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5.モルバーン学園(一年生編)
5-14.
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目が覚めると、そこは自室だった。
俺が起きた事に気が付いたセシリアが近づいて来て額に手を当てる。
「熱は下がった様ですね、よかった」
「本当に病気だったのか」
「さあ、どうでしょうね。それよりヒューゴ様とアルヴィン様と話をしてきました」
「どうだった」
「すぐに思い当たる事は無いそうで、調べて頂けると言っておられました」
「そうか、すまないな手間をかけて」
カーテンの隙間から夕陽が差し込み、それほどの時間を眠っていた事に驚いた。
しばらくするとレイラが訪ねて来た。
それはもう、親でも死んだのかと思うような暗い顔をしている。
「レイラ、どうしたの?何か思い悩んでる?」
「リーナ様・・・ごめんなさい」
そう言って、スカートをぎゅっと掴み何かを我慢している。
俺はすぐに彼女の状況を理解した。
そういうのすごくわかる。
俺は理解の深い父親だったからな、言わずとも分かる。
「レイラ、そんなに我慢してたら体に悪いですよ」
「リーナ様・・・・」
「そういうのは早めにいった方が良い。私だって、辛いと思ったらすぐにします。だって、生きてる以上、そういうのは仕方ないじゃないですか。私の事は気にしないでください。それを我慢して来てくれただけで、私は嬉しいですよ」
「リーナ様は何て懐の深い方なのでしょう・・・」
たかがこの程度で、そう言われるとは思わなかった。
さらに小刻みに震え、涙をぽろぽろと溢し出した彼女に俺は言葉の選択を誤ったのかと思ってしまう。
恥ずかしがっている場合ではないだろう、それならば、どうしてここに来たのだ。
「レイラ、本当に急いだ方がいいよ、溜め込むのは体に良くないですから、もしもの時は噂が変に広まりすれば貴女だけに留まらず、貴女のお姉さんや家にも迷惑がかかるかもしれません。そうなったら結婚にも影響でます、勿論、私はそうならない様に手を尽くします。でも、急いでいった方がいい。白状すると私だってそんな過ちを犯した事があります。それも今年の事です、恥ずかしいですね、こんな歳になって。でも仕方ないじゃないですか、してしまったものは、ね、誰しもそういう事をしてしまう時期というのがあると思うのです。ですが、貴女はそうならないでください。今ならまだ間に合います」
「リーナ様ぁぁぁ」
ついに大泣きになってしまった。
そんな彼女は泣きながら、事情を話し始めた。
ブヒトニー男爵様に俺が病気で寮に居る事を教えてしまった事を。
「そんな事?本当に過ぎた事だから気にしなくていいって。あと様付けやめようね。堅苦しいから」
「いえ、こんな失敗を寛大な心で許して頂けた、リーナ様を呼び捨てなんて滅相もございません、これからは誠心誠意尽くしたいと思います!」
そう言われると恥ずかしい。
尽くすってなんだよ。
俺はただ、レイラがトイレを我慢したのかと思ってただけなのに。
それにしても、それっぽい事を言わなくて良かった。
この体になってすぐの頃の恥ずかしい思い出を・・・。
*
「レイラ」
「なんでございましょうか、リーナ様」
「俺はお前が思っているほど、大した人間じゃない。現に───」
「そんな事はありません!リーナ様は偉大なお方です!」
「あ、だからだな、その」
「リーナ様の為ならなんだってします、靴磨きから、お洗濯まで!手で洗えと言うのでしたら手で、舐めて従えと言うのでしたら舐めましょう!」
「や、やめて?正気にもどってくれ・・・」
俺が起きた事に気が付いたセシリアが近づいて来て額に手を当てる。
「熱は下がった様ですね、よかった」
「本当に病気だったのか」
「さあ、どうでしょうね。それよりヒューゴ様とアルヴィン様と話をしてきました」
「どうだった」
「すぐに思い当たる事は無いそうで、調べて頂けると言っておられました」
「そうか、すまないな手間をかけて」
カーテンの隙間から夕陽が差し込み、それほどの時間を眠っていた事に驚いた。
しばらくするとレイラが訪ねて来た。
それはもう、親でも死んだのかと思うような暗い顔をしている。
「レイラ、どうしたの?何か思い悩んでる?」
「リーナ様・・・ごめんなさい」
そう言って、スカートをぎゅっと掴み何かを我慢している。
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そういうのすごくわかる。
俺は理解の深い父親だったからな、言わずとも分かる。
「レイラ、そんなに我慢してたら体に悪いですよ」
「リーナ様・・・・」
「そういうのは早めにいった方が良い。私だって、辛いと思ったらすぐにします。だって、生きてる以上、そういうのは仕方ないじゃないですか。私の事は気にしないでください。それを我慢して来てくれただけで、私は嬉しいですよ」
「リーナ様は何て懐の深い方なのでしょう・・・」
たかがこの程度で、そう言われるとは思わなかった。
さらに小刻みに震え、涙をぽろぽろと溢し出した彼女に俺は言葉の選択を誤ったのかと思ってしまう。
恥ずかしがっている場合ではないだろう、それならば、どうしてここに来たのだ。
「レイラ、本当に急いだ方がいいよ、溜め込むのは体に良くないですから、もしもの時は噂が変に広まりすれば貴女だけに留まらず、貴女のお姉さんや家にも迷惑がかかるかもしれません。そうなったら結婚にも影響でます、勿論、私はそうならない様に手を尽くします。でも、急いでいった方がいい。白状すると私だってそんな過ちを犯した事があります。それも今年の事です、恥ずかしいですね、こんな歳になって。でも仕方ないじゃないですか、してしまったものは、ね、誰しもそういう事をしてしまう時期というのがあると思うのです。ですが、貴女はそうならないでください。今ならまだ間に合います」
「リーナ様ぁぁぁ」
ついに大泣きになってしまった。
そんな彼女は泣きながら、事情を話し始めた。
ブヒトニー男爵様に俺が病気で寮に居る事を教えてしまった事を。
「そんな事?本当に過ぎた事だから気にしなくていいって。あと様付けやめようね。堅苦しいから」
「いえ、こんな失敗を寛大な心で許して頂けた、リーナ様を呼び捨てなんて滅相もございません、これからは誠心誠意尽くしたいと思います!」
そう言われると恥ずかしい。
尽くすってなんだよ。
俺はただ、レイラがトイレを我慢したのかと思ってただけなのに。
それにしても、それっぽい事を言わなくて良かった。
この体になってすぐの頃の恥ずかしい思い出を・・・。
*
「レイラ」
「なんでございましょうか、リーナ様」
「俺はお前が思っているほど、大した人間じゃない。現に───」
「そんな事はありません!リーナ様は偉大なお方です!」
「あ、だからだな、その」
「リーナ様の為ならなんだってします、靴磨きから、お洗濯まで!手で洗えと言うのでしたら手で、舐めて従えと言うのでしたら舐めましょう!」
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