27 / 50
第3章 冒険者育成学園ー1年目前期編ー
第12話 夢見る少女と競い合う二人
しおりを挟む
裁判の結果、カルナには夏季休暇までの謹慎処分が言い渡されました。しかし、彼女自身が推薦教室での生活が難しいと感じたため、今後は勉学教室への移動が決定しました。
カルナの行為は非常に悪質であると認められましたが、被害者であるアリアとメルジーナが「気にしていない」と寛大な姿勢を見せたため、比較的軽い罰で済むことになりました。ただし、爆発によって洞窟の一部が損傷し、その修復工事費はカルナの両親であるマテリア夫妻が負担することになりました。
前日、アリアたちは筆記試験を終え、今日は一学期最後に行われる実力考査の実技試験の日です。この試験に合格しないと、夏季休暇の半分を補習に充てることになります。実技試験は二日間にわたり、初日は基礎体力テスト、二日目はサバイバル生活が課されます。
まずはスパイク先生からの話が始まりました。
「えーっと、カルナの件は残念だったが、みんな気持ちを切り替えていこう。ほら、実技考査のルールが書かれた資料とチェックシートだ。各自で取って確認しておけよ」
アリアはメルジーナとソフィアと共に行動することにしました。スパイク先生はいつも通りの気だるそうな態度ですが、どこか元気がない様子です。おそらく、カルナの件が少なからず影響しているのでしょう。
アリアは人数分のチェックシートと資料を手に取り、メルジーナとソフィアに渡しました。資料には、かわいくデフォルメされた動物たちのイラストが描かれています。
資料に書かれていたメッセージはこうです。『仲間と助け合い、仲間と競い合い、ライバルと励まし合い、ライバルと高め合い、仲間と共に実力考査に合格しよう!』
今回の実力考査では、能力や道具を自由に使用しても問題ありません。各種目ごとに得点が割り振られており、クリアタイムや結果に応じて得点が与えられます。合計で六十五点以上を獲得した生徒は、一日目の考査に合格となり、残りの時間を自由に過ごせます。また、二日目のサバイバル生活考査への参加資格も得られます。
例えば、シャトルランでは三十回から得点を獲得でき、その点数は五点です。そして、最大回数の百回をクリアできたら二十点が与えられます。
この試験では、得意な種目や好きな種目を選んで挑戦することができるのです。
「また可愛い資料ね。……なるほど、チェックシートに名前を書いて、全ての項目をやればいいのね」
項目を見たソフィアは嫌そうな顔をして呟きました。
「中庭ダッシュ、十五メートルダッシュ五本、シャトルラン、持久走……ふむ、めんどくさい、帰ろう」
そう言ってスタスタと歩き出すソフィアの腕を、メルジーナは素早く掴みました。
「逃がさないわよ」
ソフィアはメルジーナの手を振り解こうと力を入れましたが、びくともしません。
「離したまえ。私は急用を思い出したんだ。帰って実験の続きを……」
「ずいぶん勝手な理由ね。昨日あれほど私を煽ったんだから、今日は私が煽る番よ」
ーー昨日の学力考査の時間ーー
テストの出来具合が不安だったメルジーナは、教室で大きなため息をついていました。それを見たソフィアは、メルジーナに近づいて言いました。
「何をため息なんかついている? 普通に授業を聞いていれば、答えられる問題ばかりだったろ?」
「最近までサボってたソフィアに言われたくないわよ。最近寝不足でね、授業にも集中できなかったのよ……ふわぁぁっ」
大きな欠伸をするメルジーナに、ソフィアはからかうように言いました。
「ほほぉ、貴族の娘というのはあれかね? 自分の落ち度を認めず、寝不足のせいにするのが好きなのかい?」
「なんですってー!?」
「そうカリカリするんじゃない。カルシウムが足りてないんじゃないのか? ほら、『スリープシープ』から搾り取ったミルクで作ったスリープストロングだ。茹でたジャガイモを潰して棒状に伸ばし、フライにしたお菓子みたいなものだ。食べたまえ」
「あ、ありがと……料理みたいなこともできるのね」
「天才美少女科学者である私に不可能などない。まあ、学力凡人の君には理解できないだろうけどね」などと、ソフィアは余裕の笑みを浮かべてメルジーナを煽っていました。
メルジーナは左手で口元を隠し、ニヤニヤしながら言います。
「あれれー? もしかして、天才で不可能はないと言っていたソフィア様は運動が苦手なのかなー? あー、確かに、ジュニアスクールの時も体育の時間いなかったもんねー? 人には得意不得意があるんだから、今までのことを謝るならサポートしてあげてもいいわよ? 運動音痴の天才、ソフィア様?」
「ほぉ? 取り消すがいい、その言葉。私は『天才美少女科学者』……だ! いいだろう。私を本気にさせたことを後悔させてやろう」
「ふっ、ハッタリね。なら、どちらが早く合格するか勝負よ」
「望むところだ。アリア行くよ」
「うん!」
こうして、メルジーナとソフィアの二人は競うことになりました。
カルナの行為は非常に悪質であると認められましたが、被害者であるアリアとメルジーナが「気にしていない」と寛大な姿勢を見せたため、比較的軽い罰で済むことになりました。ただし、爆発によって洞窟の一部が損傷し、その修復工事費はカルナの両親であるマテリア夫妻が負担することになりました。
前日、アリアたちは筆記試験を終え、今日は一学期最後に行われる実力考査の実技試験の日です。この試験に合格しないと、夏季休暇の半分を補習に充てることになります。実技試験は二日間にわたり、初日は基礎体力テスト、二日目はサバイバル生活が課されます。
まずはスパイク先生からの話が始まりました。
「えーっと、カルナの件は残念だったが、みんな気持ちを切り替えていこう。ほら、実技考査のルールが書かれた資料とチェックシートだ。各自で取って確認しておけよ」
アリアはメルジーナとソフィアと共に行動することにしました。スパイク先生はいつも通りの気だるそうな態度ですが、どこか元気がない様子です。おそらく、カルナの件が少なからず影響しているのでしょう。
アリアは人数分のチェックシートと資料を手に取り、メルジーナとソフィアに渡しました。資料には、かわいくデフォルメされた動物たちのイラストが描かれています。
資料に書かれていたメッセージはこうです。『仲間と助け合い、仲間と競い合い、ライバルと励まし合い、ライバルと高め合い、仲間と共に実力考査に合格しよう!』
今回の実力考査では、能力や道具を自由に使用しても問題ありません。各種目ごとに得点が割り振られており、クリアタイムや結果に応じて得点が与えられます。合計で六十五点以上を獲得した生徒は、一日目の考査に合格となり、残りの時間を自由に過ごせます。また、二日目のサバイバル生活考査への参加資格も得られます。
例えば、シャトルランでは三十回から得点を獲得でき、その点数は五点です。そして、最大回数の百回をクリアできたら二十点が与えられます。
この試験では、得意な種目や好きな種目を選んで挑戦することができるのです。
「また可愛い資料ね。……なるほど、チェックシートに名前を書いて、全ての項目をやればいいのね」
項目を見たソフィアは嫌そうな顔をして呟きました。
「中庭ダッシュ、十五メートルダッシュ五本、シャトルラン、持久走……ふむ、めんどくさい、帰ろう」
そう言ってスタスタと歩き出すソフィアの腕を、メルジーナは素早く掴みました。
「逃がさないわよ」
ソフィアはメルジーナの手を振り解こうと力を入れましたが、びくともしません。
「離したまえ。私は急用を思い出したんだ。帰って実験の続きを……」
「ずいぶん勝手な理由ね。昨日あれほど私を煽ったんだから、今日は私が煽る番よ」
ーー昨日の学力考査の時間ーー
テストの出来具合が不安だったメルジーナは、教室で大きなため息をついていました。それを見たソフィアは、メルジーナに近づいて言いました。
「何をため息なんかついている? 普通に授業を聞いていれば、答えられる問題ばかりだったろ?」
「最近までサボってたソフィアに言われたくないわよ。最近寝不足でね、授業にも集中できなかったのよ……ふわぁぁっ」
大きな欠伸をするメルジーナに、ソフィアはからかうように言いました。
「ほほぉ、貴族の娘というのはあれかね? 自分の落ち度を認めず、寝不足のせいにするのが好きなのかい?」
「なんですってー!?」
「そうカリカリするんじゃない。カルシウムが足りてないんじゃないのか? ほら、『スリープシープ』から搾り取ったミルクで作ったスリープストロングだ。茹でたジャガイモを潰して棒状に伸ばし、フライにしたお菓子みたいなものだ。食べたまえ」
「あ、ありがと……料理みたいなこともできるのね」
「天才美少女科学者である私に不可能などない。まあ、学力凡人の君には理解できないだろうけどね」などと、ソフィアは余裕の笑みを浮かべてメルジーナを煽っていました。
メルジーナは左手で口元を隠し、ニヤニヤしながら言います。
「あれれー? もしかして、天才で不可能はないと言っていたソフィア様は運動が苦手なのかなー? あー、確かに、ジュニアスクールの時も体育の時間いなかったもんねー? 人には得意不得意があるんだから、今までのことを謝るならサポートしてあげてもいいわよ? 運動音痴の天才、ソフィア様?」
「ほぉ? 取り消すがいい、その言葉。私は『天才美少女科学者』……だ! いいだろう。私を本気にさせたことを後悔させてやろう」
「ふっ、ハッタリね。なら、どちらが早く合格するか勝負よ」
「望むところだ。アリア行くよ」
「うん!」
こうして、メルジーナとソフィアの二人は競うことになりました。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる