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5.モルバーン学園(一年生編)
5-57.
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結局のところ出てきた尻尾というのは小指程の短さで、まだ人の皮を被っているものの部分的に堅くなりつつあった。
感覚的には背骨の延長ではないかと思われる事から、あの痛みは成長痛だった可能性が高い。
あと、皮膚が割れたようになっているから、出血もそこからだったのだろう。
急に伸びた骨に皮膚が耐えれなかったのかもしれない。
だとして、どうして急に伸びたのだろうか。
ケツの穴を掘られると成長するとかないよな?
そんな冗談は置いておいて、その日の夜の食堂は人がまばらだった。
学園祭で忙しくしていた者が集まって食べるくらいで、あまり忙しくない者は総じて出店の食べ物で腹を満たしたらいしい。
俺らは前者の方で、娘やディーナも含め食堂に集まって食べる事になった。
考えても見れば娘との食事と言うのはいつぶりだろうか。
ここのシェフの味も中々なもので、メニューを見るだけで全員が目を輝かせるのは年相応と言った感じがする。
食事を摂りながら、今日の反省会や、娘とディーナの勝負の行方で盛り上がったあと、明日の話をし始めた所でオルドリッジ様が現れた。
「皆、お疲れ様だったね、店は随分と繁盛していたそうじゃないか。この分なら売り上げトップも間違いないんじゃないか?」
とはいえ、オルドリッジ様が何者かというのは全員が知っているので娘たちは畏縮して話そうとしない。
仕方なく俺が話すしかなかった。
ケツの事があるから、皮肉の一つや二つぶつけたいところだが、娘たちに不仲だと勘繰られるのも良くないので、普通に接するしかないのが残念だ。
「そんなもので競っているのか。しかし値段設定は平民向けレベルだから売り上げは大した事ないだろう」
「だとしても、集客トップはゆるぎないな、売り上げもなら二冠で表彰できるのに勿体ない。それに客が捌けないなら値段を上げればいいんじゃないか?」
「売上トップ候補ってどんなのがあるんだ?」
「そうだな、今のところは海賊飯店と帝国喫茶だな、それにしても海賊飯店はこのご時世に何を考えてるのやら」
「何かまずいのか?」
「料理が例の海外のアレシフェルン王国のものですよ、これから戦おうって国の料理を・・・」
「それを言ってしまえば帝国喫茶はソルレーンのものじゃなかったか?戦う訳じゃないが似たような物じゃないかね、それにこの国では国に罪はあっても、その国の料理や文化に罪はないって考えるんだ、だから目くじらを立てるなよ」
「ふむ・・・そういう考え方なのか。割と寛大なんだな」
「おいおい、生徒会長さん。何年この学園に居るんだよ。ちょっと慣れた方がいいぜ」
「手厳しいな、そういう事であれば、問題ない・・・か。ラミレスであれば、その国の文化は徹底的に排除するからな」
「あまりそういう風潮は感心しないな」
「しかし、ここまで表立ってやるのは兎も角、敵国となった国民の癖を見つける事でスパイの発見に繋がる事もあるんだ」
国防の観点となるとオルドリッジ様の言い分は分からなくもない。
しかしまぁ、それはそれこれはこれとしたいというのがこの国の風潮ではある。
ただ、その考えを押し付ける気はなく、郷に入っては郷に従えというようにラミレスに行くならば俺はその風潮に従う。
というか、それを捻じ曲げてスパイが発覚した場合、責め立てられるのは俺だからな。
「そんな話よりも明日の話だ、カロリーナは明日の拝火の時は空けておけよ」
「拝火ってなんだ?」
「最後に拝火の儀をするといっておいただろう、そこでチークダンスを踊ったカップルは幸せになれるという言い伝えだ」
言われて思い出すまですっかり忘れていた。
巨大な焚火をおこして、周りで踊るもよし、眺めるもよしのイベントだったかな。
その為の手配やら、安全策やら考えるだけで面倒そうなイベントだったので忘却の彼方に追いやっていた。
当の生徒会メンバーはそれの安全対策や準備に追われていた訳だが、なるほどオルドリッジ様は俺と踊りたいというのだな。
「まぁ、それは了解した。それより街道の問題をだな───」
うっかり内輪の話を続けそうになったのだが、娘やディーナにとってはつまらない話だったのは顔を見て判った。
それどころか、緊張しすぎて固まっているのだからあまりこの状態は良くないだろうと思い、話を切り上げた。
彼女たちを飽きさせない、つまらない思いをさせないというのは俺の、俺達の義務なのだから。
*
「明後日は、学校も休みだし王都を観光するか、ディーナ達も見て回りたいだろう?」
「いいんですか!うれしい!」
「フランチェスカさんは、王都はそろそろ慣れて来たかな」
「私も行きたいです!」
「お、そうか、じゃあ一緒に行こう」
「私も誘ってくれるのですよね」
「おお、フローレンス!寮の方に来ていたのだな、何処に泊まる予定なのだ?」
「陛下が用意してくださっているから心配無用ですわ」
なんだかんだ、大所帯で観光する事になりそうだ。
感覚的には背骨の延長ではないかと思われる事から、あの痛みは成長痛だった可能性が高い。
あと、皮膚が割れたようになっているから、出血もそこからだったのだろう。
急に伸びた骨に皮膚が耐えれなかったのかもしれない。
だとして、どうして急に伸びたのだろうか。
ケツの穴を掘られると成長するとかないよな?
そんな冗談は置いておいて、その日の夜の食堂は人がまばらだった。
学園祭で忙しくしていた者が集まって食べるくらいで、あまり忙しくない者は総じて出店の食べ物で腹を満たしたらいしい。
俺らは前者の方で、娘やディーナも含め食堂に集まって食べる事になった。
考えても見れば娘との食事と言うのはいつぶりだろうか。
ここのシェフの味も中々なもので、メニューを見るだけで全員が目を輝かせるのは年相応と言った感じがする。
食事を摂りながら、今日の反省会や、娘とディーナの勝負の行方で盛り上がったあと、明日の話をし始めた所でオルドリッジ様が現れた。
「皆、お疲れ様だったね、店は随分と繁盛していたそうじゃないか。この分なら売り上げトップも間違いないんじゃないか?」
とはいえ、オルドリッジ様が何者かというのは全員が知っているので娘たちは畏縮して話そうとしない。
仕方なく俺が話すしかなかった。
ケツの事があるから、皮肉の一つや二つぶつけたいところだが、娘たちに不仲だと勘繰られるのも良くないので、普通に接するしかないのが残念だ。
「そんなもので競っているのか。しかし値段設定は平民向けレベルだから売り上げは大した事ないだろう」
「だとしても、集客トップはゆるぎないな、売り上げもなら二冠で表彰できるのに勿体ない。それに客が捌けないなら値段を上げればいいんじゃないか?」
「売上トップ候補ってどんなのがあるんだ?」
「そうだな、今のところは海賊飯店と帝国喫茶だな、それにしても海賊飯店はこのご時世に何を考えてるのやら」
「何かまずいのか?」
「料理が例の海外のアレシフェルン王国のものですよ、これから戦おうって国の料理を・・・」
「それを言ってしまえば帝国喫茶はソルレーンのものじゃなかったか?戦う訳じゃないが似たような物じゃないかね、それにこの国では国に罪はあっても、その国の料理や文化に罪はないって考えるんだ、だから目くじらを立てるなよ」
「ふむ・・・そういう考え方なのか。割と寛大なんだな」
「おいおい、生徒会長さん。何年この学園に居るんだよ。ちょっと慣れた方がいいぜ」
「手厳しいな、そういう事であれば、問題ない・・・か。ラミレスであれば、その国の文化は徹底的に排除するからな」
「あまりそういう風潮は感心しないな」
「しかし、ここまで表立ってやるのは兎も角、敵国となった国民の癖を見つける事でスパイの発見に繋がる事もあるんだ」
国防の観点となるとオルドリッジ様の言い分は分からなくもない。
しかしまぁ、それはそれこれはこれとしたいというのがこの国の風潮ではある。
ただ、その考えを押し付ける気はなく、郷に入っては郷に従えというようにラミレスに行くならば俺はその風潮に従う。
というか、それを捻じ曲げてスパイが発覚した場合、責め立てられるのは俺だからな。
「そんな話よりも明日の話だ、カロリーナは明日の拝火の時は空けておけよ」
「拝火ってなんだ?」
「最後に拝火の儀をするといっておいただろう、そこでチークダンスを踊ったカップルは幸せになれるという言い伝えだ」
言われて思い出すまですっかり忘れていた。
巨大な焚火をおこして、周りで踊るもよし、眺めるもよしのイベントだったかな。
その為の手配やら、安全策やら考えるだけで面倒そうなイベントだったので忘却の彼方に追いやっていた。
当の生徒会メンバーはそれの安全対策や準備に追われていた訳だが、なるほどオルドリッジ様は俺と踊りたいというのだな。
「まぁ、それは了解した。それより街道の問題をだな───」
うっかり内輪の話を続けそうになったのだが、娘やディーナにとってはつまらない話だったのは顔を見て判った。
それどころか、緊張しすぎて固まっているのだからあまりこの状態は良くないだろうと思い、話を切り上げた。
彼女たちを飽きさせない、つまらない思いをさせないというのは俺の、俺達の義務なのだから。
*
「明後日は、学校も休みだし王都を観光するか、ディーナ達も見て回りたいだろう?」
「いいんですか!うれしい!」
「フランチェスカさんは、王都はそろそろ慣れて来たかな」
「私も行きたいです!」
「お、そうか、じゃあ一緒に行こう」
「私も誘ってくれるのですよね」
「おお、フローレンス!寮の方に来ていたのだな、何処に泊まる予定なのだ?」
「陛下が用意してくださっているから心配無用ですわ」
なんだかんだ、大所帯で観光する事になりそうだ。
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