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6.モルバーン学園(二年生編)

6-4.王都にて

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 襲撃の三日後、またもや商業ギルドに招集された。
 もういい加減にしてほしいものだ。
 私だって生徒会や、父との国政会議もあるのだ。

 商業ギルドに入るとまたもや会議室に通された。
 そこにはロレンツォがなにやら苛立ってる感じに待ち構えていた。
 それだけじゃなく、なぜか店の従業員のモニカまでいたのだ。

「モニカ、こんなところでなにやってるんだ」

「カロリーナ様ぁ、あの人が無理矢理連れて来たんですよ」

「ロレンツォ、てめぇ・・・」

「陛下、何か勘違いされているようですが、我々は天然酵母について少々質問したに過ぎません」

「ならば店で聞けばいいだろ、教えておらう立場だという事を忘れんな」

「カロリーナ様ぁ、あの人、作り方を秘密にするなら独占罪で罰金だなんて言うんです」

「そんな下賤な者の言う事を聞く必要はありません、私が言う事が真実です。私はただ質問しただけですよ」

 立場を改めようともしない、ロレンツォを呆れた目で見てしまう。
 少し酷い言い方になるがそもそもモニカが独占罪なんて単語知らないだろう。
 それに食い意地がはっていて、話すのは食べ物の話題ばかり。
 罰金の話なんて、頭を使う事をするとは思えない。

「質問しただけなら、モニカがここに居る理由にはならんだろ」

 そこでふと気が付いた。
 モニカの口の周りに何かを食べた屑が付いている。
 食いしん坊のモニカの事だ、食べ物につられてホイホイついてきてしまったのだろう。
 それで色々食わせてもらったのなら、一方的に責める訳にはいかない。

「まぁいい、モニカ帰るぞ」

「はい!」

「まて!天然酵母は!?」

「また、講習会を開いてやるから、少しくらい待ってろ」

「その講習会は白パンの作り方で天然酵母の作り方まではわからないのだろ!」

「天然酵母の作り方も講習会で説明してるよ。お前だって来れば教えたのに何故来なかった」

「料理なんて材料さえわかれば作ると思ったのだ・・・、その材料をさらに作らねばならないんなんて思わないだろ」

「はぁ、講習会を受けた奴から材料だけ聞き出したって訳か、大層なプライドだな。次に料理の事を馬鹿にした言い方したら、教えないからな」

 その言葉にロレンツォは黙り込んでしまい、その日は解放された。
 ちなみに、モニカは料理をあまりやろうとせず、もっぱら接客主体だ。
 そのせいで天然酵母の作り方も覚えていないのだろう。
 もし、連れてきたのがミンディなら、聞きだせたのにな。

「モニカ、何を食べさせて貰ったんだ?」

「んとねえ、肉乗せご飯とぉ、ルクランジイモ羊羹とぉ・・・」

「あ、ああ、もういい。美味しかったか?」

「うん!」

「よかったな」

 無邪気な満面の笑みで言われると嫌味の一つも言えなくなる。
 まぁいいか、なんて思ってしまうのは、娘と重ねてしまっているのかもしれない。
 その娘は今、多忙で休学して王都を留守にしている。

 この時期は農業にとっての節目になっている事が多い。
 作物が良く育つようにと、聖女は各農地に祝福をかけるために国内を巡回する。
 特に娘は大聖女だからと多くの地区を任されたのだが、これも修行の一環だと言って張り切っていた。
 戻って来るのは来月になってからになるのだから結構な長旅だ。
 ちなみに、私は学園在学特権で免除されている。

 そしてその夜、またもや店に賊が入った。
 今度は最初からリーダーが警備していたお陰で賊の一部を取り押さえる事が出来た。
 ただ、不思議な事に今回は小麦などの材料を狙わず、私の事務室が狙われた。
 その狙いは明確で仕入れ元の特定だった。
 結果、アングレードから仕入れている事を知られた訳だ。
 気になるのはその情報が誰の手に渡ったかという話。
 アングレードに派遣したリーダーの部下が食い止めてくれるだろうと、高を括っていた。

 *

「ふはははは、あんな小さな村で作ってたとは盲点だった!」
「あのぉ、ロレンツォ様。お約束の報酬は」
「材料の卸値の引き下げだったな、喜べ、ライ麦を半額で卸してやる。特別にな!」
「それは話が違うじゃねーですか、うちらも小麦が欲しいんですよ!」
「何言ってるんだ、小麦はまだ貴重なのだ、安くできる訳がないだろう。これから値上がりするから今のうちに陛下から買い込んでおく事だな」
「無理ですよ、一人あたりの販売量が決まってるんですよ!」
「だったら、嫁でも子供でも連れて行けば買える量は増えるだろ?なんならペットでもいいんじゃないか?ふはははは」
「そ、そうですね、やってみます」
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