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5.モルバーン学園(一年生編)

5-33.ラミレス王国王都にて

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 オルドリッジ様と部屋で二人きりになった途端、怒鳴られた。

「あれは過激派だぞ!」

「そうなのですか?ですが3万人も居れば、そういう人達が出るのも仕方ないですよね」

「あの者たちとはいつからの付き合いなんだ」

「かれこれ、3,4時間?」

「万は嘘だろ。時間的に3、4時間か・・・知り合ったばかりではないか!」

「聞きましたよ。3万人を降格させたのですってね」

 チッと舌打ちの音がした。
 オルドリッジ様としても本意ではないのかもしれない。
 しかし、このまま良いという訳には行かないだろう。
 兵士の不満は次第に膨れ上がり、他者を巻き込み大きくなるものだ。
 どこかでガス抜きは絶対必要なのだ。

「ああ・・・その事だとは思ってたが、仕方がないではないか、戦いの仕方が変わって来たのだ」

「戦列艦の船員ってどれくらいの人数になるのでしょうか」

「だいたい800人くらいだな、鎧なんて着てたら海に落ちただけで死ぬんだぞ、船の上では騎士と言うのは邪魔なだけなんだ、その上我が国は陸戦力をそれ程必要としていない」

「そんな事はありませんよ。陛下・・は海外の蛮族を制圧しようって言ったではありませんか、その時に騎士は腐る程必要ではありませんか?一時的な財政難で手放すなんて愚かな事ではないでしょうか」

「仕方がないのだ、新造艦に予算を割いているのだから・・・あ・・・」

「そうでしょう、今こそ、あの基金・・の使い処ではないでしょうか」

 少し肩の力が抜けたのか、オルドリッジ様は椅子に腰かけて、頭を抱えた。
 色々と考える事があるのだろうが、今はそっとしておこうと思った途端に結論が出た様だ。
 その時間はあまりにも短かった。

「所でだ、今は二人きりなのだが、いつまでその口調なのだ?それに陛下・・と呼ぶな」

「・・・オルドリッジ様、結論は出たか?」

「ふふ、そうだ、それでいい。分かった。では三万人の復帰を認めよう、だが、その総指揮官はカロリーナがやれ」

「まだ婚姻前だぞ?」

「何、大した問題ではないであろう?帰国中であれば、その指揮権は俺が執っておく。俺も居ない時はその代理も用意する。その方が士気も上がるだろう?」

「・・・まぁそうかもしれんが、それで?炙り出しってのはこれだけなのか?」

「ああ、その事だが、今回の馬車の爆破は彼らではない、俺が追ってるのは爆破した奴らの方だ」

「そうなのか、まぁいい。ところで、イヴァという娘とはもういいのか?ただならぬ関係だった様に見えたが」

「あれはな・・・頭痛の種なのだ、実は───」

「あ、そんな事より、先に救国騎士団に復帰の話をするべきだ、ちょっと話してくる」

「お、おい!」

 待たせておくのも悪いと思い、先に救国騎士団のメンバーに説明に行った。
 そこで、三万人の復帰の話をし、近い内に陛下から説明があるから、待っている様にと説明した。
 その言葉に、彼らは涙を流して喜んだ。
 騎士の誇りが守られたのだから当然だろう。
 何人もから握手を求められ力強く握ってやった。
 その内の一人が、ぼろっと言葉を漏らす。

「指輪の毒針、不要でしたな」

「ああ、全くだ、使っていたら、どうなっていた事か」

 よくある話だ。
 握手したらチクッとして、それが猛毒を刺された痛みだったという話。
 又はパンチに見せかけて、指輪の毒針を押し当てる話。
 そんな状況まで考えていたのかと思うと、少々ゾッとした。
 刺されたのが俺ならおそらく問題無いのだろうが、他の者ならそうではないだろう。
 まったく、騎士精神はどうなったんだよ。

 結局、今回の話の正式な発表は一週間後にある婚約式で行う事となった。
 対象者全員は教会には入らないので式の後、三万人が集まれる広場に移動しての発表となるらしい。
 ・・・事が大事になった気がしたがきっと些細な話だろう。

 *

「ところで、イヴァについてなんだが」
「分かってる、分かってるって!」
「そうか、わかってくれるか」
「ああ、本来なら正妻にしたかった相手なんだろう?俺はどっちが正妻でも構わないぜ」
「そうじゃない、ちょっと聞いてくれ」
「いや、そういう面倒な話は良いよ、俺はオルドリッジ様の交際関係に口を出さない、それでいいじゃないか」
「いいから聞け!」
「聞かない!」
「まるで聞き分けの無い子供みたいな事を言うな!}

 この話は何故か尾を引いた。
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