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5.モルバーン学園(一年生編)

5-39.ラミレス王国王都にて

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「酒は飲めるのか?」

「どうでしょう、飲んだ事はないですが、この国では年齢制限はないのですか?

「ないぞ、たぶん」

「たぶんって・・・ふふ、じゃあ少しだけ」

「よしっ、とっておきを開けてやろう、パテルネルドの40年物のワインだぞ」

「40年!」

 おっと・・・思わず涎が垂れてしまいそうになっていた。
 目の前に注がれる高級赤ワイン、前世であれば泣いて喜ぶレベルの品物だ。
 そんな美味そうな物を目の前にして、香りが漂ってくる。

 辛抱たまらん!

 グラスの首を掴み、匂いを確認すると芳醇で酸味のあるフルーティーな香りが漂う。
 11という齢でこんな高級な物を飲むなんてけしからん、だが、ここで飲まなければ一生飲めないかもしれない。
 ゆっくり口をつけ、口に含むとぶどうの香りが鼻を突き抜けて行く。
 一口でわかった。
 これはめちゃ美味い。

「行ける口だな、しかも初めて飲むとは思えない飲み方だ」

「父の飲み方を見様見真似しただけですよ」

「いやいや、堂に入ってる。いっぱしの酒飲みとしか見えないぞ」

「こんな美味しいワインですから、美味しく飲まないと勿体ないですからね」

「わかるのかね、これは良い飲み友達になれそうだな、ささ、もっと飲むが良い」

「ありがた・・・く」

 グラス1杯分を空けただけで唐突に首の座らない子どもの様に前後左右に揺れ出した。
 それが泥酔の症状だと気づくのに時間はかからなかった。
 前世では散々乗り越えて来た症状だ。

「おお・・・まだ少しはやかったか・・・」

「申訳・・・」

 瞼は大剣を吊るした様に重く、意識を保つ事すらままならない。
 だが、このまま寝てしまっては折角の高級ワインが勿体ない。

 せめてもう一杯。

「もう・・・いっぱい・・・だけ」

「の・・・飲めるのか?」

 頭が前後左右に揺れる中、どうにか頷いてる様に見せる事が出来た。
 その必死の所作をみて、グラスにワインが注がれる。

 今度は楽しむ余裕はない。
 一気に飲み干すと、芳醇な香りが鼻を突き抜けた。

「おいしーい!」

 俺はそんな言葉を発し終えると共に、バタンと横に倒れ、幸せそうに眠りについていたそうだ。


 *

 起きたらテルフェイア様の屋敷ではなく、私に割り当てられた王宮の部屋だった。
 あの後、オルドリッジ様が駆け付けてくれたのをぼんやりと覚えているのだから、そのまま連れて帰ってくれたのだろう。
 窓の外を見ると日はか落ちてどっぷりと暗くなっている。
 夕食を食い損ねたかもしれない。

「それにしても・・・アレ、美味しかったなぁ」

「そうか、では取り寄せておこうか」

 真横から聞き覚えのある声がした。
 最早恒例行事である。
 想像通り、裸で俺の横に寝ていた。
 ついでに俺まで何も着ていないのは、どういう言い訳を述べるつもりなのだろうか。

「あのさ・・・どうして俺まで脱いでるんだ」

「双子が気を利かせてくれた」

「まぁいいけどさ、どうせ手を出す訳じゃないだろう?」

「さて、それはどうかな、たまには俺達がどういう関係かを分からせる必要があるだろう」

 俺を押し倒し、覆いかぶさる様に四つん這いになるオルドリッジ様だったが、相手が悪戯心しか持っていないのは明白である。
 こんな茶番を辞めて欲しいなんて思いつつ、俺は何かを期待していたらしい。
 そして堅くなった物を見るに、まだまだ子どもである。
 とはいえ、こちらのキャパはもっと小さいだろう。
 しかも初めては痛いのだろう、俺に耐えれるだろうか。
 外から斬り裂かれたのは経験したが、内部からメリメリと破壊される経験はなく、少し恐怖を感じていた。

「冗談・・・ですよね」

「その割に逃げないのは、期待しているという事ではないのか?」

「まぁ、好きにすればいいよ、どのみち力では敵わない」

「首輪は外れたのだろう?」

「いや、まだ完全には取れていない。昼間だけ無効にして貰っているだけだ、相手の魔族も相当レベルが高い奴らしいくてな。夜だけ力を失うなんて、吸血鬼や狼男の真逆だな」

「それじゃあ、好き放題に出来るという訳か・・・」

「いや、まぁ、そうだけど、本気じゃないよな?」

「どうしようか悩んではいたんだが、この状況で何もしないなんて、国王の名折れと言うもの。据え膳を食うには早熟だが前座くらいなら多少構わぬだろう?」

「まて、落ち着いて話し合おう、今ならまだ間に合う」

「まぁまぁ、体の力を抜いてくれ、そしてすべてを俺に委ねるんだ」

「おい、本気で怒るぞ」

「その割に、股をとじる力は弱い様だが」

「そういう呪いだろうが!!」

 この後の事はあまりにも語りたくない。
 人間としての尊厳を失われた気がする。
 なんというか、目を刺されそうになった時あたりから緩くなったのかもしれないが、それを陛下にかけるという不敬をしでかした以上、首を刎ねられる事も覚悟した。

 *

「馬鹿・・・馬鹿・・・馬鹿・・・・」
「ふははははははは」
「どうすんだよ、ベッドにシミができたんじゃないか、てか汚いから風呂に入れよな!」
「入るなら一緒に入ろうじゃないか」
「いや、まだ腰が」
「ふははははははは」
「馬鹿ー!!!」
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