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5.モルバーン学園(一年生編)
5-25.5.王宮にて(2022.11.11追加)
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作者コメント:UP漏れでした。本当に申し訳ない。
***
王宮内、さらに言えば王妃様の部屋。
厳密に言えば、陛下と王妃様の部屋。
そこでお茶会をしましょう、と言うお誘いのはずだった。
王妃様なら庭園すると言い出すかと思ってただけに少し引っかかっていた。
双子は控室で待機する事となり、俺だけが王妃様の部屋に入った。
中は静まり返り、一瞬誰もいないのかと思えるほどだった。
明らかにお茶会の用意などされておらず、部屋も薄暗い。
その中、ベッドから上半身を起こした王妃様がこちらを見て佇んでいた。
顔には血の気はなく、ピクリとも動かない。
そのお姿はまるで死んでいるのかと錯覚する程だった。
「王妃様、お待たせしたでしょうか」
「カロリーナ・・・」
その声に力はなく、その表情に動きはない。
「あれから、ずっとこの状態じゃ」
「陛下・・・あれから、とは?」
何処からともなく現れる陛下は、辛そうにその事を話す。
見た目からは想像できない程に真剣な表情のつもりなのだろう。
「婚約が破棄された日じゃ、あの日は天気が荒れて雷が落ち、神がお怒りの様じゃった」
「・・・最近雨は降っていないですよね?」
「・・・」
「あ、続けてください」
「・・・そんな日にあの脅迫状が届いたのじゃ」
「脅迫状とは穏やかではありませんね、どのような内容だったのでしょうか」
「海の向こうからじゃ、半年後の次の遠征時に国土の半分を貰い受けると書いておった、従わなければ火の海になるとも」
「その件でしたら、ラミレス王国との同盟で解決するのではないですか?」
「だからこそじゃよ、妻としてはカロリーナを生贄や人質に差し出す様な真似になってしまった事がショックだったのじゃろう」
「だからって、本物を目の前にしてこの状態は異常では・・・」
「ショックを受けてる所に、毒を盛られてな・・・」
「治療は・・・医者はなんと・・・」
「未知の毒らしいのじゃ、今は大聖女が頼みの綱、じゃが碌な実践を積めてないから未熟なのじゃ・・・」
解毒となると第二段階の御業に当たる。
当然ながら俺が使える訳もなく、ただ、見守るしかなかった。
俺は王妃様の手を握り、無駄だと思いつつも祈らざるを得ない。
しばらく話しかけるだけの時間が過ぎた。
俺の名前を呼んで以来、何も反応しない王妃様は俺の話を聞き続けた。
陛下もそれを黙って見守っている。
何か反応があるかもしれないとでも思っているのだろう。
だが、俺は聖女としては二流以下。
だが、一瞬ピクっと手に力が入る反応があった。
こちらを見つめている感じがするが、どう考えても治ってるとは言い難い。
だが少しでも反応があったのは、つまるところ、俺への愛、または俺の愛の力だろうか。
なんて思っていると部屋にノックのと音が鳴る。
俺は周りの事を気にせずに、王妃様の手を握っていると陛下がドア外の兵士と話をする。
言伝でも貰ったのか、陛下は俺の元に来て「これから大聖女様が来られる、暫く控室で待機してくれんかの」と言った。
大聖女と会ってみたいという好奇心はあったが、名前も非公開になる程だ、治療に来られたと言う事もあるし、それに専念してもらう為、俺は控室に戻った。
そこには双子が優雅にお茶を嗜んでいた。
お茶請けは、蜜たらし団子が出されていたらしい。
俺にも一口残して置けよな・・・。
まぁ、俺が控室に来る事なんて想定していないか。
「どうだった?バーランド王国のスイーツは」
「まぁまぁですね、もうひとひねり欲しい所だわ」
「私は結構すきね、できたらもう少し別の種類もあればよかったのね」
「そうか、まぁ、気に入ったのなら良かった。それよりも知ってたか、海外の奴らから領土要求勧告が来たらしい」
「たしか名前はアレシフェルン王国でしたか、より一層カロリーナ様の重要性が増したのだわ」
「次回はいつ頃に来ると言っておられましたか、陛下にお伝えするのね」
この話がオルドリッジ様に伝わるとどの様な行動に出るのだろうか。
戦闘船の一つくらい譲渡してもらえるのだろうかなんて規模の小さい事を考えていた。
そうともなれば、俺としては本当にこの婚約を守る必要が出てくる。
この王妃様の為、王国の為・・・。
それからおかわりのお茶請けを三回ほど頂いた頃、ようやくお声が掛かった。
王妃様の解毒が成功して、大聖女様は帰られたらしい。
考えてもみれば俺なんかより、大聖女の方を嫁に欲しがるのが順当と言うものではないだろうか。
自国に連れ帰れば役に立つのは間違いない。
そういう意味では、タイミングの問題だった可能性もある。
大聖女の話題が耳に届いたのは付き合い始めてからだ。
オルドリッジ様としても、今更、あっちが良いなんて言えない状態なのかもしれないな。
俺としては学園内の安全的にもそうしてくれると助かる。
ああ、そうか。
オルドリッジ様が気変わりを起きない様に他国の者に大聖女を会わせたくないのかもしれないな。
要するに俺ももう他国の人間扱いか・・・、少し寂しい限りだ。
*
「オルドリッジ様は本当に私でよかったのかな」
「陛下がそういうのであれば、そうなのだわ」
「不安になる事はありませんわ、全て任せてついて行けばいいのね」
「側室や妾は作らないのかな」
「ないですね、そんな甲斐性あるなら彼女のニ、三人つくってるのだわ」
「つまりDTね」
「おいおい」
***
王宮内、さらに言えば王妃様の部屋。
厳密に言えば、陛下と王妃様の部屋。
そこでお茶会をしましょう、と言うお誘いのはずだった。
王妃様なら庭園すると言い出すかと思ってただけに少し引っかかっていた。
双子は控室で待機する事となり、俺だけが王妃様の部屋に入った。
中は静まり返り、一瞬誰もいないのかと思えるほどだった。
明らかにお茶会の用意などされておらず、部屋も薄暗い。
その中、ベッドから上半身を起こした王妃様がこちらを見て佇んでいた。
顔には血の気はなく、ピクリとも動かない。
そのお姿はまるで死んでいるのかと錯覚する程だった。
「王妃様、お待たせしたでしょうか」
「カロリーナ・・・」
その声に力はなく、その表情に動きはない。
「あれから、ずっとこの状態じゃ」
「陛下・・・あれから、とは?」
何処からともなく現れる陛下は、辛そうにその事を話す。
見た目からは想像できない程に真剣な表情のつもりなのだろう。
「婚約が破棄された日じゃ、あの日は天気が荒れて雷が落ち、神がお怒りの様じゃった」
「・・・最近雨は降っていないですよね?」
「・・・」
「あ、続けてください」
「・・・そんな日にあの脅迫状が届いたのじゃ」
「脅迫状とは穏やかではありませんね、どのような内容だったのでしょうか」
「海の向こうからじゃ、半年後の次の遠征時に国土の半分を貰い受けると書いておった、従わなければ火の海になるとも」
「その件でしたら、ラミレス王国との同盟で解決するのではないですか?」
「だからこそじゃよ、妻としてはカロリーナを生贄や人質に差し出す様な真似になってしまった事がショックだったのじゃろう」
「だからって、本物を目の前にしてこの状態は異常では・・・」
「ショックを受けてる所に、毒を盛られてな・・・」
「治療は・・・医者はなんと・・・」
「未知の毒らしいのじゃ、今は大聖女が頼みの綱、じゃが碌な実践を積めてないから未熟なのじゃ・・・」
解毒となると第二段階の御業に当たる。
当然ながら俺が使える訳もなく、ただ、見守るしかなかった。
俺は王妃様の手を握り、無駄だと思いつつも祈らざるを得ない。
しばらく話しかけるだけの時間が過ぎた。
俺の名前を呼んで以来、何も反応しない王妃様は俺の話を聞き続けた。
陛下もそれを黙って見守っている。
何か反応があるかもしれないとでも思っているのだろう。
だが、俺は聖女としては二流以下。
だが、一瞬ピクっと手に力が入る反応があった。
こちらを見つめている感じがするが、どう考えても治ってるとは言い難い。
だが少しでも反応があったのは、つまるところ、俺への愛、または俺の愛の力だろうか。
なんて思っていると部屋にノックのと音が鳴る。
俺は周りの事を気にせずに、王妃様の手を握っていると陛下がドア外の兵士と話をする。
言伝でも貰ったのか、陛下は俺の元に来て「これから大聖女様が来られる、暫く控室で待機してくれんかの」と言った。
大聖女と会ってみたいという好奇心はあったが、名前も非公開になる程だ、治療に来られたと言う事もあるし、それに専念してもらう為、俺は控室に戻った。
そこには双子が優雅にお茶を嗜んでいた。
お茶請けは、蜜たらし団子が出されていたらしい。
俺にも一口残して置けよな・・・。
まぁ、俺が控室に来る事なんて想定していないか。
「どうだった?バーランド王国のスイーツは」
「まぁまぁですね、もうひとひねり欲しい所だわ」
「私は結構すきね、できたらもう少し別の種類もあればよかったのね」
「そうか、まぁ、気に入ったのなら良かった。それよりも知ってたか、海外の奴らから領土要求勧告が来たらしい」
「たしか名前はアレシフェルン王国でしたか、より一層カロリーナ様の重要性が増したのだわ」
「次回はいつ頃に来ると言っておられましたか、陛下にお伝えするのね」
この話がオルドリッジ様に伝わるとどの様な行動に出るのだろうか。
戦闘船の一つくらい譲渡してもらえるのだろうかなんて規模の小さい事を考えていた。
そうともなれば、俺としては本当にこの婚約を守る必要が出てくる。
この王妃様の為、王国の為・・・。
それからおかわりのお茶請けを三回ほど頂いた頃、ようやくお声が掛かった。
王妃様の解毒が成功して、大聖女様は帰られたらしい。
考えてもみれば俺なんかより、大聖女の方を嫁に欲しがるのが順当と言うものではないだろうか。
自国に連れ帰れば役に立つのは間違いない。
そういう意味では、タイミングの問題だった可能性もある。
大聖女の話題が耳に届いたのは付き合い始めてからだ。
オルドリッジ様としても、今更、あっちが良いなんて言えない状態なのかもしれないな。
俺としては学園内の安全的にもそうしてくれると助かる。
ああ、そうか。
オルドリッジ様が気変わりを起きない様に他国の者に大聖女を会わせたくないのかもしれないな。
要するに俺ももう他国の人間扱いか・・・、少し寂しい限りだ。
*
「オルドリッジ様は本当に私でよかったのかな」
「陛下がそういうのであれば、そうなのだわ」
「不安になる事はありませんわ、全て任せてついて行けばいいのね」
「側室や妾は作らないのかな」
「ないですね、そんな甲斐性あるなら彼女のニ、三人つくってるのだわ」
「つまりDTね」
「おいおい」
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