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第3章 冒険者育成学園ー1年目前期編ー

第2話 夢見る少女とレクリエーション

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 今日はレクリエーションのため、みんなは集会所に集まっていました。

 プログラムが進行し、課外活動紹介の時間がやってきました。男女二人の生徒がステージに上がると、男子生徒が講演台に置いてあるマイクを取ると、威圧するような喋りを見せます。

「よえーやつと度胸のねぇやつはいらねぇ! 腕に自信がある奴だけ俺の所にこい! 以上!」

 その男は目つきが悪く、逆立った赤紫色の髪の毛の男子生徒だった。言い終えるとすぐにマイクを隣にいた女性に投げると、緞帳の中へと消えていきました。

 すると、マイクを受け取った女性が話し始めます。

「みんなーっ! こんにちはーっ! 私は総合支援隊司令官のルフォン・エンジェだよーん! キラッ!」

 ルフォンと名乗った女性は三つ編みでピンクと黄色の明るい髪色でギャルっぽい生徒。彼女は右手をピースのポーズにして右足をくの字に曲げ、ウインクをしてみせた。そして体制を戻して続けます。

「さっきの目つきの悪い男の子は生徒親衛隊司令官のグスタフ・ブラッドリー。愛称はグー君だよん! あんな言い方してたけど、本当はみんなと仲良くしたいんだけど、ちょっぴり素直になれないだけなんだぁ。根は良い人だから、怖がらずに絡んであげてね! グー君って呼んだら喜ぶよん!」

 ルフォンは激しく体を動かしながら手振りを交えて話をしています。すると、緞帳から荒々しい声で「勝手に変な解釈してんじゃねぇっ! あと、その呼び方をした奴は殺す!」と聞こえてきました。

「出た! グー君のツンデレ! じゃあ私たちの活動について説明するよん!」

 ルフォンは二つの組織について、丁寧に説明しまました。

 『生徒親衛隊』は、生徒が危険にさらされる可能性がある場合に、ギルド警備隊やクランと連携して対処する組織です。時には激しい戦闘が展開されます。入隊資格は推薦教室と戦術教室に所属する生徒に限られます。活動内容は、生徒が魔物やハンターに襲われる可能性がある状況での護衛や対処です。

 『総合支援隊』は、戦闘以外での支援活動に従事する部隊です。交渉や救護、支援など多岐にわたる活動を行います。また、戦闘訓練に参加し、現場での手当てやサポートを行います。入隊資格は推薦教室と勉学教室の生徒に限られます。

 参加は任意ですが、活動に参加することで金銭報酬を受け取ることができます。また、ギルドからの要請に応じて出動することもあります。

「以上がグー君が務める生徒親衛隊と私が務める総合支援隊の説明になりまーす! またねーーんっ!」

 手を大きく振りながらルフォンも緞帳へと消えていきました。

 司会役の人が進行を進めます。

「次は闘技場でのレクリエーションになります。集合してください」

 ー三十分後ー

 生徒たちは闘技場に集まっていました。

 闘技場の周囲には高い壁がそびえ立ち、その壁の上には観客席が設けられています。観客席は階段状に配置され、多くの人々が熱狂的に戦いを見守っています。

 入場ゲートは二つあり、それぞれ東側と西側に位置しています。壁の上からは歓声や拍手が轟き、闘技場全体が熱気に包まれています。

 闘技場は、対人戦を主目的とした訓練や試合が行われる場所であり、召喚魔法を扱う者が魔物を召喚し、魔物との戦闘を模擬することもあります。その訓練風景は、観客たちの心を熱く刺激するでしょう。

 観客席には、生徒たちが座るための席が指定されています。彼らはクラスごとにまとまり、それぞれのクラスの席に着席します。

「これより、最終プログラム、上級生による二対二の模擬戦を開始します。該当の生徒はフィールドへ移動をお願いします」

 そして、西側のゲートから、黒髪で短髪の男子生徒と水色の髪、ツインテールで糸目が特徴的な男子生徒が現れました。

 東側のゲートからもう二人の生徒が登場し、西側の生徒たちは彼らの姿を見て身震いしました。その姿は、グスタフとルフォンの登場でした。

「男でツインテールはさすがにキツすぎだろ」

 糸目の男子生徒にグスタフはそう言いました。
 
「髪が長くて、こうするしかなかったでござる。お見苦しい姿を見せてしまい、申し訳ないでござるな」

 ルフォンは親指を立てて「男の子のツインテールもいいと思う! ガンガンやっちゃおーっ!」と言いました。

 糸目の男子生徒はその言葉に頭を下げました。

「それにしても学園長、急にこんな模擬戦を組みやがって。今までしてこなかっただろ。何が狙いだ?」
「まあまあ、グー君。新入生にグー君のカッコいいところを見せるチャンスだよん!」

 ルフォンの言葉の後に、グスタフは彼女にアイコンタクトを送りました。

 何かを察したかのように、ルフォンは頷きます。

「まあ、いい。さっさと終わらせるぞ」
「はいはーい!」

 西側の生徒は並行して武器を取ります。グスタフは両手をポケットの中に入れ、ルフォンはその後ろにいます。

「では先生方、シールドプロテクトの魔法をお願いします」

 司会がそう言うと、観客席の上で魔法が発動しました。シールドプロテクト魔法は対象の人物に盾のような魔法を展開します。攻撃を受ける際、そのシールドが身代わりになり、直接的なダメージを軽減してくれます。この魔法は魔力を大量に消費しますが、基本的にはプロテクト魔法の上位互換となります。その強力さから、より高度な魔法として尊敬されています。

「降参するか、一人五枚のシールドが全てなくなったチームが敗北となります。――では、模擬戦! スタート!」

 開始の合図でポニーテールの生徒は持っていた剣を抜刀し、光の速さでルフォンの懐へやってきました。

「わわっ!?」
「一撃貰うでござる!」

 ポニーテールの男性は目にも止まらぬ斬撃でルフォンのシールドを二枚壊しました。

「ふぎゃぁぁっ!!!」
「なーにが、ふぎゃあだ。これは模擬戦だぞ、マジメにやれよ」

 グスタフはルフォンに冷たい言葉をかけます。ルフォンは逃げながら言葉を返します。

「だってー! 私、戦闘得意じゃないもーん! むしろ専門外なんですけどぉ!?」

 そう言いながら、ルフォンはグスタフの肩を掴んで盾にします。

「おい、あんまり揺らすな。俺は今、超絶に気分が悪いんだ」
「後ろ! 魔法が来てる! えいっ!」
「あぁ! おい!」

 ルフォンはグスタフと場所を入れ替わります。短髪の生徒が放っていた炎の球をグスタフの目の前に迫っています。

 グスタフは背中にある斧を取り出して炎の球を一刀両断しました。

「邪魔だから離れてろ。二人まとめて相手してやる」
「ふっふー! グー君カッコいい! サポートは任せて!」

 二人は距離を取り、グスタフは魔法を放った生徒に接近します。

 すると、持っていた斧で自分の指先を少し切って血を流しました。

 血が流れる右手を前に突き出すと血は鋭い槍となり、短髪の生徒に向けて攻撃を仕掛けます。

「『プロテクト』! ――クッ!」

 その槍はバリアを貫通して短髪の生徒の右足を貫通しました。

「これでしめーだ。血よ混ざれ! 『ブラッドフュージョン』」

「な、なんだぁ!?」

 短髪の生徒の流血とグスタフの血が混ざり合います。

「『血固め』」

 彼がそう言うと、短髪生徒の右足全体を血が覆い尽くします。

「あ、足が……。僕の右足がぁ!!! ゲフォッ!?」

 グスタフは顔面を思いっきり殴り、そのままシールドごと地面に叩きつけました。

 そして、グスタフはそのまま糸目の生徒に攻撃を仕掛けます。

「ブラッド……」
「参ったでござる。降参するでござるよ」
「あぁっ!? 降参だぁ!? 舐めてんのかっ!」
「まあまあ、模擬戦なんだからいいじゃない。君もごめんねぇ、グー君は戦闘になるとうるさくて。回復魔法をかけるね」

 糸目の生徒にキレる彼を宥めるルフォン。

「支援かたじけない。拙者も戦闘中に降参するのもマナー違反だったでござるよ。しかし、拙者は剣士故、彼との相性は最悪でござるから、ここは潔く退くでござる」
「根性ねぇなぁ!? 剣士としてのプライドはねぇのか!」

 糸目の生徒は微笑み返します。

 ルフォンは倒れている短髪の生徒に回復魔法をかけると、「はいはーい! グー君お疲れー! 席に戻るよんっ!」と、言いながらグスタフの腕を掴んでその場を後にするのでした。

「四人の勇姿に大きな拍手を」

 司会の言葉の後に、会場からは大きな拍手が生まれます。

「以上で全てのプログラムを終了します。お疲れ様でした」

 その日の放課後、アリアはメディから預かった手紙を渡そうと、学園長室に来ていました。

 そして、ノックをして声をかけます。

「学園長ー! 入っていいですかー?」

 しかし返事はありませんでした。

「うーん、いないのかな?」

 悩んでいると、一人の生徒が声をかけてきます。

「こんにちは。学園長に何か用かな?」

「こんにちは! あ、生徒会長の人だ! うん! ママが学園長と知り合いで、手紙を預かってるの。だから、渡したいなぁって」

 アリアに声をかけたのは生徒会長のシャーリーでした。

「あー。君がアリア・ヴァレンティンさんだね。学園長から話は聞いてるよ」
「そうなの?」

「うん。君の母親がここの生徒だった時に担当したのが学園長だったらしいよ。嬉しそうに話してたよ」
「そうなんだー! ママ、ここで学んだんだー! 何だか嬉しいなぁ」

「でも今は、学園長は留守にしてるんだ。先程、ギルド会館に向かったんだ。大事な会議があるって。だから今日は諦めて、また後日出直してくるといいよ」
「分かった! 教えてくれてありがとう! 生徒会長バイバーイ!」

 アリアは諦めることして、シャーリーに手を振りました。

「はい。また明日」

 シャーリーも笑顔で手を振ってくれました。

 アリアは笑顔を浮かべたままその場を去りました。
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