルウォーターメロンをグーで軽く叩いてみますが、感触に驚きます。
「本当に硬そうだね。これは僕には切れそうにないよ。竹刀の方が壊れそうだ」
「とりあえず、やってみましょう!」
メルジーナの掛け声でスイカ割りが始まりました。話し合いの結果、トップバッターはツバキに決定。彼は目隠しをし、メルジーナがスイカを設置します。
「では、その場で十回転してくださーい!」
メルジーナの指示で、ツバキはくるくると回転します。
「よし、綺麗に割れるように頑張るぞ」
「ツバキちゃん、左だよー!」
アリアの言葉で、ツバキは慎重に左に進みます。
「アリアさん、ツバキさんから見たら右ですわよ」
「右だってー!」
「じゃあ、こっちかな?」
「もっと前に進んでいいですわよー!」
ツバキは迷いなく前進し、スイカの目の前に誘導されました。
「ツバキちゃん、いっけー!」とアリアが言うと、メルジーナも「ツバキさん、もう一歩前で振り下ろしてくださーい!」と指示します。しかし、アリアは心配そうに「大丈夫かな?」とつぶやきました。
「えいっ!」
「だぁぁっ!?」
『パチンッ!』という鋭い音が響き、ソフィアが痛がりながら声を上げました。
「ギャハハッハ!!! ツバキさん、ナイスよ! 成功よ!」
なんと、ツバキの竹刀は見事にスイカを外し、ソフィアの足に命中してしまったのです。
ソフィアはビーチチェアで居眠りをしていたため、全く気づいていませんでした。ツバキは焦りながら目隠しを外し、目の前の状況に困惑します。
「ええっ!? ローレンスさん、大丈夫ですか!? ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」
「いいさ、ツバキ、君は悪くない……。――いいだろう、私もメルジーナ割りがしたくなってきた」
そう言い出したソフィアは、何と電動ドリルを持ち出し、復讐の準備を始めました。
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