上 下
78 / 193
5.モルバーン学園(一年生編)

5-7.

しおりを挟む
 飯に近いおやつを食べ終わると俺達はフラヴィアの部屋に戻った。
 今度は生徒会の2年生女子3名も一緒だ。
 10月からはこのうち最低一人が生徒会の主要ファーストになるのだから、仲良くしていて損はない。
 とはいえ、彼女ら3人は兄に群がっていたメンバーなのだから、仲良くしようという意味合いが兄目的だというのは明らかだ。

 彼女らの名前は、活発なウェンディ・ダーズリー、おっとりとしたサーシャ・ホップカーク、すこしツンが入ったデライラ・クルコヴァだという。
 覚えるのが面倒だったらモブA、B、Cでもいいくらいだ。
 そして、彼女ら主体で質問責めが始まった。

「カロリーナちゃんってダグラス先輩とどういう関係~?」
「どうもこうも、友達ですよ」
「それだけ?二人でこそこそ落ちあってデートしてるって噂だよ、なんでも城下町で一緒に居るところを見たって噂が」
「それは本当ですね、一緒に大図書館にいきましたから」

 その一言で突然、場の空気が変わり、2年が気持ち悪い程のニヤケ面に、フラヴィアまでも変な笑みを浮かべている。

「ほぉ~、それで、大図書館デートでなにしてたの?」
「というか、その後、出店で色々食べて回ってるよね。そのあたりどうなの?」
「そのままだと思いますよ?大図書館は人を紹介しただけ、そのお礼に食べ物をおごってもらっただけです」
「・・・と、いうのが表向きね」

 そんな勝手な推理でウンウンと頷く一同、ちなみにカレンはもう寝ている、俺も見習おうかな。
 だが、その空気の中、フラヴィアが新たな燃料を探り当てようとする。

「じゃあカロリーナちゃんはダグラスの事を男としてどう思ってるのだ?」
「男女の関係って事ですか?」
「そうだ、多少なりと認めてやる事はしているのだろう?」
「認めてというと、そうですね。なかなか頼りになる方になる可能性は秘めているという所でしょうか」
「なーんだ、煮え切らないなぁ」

 そういうと、フラヴィアはそっぽを向いて本を読み始め、女子トークは2年に丸投げをする。

「でも、この状況」
「うん、そうだよね」
「連れてこない?」
「うふふふ、いいのかな」

 3人がまるで悪だくみをしている様な感じで意思疎通をしているのだが、主語がないから意味が分からない。
 思わず眉をひそめてしまうのだが、彼女達は行動を起こしてしまう。

「カロリーナちゃんの相手はこのサーシャが努めます、二人は用事があるので、ちょっと席を外しますね」

 それから雑談ばかりが続き、少し飽きてきた頃に二人が戻って来た。
 更に一人の女子・・を連れて。

 だが、その新たに来た短髪の女子に見覚えがある。
 誰だったか分からずに、顔をジロジロ見てしまう。

「すまない、あまりみられると照れる」
「その声は、殿下!どうして女装を?化粧までして・・・」
「女子寮に入る条件だそうだ、その、カロリーナに会わせてくれるというので・・・」
「ルールはルールですよ。早めに帰ったほうがいいですよ、そうですよねフラヴィア様」
「まぁ、大目に見てやってもいいのではないか?なんせ婚約者がいるのだからな、どうせ毎年何人かがやっている事だ、だが、1年の最初の違反者が殿下だというのもまた面白いな、捕まってみるか?ふはは」
「やめてください、捕まえるなら、そこの二人を捕まえてくださいよ」

 アレグサンダーが嫌がるのをフラヴィアは楽しんでいるのか、読んでいた本を閉じて、またもや会話に参加し始める。
 その顔は獲物をみつけた雌豹を彷彿とさせている。

「なぁ、アレグサンダーは婚約者が男とデートしていればどう思う?」
「そんな、俺と言う者がいながら・・・、って本当にデートなのですか?にわかに信じがたいですね」
「アレグサンダー様、実際はデートではありませんよ、ただの付き添いです」
「そうか、ただの付き添いか・・・付き添いか・・・」
「アレグサンダー様?」

 殿下の様子がおかしい、何か会話の意選択肢を誤ったのだろうか?

「考えても見れば、俺、カロリーナとデートした事がない、だというのに一緒に出かけたと言うのか?」
「いや、だって婚約者ってだけでデートの義務はないでしょ」
「でも出歩くくらいはいいじゃないか!俺だってデートしたいんだ!もう我慢ならん、今週デートする!決めたからな!」
「はいはい、迷宮でもダンジョンでも付き合いますよ」
「あ、いや、普通に街中がいいのだが、それじゃあだめか?」
「それはちょっと・・・面倒だなぁ」

 というかツマラナイな、実際、コイツと関係を深めたくないし、諦めて欲しい。

「じゃあ、デートしてくれたら、ドワーフが作った名刀を上げるから!」
「乗った!」
「やったー!」
「あ・・・・あー・・・しまった・・・」

 *

「カロリーナちゃん、実際の所、殿下とうまく行ってないのか?公爵の念願だろう?」
「うまく行ってる様に見えますか?もう散々なんですよ、婚約も無理矢理だったし、強引に迫って来るしで」
「性欲がないよりはマシであろう?代継問題に困るぞ」
「できればだれとも添い遂げたくないですね」
「ふむ、じゃあ私が寝取ってしまっても構わぬのだな?」
「ええ、歓迎しますよ」
「・・・本気・・・・なのか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

本の虫令嬢は幼馴染に夢中な婚約者に愛想を尽かす

初瀬 叶
恋愛
『本の虫令嬢』 こんな通り名がつく様になったのは、いつの頃からだろうか?……もう随分前の事で忘れた。 私、マーガレット・ロビーには婚約者が居る。幼い頃に決められた婚約者、彼の名前はフェリックス・ハウエル侯爵令息。彼は私より二つ歳上の十九歳。いや、もうすぐ二十歳か。まだ新人だが、近衛騎士として王宮で働いている。 私は彼との初めての顔合せの時を思い出していた。あれはもう十年前だ。 『お前がマーガレットか。僕の名はフェリックスだ。僕は侯爵の息子、お前は伯爵の娘だから『フェリックス様』と呼ぶように」 十歳のフェリックス様から高圧的にそう言われた。まだ七つの私はなんだか威張った男の子だな……と思ったが『わかりました。フェリックス様』と素直に返事をした。 そして続けて、 『僕は将来立派な近衛騎士になって、ステファニーを守る。これは約束なんだ。だからお前よりステファニーを優先する事があっても文句を言うな』 挨拶もそこそこに彼の口から飛び出したのはこんな言葉だった。 ※中世ヨーロッパ風のお話ですが私の頭の中の異世界のお話です ※史実には則っておりませんのでご了承下さい ※相変わらずのゆるふわ設定です ※第26話でステファニーの事をスカーレットと書き間違えておりました。訂正しましたが、混乱させてしまって申し訳ありません

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

子持ち専業主婦のアラサー腐女子が異世界でチートイケメン貴族になって元の世界に戻るために青春を謳歌する話

きよひ
ファンタジー
 主人公、シン・デルフィニウムは帝国の有力な公爵家の長男で、眉目秀麗な魔術の天才。  何不自由なく人生を謳歌してきた彼は、実は現実世界で専業主婦をしていたアラサーの腐女子が異世界転移してしまった姿だった!    元の世界へ戻るために提示された条件は、ただ一つ。 「この世界で成人するまで生きること」    現在15歳。この世界の成人まであと3年。  なんとしても平穏無事に学生生活を終えたいシンであったが、学校の入学式でこの国の皇太子とトラブルを起こしてしまい...!?  皇太子に説教したり、乙女ゲームのヒロインのような少女と仲良くなったり、仲良くなる生徒が美形ばかりだったり、BL妄想をしたり、微笑ましく友人の恋の応援をしたり学園イベントに参加したり。    異世界のイケメン貴族ってとっても楽しい!    大人が学生たちを眺めながら内心ツッコミ、でも喜怒哀楽を共にして。  ドタバタほのぼのとゆるーく学生生活を送って卒業し、成人して元の世界に戻りたい物語。 ※主人公は恋愛に参加しません※ ※BLの物語ではありませんが、主人公が腐女子設定の為、BLを妄想したり、登場人物の行動をBL的に楽しむ描写があります。 ※BLだけでなくGLを楽しむ描写もある予定です。 ※実際の恋愛は男女のみの予定です。 ※メインではありませんが戦闘描写、流血描写がある時は注意書きします。

乙女ゲームに悪役転生な無自覚チートの異世界譚

水魔沙希
ファンタジー
モブに徹していた少年がなくなり、転生したら乙女ゲームの悪役になっていた。しかも、王族に生まれながらも、1歳の頃に誘拐され、王族に恨みを持つ少年に転生してしまったのだ! そんな運命なんてクソくらえだ!前世ではモブに徹していたんだから、この悪役かなりの高いスペックを持っているから、それを活用して、なんとか生き残って、前世ではできなかった事をやってやるんだ!! 最近よくある乙女ゲームの悪役転生ものの話です。 だんだんチート(無自覚)になっていく主人公の冒険譚です(予定)です。 チートの成長率ってよく分からないです。 初めての投稿で、駄文ですが、どうぞよろしくお願いいたします。 会話文が多いので、本当に状況がうまく伝えられずにすみません!! あ、ちなみにこんな乙女ゲームないよ!!という感想はご遠慮ください。 あと、戦いの部分は得意ではございません。ご了承ください。

狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか!  【第15回ファンタジー小説大賞の爽快バトル賞を受賞しました】 ここは異世界エールドラド。その中の国家の1つ⋯⋯グランドダイン帝国の首都シュバルツバイン。  主人公リックはグランドダイン帝国子爵家の次男であり、回復、支援を主とする補助魔法の使い手で勇者パーティーの一員だった。  そんな中グランドダイン帝国の第二皇子で勇者のハインツに公衆の面前で宣言される。 「リック⋯⋯お前は勇者パーティーから追放する」  その言葉にリックは絶望し地面に膝を着く。 「もう2度と俺達の前に現れるな」  そう言って勇者パーティーはリックの前から去っていった。  それを見ていた周囲の人達もリックに声をかけるわけでもなく、1人2人と消えていく。  そしてこの場に誰もいなくなった時リックは⋯⋯笑っていた。 「記憶が戻った今、あんなワガママ皇子には従っていられない。俺はこれからこの異世界を謳歌するぞ」  そう⋯⋯リックは以前生きていた前世の記憶があり、女神の力で異世界転生した者だった。  これは狙って勇者パーティーから追放され、前世の記憶と女神から貰った力を使って無双するリックのドタバタハーレム物語である。 *他サイトにも掲載しています。

スキル【海】ってなんですか?

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜 ※書籍化準備中。 ※情報の海が解禁してからがある意味本番です。  我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。  だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。  期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。  家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。  ……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。  それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。  スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!  だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。  生命の海は思った通りの効果だったけど。  ──時空の海、って、なんだろう?  階段を降りると、光る扉と灰色の扉。  灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。  アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?  灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。  そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。  おまけに精霊の宿るアイテムって……。  なんでこんなものまで入ってるの!?  失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!  そっとしておこう……。  仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!  そう思っていたんだけど……。  どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?  そんな時、スキルが新たに進化する。  ──情報の海って、なんなの!?  元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?

氷の貴婦人

恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。 呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。 感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。 毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

処理中です...