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第3章 冒険者育成学園ー1年目前期編ー
第9話 夢見る少女と真相
しおりを挟むアリアが学園長室に向かう少し前の出来事です。
メルジーナはソフィアに腕を引っ張られてどこかへ移動していました。
「ちょっと、ソフィア待ってよ! どこ行くの? このままじゃ、アリアさんが!」
「大丈夫だ、問題ない。もう手は打ってある」
「何のこと? ちゃんと説明してよー!」
説明を求めるメルジーナにソフィアは淡々と歩いています。
しつこいメルジーナにソフィアは言葉を掛けます。
「貴族の娘とはあれかね? 黙って着いてくることを知らないのかね?」
「これは誘拐よ!」
数分歩いて辿り着いた場所は職員室でした。
ソフィアはノックもせず激しくドアを開けて、何も言わずに入室しました。
「失礼しまぁす」とメルジーナは囁くように言いました。
すると、スパイク先生の前にやってきました。
「おい、ローレンス。職員室に入る時ノックもせず入ってきてんじゃねーよ。さらにはドタバタ大きい音を立てやがって。もっと静かにできねーのか」
「すまないねぇ、先生。私はこれまで数えきれないほどの大きい功績を残してきた偉大な人間だからね。隠そうとしても私の偉大すぎる功績たちが私の存在感を引き出してくれるのだよ」
「何訳の分からんことを言っている。だいたい、お前が何の功績を残したのか知らねーよ」
「なら、一部教えよう。感謝して聞くがいい。ギルド警備隊や先生たちが使っている『マジックフォン』並びに、先生が使っているそこの印刷機も私が開発した。他にも色々開発しているぞ。次は私が改良した魔道具の話でもしようか」
スパイク先生は悔しそうに「もういい。ちくしょうっ! お前には勝てない」と言いました。
そこにはドヤ顔を決めるソフィアの姿がありました。
黙って聞いていたメルジーナがここで口を開きます。
「もういいでしょ? 先生も困ってるし、何でここに連れてきたのか教えてほしいんだけど」
「貴族の娘とはあれかね? 甘やかされて生きてきた分、待てができないのかい?」
「私は犬かっ!」
そんなことを言っていると、ノックすると音が聞こえました。
すぐにドアが開きました。
「失礼しまーす!」と元気な声が聞こえました。
職員室に姿を現したのはアリアでした。アリアはメルジーナたちを見つけると、元気よく走って近づきます。
「あ、ソフィアちゃん、メルジーナちゃん!」
「おい、ヴァレンティン! 職員室を走るな!」
先生に怒られるアリアでしたが、気にしません。
「アリアさん! カルナさんたちから何もされてない?」
「ほっぺたを叩かれたけど大丈夫だよ! マナーの先生が回復魔法をかけてくれたの」
「ビーリスのことか? なんであいつが学園にいるんだ?」と、疑問を持つスパイク先生。
アリアは学園長室にはビーリスに呼ばれたことを伝えました。
「なぁ、ローレンス。疑問なんだが真犯人は来ると思うか?」
「来ないだろう」
スパイク先生の質問にソフィアはそう答えました。
「何でそう言い切れるんだ?」
「まあ、それは後で答えよう」
そして、次に職員室に姿を現したのはゼルでした。
「仕方ねーから来てやったぜ」
「ゼル!? あんたが犯人なの!?」
「ちげーよっ! 何で俺様がそんな手を使わなきゃいけねーんだよ!」
メルジーナの言葉にゼルは否定をしました。そして、彼女は続けてアリアに話しかけます。
「アリアさん、本当にごめんなさいね。私のせいで巻き込まれちゃって」
「大丈夫だよ! 困ってたらゼルが助けてくれたの!」
「「ゼルが!?」」
その言葉にメルジーナとソフィアがハモります。
「勘違いすんな! 助けた訳じゃねぇ! この女が俺様を脅しやがったんだ」
ゼルはソフィアを指差して言いました。
「私たちが教室を出た後に起こる出来事を黙って聞けと命じただけだ。真犯人がアリアのせいにするのは分かってた。そして、奴らがアリアに責任を押し付けた時に、ゼルには証人になってもらおうと思ってな」
「そういうことかよ」
「どういうこと?」
今の言葉でゼルは察したようです。しかし、メルジーナは分かっていませんでした。
分かっていないメルジーナにゼルは簡単に説明します。
「メルジーナが襲われたとなったら、真っ先に動くのは貴族だろう? 真犯人が田舎女に罪を擦りつけた場合、誰の証言を信用する?」
「私が違うって言ってもそれは信用されないの?」
「お前は被害者だ。だから、お前の話を聞く頃には裁判が終わって、その田舎女は罪人になっているだろうな。ソフィアは俺を利用したんだ。俺の父上が公爵だから、裁判になっても証人として使えるからな」
「そうなんだ。さすがソフィアね。でも、アリアさんの話をまともに聞かずに裁判って酷い話よ!」
「しょうがねーだろ、あいつらは貴族の後ろ盾があるが、田舎女には後ろ盾が何もないんだからな」
「流石はゼルだ。しかし、気になるのが君がアリアを助けたということだ。どうやって助けたんだい?」
「だから、助けてねーって」
ソフィアの問いにアリアは答えます。
「私がビンタされた時にゼルが『お前たちその辺にしておけ。さすがにやりすぎだ。これはただのイジメだぞ。これ以上するなら学園調和監査局に報告するぞ』って言ってくれたの」
「どの口が言っているんだ」
「どの口が言ってんのよ」
ソフィアとメルジーナの言葉に、ゼルは顔を真っ赤にして言い返します。
「うるせぇなぁ! いいだろ別に! 俺様はただ、うるさいのに嫌気がさして黙られただけだ!」
「私が犯人じゃなかったら学園長たちに証言してやるからな、覚悟しとけよとも言ってくれたよ」
周りからは「おぉ!!!」と声が上がりました。
「お前はもう喋るな!」
「これはあれだな。口が悪くなるのは男の子が好きな女の子にちょっかいを掛けるのと同じやつだな」
「ちげーよ!」
「ごめんねゼル……私がアリアさんと一緒にいるばかりに……」
「違うって言ってるだろ!? もう証言してやらねーぞ!」
ゼルのツッコミが止まりません。
少し顔が赤くなっているようです。声を荒げたせいなのかそれとも本当に……?
「まあ証言をしないというのであれば、ゼルの人生が終わるだけだがな」とソフィアは淡々とした声で言いました。
「恐ろしいやつ……」
「なぁ、みんな集まったんだからいい加減教えてくれよ。ここに集まった理由を」
今まで黙ってたスパイク先生が口を開きました。
ソフィアは「そうだな。では説明しよう」と言い、そのまま続けます。
「もう、分かっているだろうが、アリアとメルジーナを罠に嵌めた真犯人は……カルナたちだ」
「やっぱりー」
「でしょうね」
「フンッ」
「なんだとっ!?」
たくさんの反応がありましたが、スパイク先生だけはわざとらしい反応をしました。
そして、ソフィアは今回の出来事を整理しながら語ってくれました。
まず職員室に集めた目的は、真犯人が来ようとしても、このメンバーを集めることで職員室に入りにくい雰囲気を作り出すことでした。
その件に対してスパイク先生とゼルは「性格悪すぎだろ」と批判の声を上げていました。
謎の青髪フードの男性が持ってきた証拠写真は、カルナたちが爆弾を購入していた際の写真、爆弾を持って洞窟内に入っていく写真、設置している写真でした。
ここまで決定的な証拠写真があっても、持ってきた人物が誰であるかは不明であるため、それだけで決めつけるのは危険だと判断したソフィアは、爆発現場に行って爆弾の破片を集め、一つ一つ指紋を採取して調べました。
元の形には戻りませんでしたが、集めた破片を丁寧に接着して組み立てたみたいです。その形状や材質から使用された爆弾の種類と購入された爆弾が同じ種類であることが判明しました。
そして。指紋認証機能で照合した結果、カルナやその側近の人物のものだと確定したみたいです。カルナたちの指紋は教室にある机や椅子などで採取したらしいです。
「以上が私が調査した結果だ。どうだ? 反論の余地もないだろ?」
科学者らしい彼女の働きに、アリアとメルジーナは感銘を受けていました。
「じゃあ、犯行の動機はなんなんだ?」とスパイク先生は質問します。
「これは予測に過ぎないが、彼女たちは最初からメルジーナ本人を巻き込むつもりはなかったのだろう。先ほどの反応を見ていると、カルナたちはアリアを狙った犯行だと考える。犯行の動機は私は学園に通っていないので分からないが」
その話を聞いたアリアはメルジーナを巻き込んでしまったことを謝りました。
メルジーナは気にしていないし、アリアが無事で良かったと言ってくれました。
「よし、分かった。お前らはもう帰れ。真犯人が入りづらい雰囲気を作るのはフェアじゃない。俺の生徒である以上、どんな理由があろうと平等であるべきだと考えている。処分に関しては今日中に考えておく。さぁ帰った帰った。シッシッ」
スパイク先生はアリアたちを振り払う動作をして追い返しました。
アリアとメルジーナはソフィアにお礼を言い、家に帰って行きました。
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