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5.モルバーン学園(一年生編)

5-3.ロイヤルカフェテリアにて

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 翌日、昼食を終えた俺とアレグサンダーはロイヤルカフェテリアに出向いた。
 密室と聞いていたので狭い空間をイメージしていたのだが、どうやら部屋のサイズもお貴族様向けらしい。
 広い空間に、いくつかのグループが形成されており、食事をしている者は誰一人としていない。
 各々がゲームをしたり本を読んだりと自由に過ごしている。
 そしてまるで羽ばたくかの様に両手を広げ近づく者が居た。

「ようこそ、生徒会へ、僕は生徒会長のオルドリッジ・サンチェスだ、よろしく」

 爽やかな笑顔、光零れる笑みは俺は何か言いようのない不安を感じていた。
 それが権威なのかカリスマかは兎も角、事を構えて良い相手ではない事は分かる。
 見た目は強いとは思えないのだが・・・てのは人の事言えんな。
 そう、コイツは強い───
 一度お手合わせ願いたいものだ。

「お招きにあずかりまして誠にありがとうございます」

 アレグサンダーの言葉に合わせ、スカートの左右の裾を摘まみ上げて挨拶した。
 婚約者である以上、一歩下がってアレグサンダーの方が立場が強い事を意識するのが礼儀だそうだ。
 妻が聞けば手あたり次第に掴める物を投げて来そうな状況だ。
 そういう、女性はこうあるべき見たいなのを嫌いだったからな。

「分かっていると思うけど、君たちを補助要員サードとして招待した。来てくれたと言う事は承諾しれくれと言う事かい?」
「はい、謹んで」
「では、このバッチを渡しておくよ、制服に常に着けておくように」

 渡されたのは『頭脳』を意識した人の横顔に角度によっては見える「Ⅲ」という文字が入った橙色のバッチだった。
 生徒会長は少し装飾が派手になった金色、他の人達は貰った物と色違いの金色と銀色だった。
 そこからすると橙色は銅色と言うべきなのかも知れない。

 この状況で注目を浴びるのは仕方がない事ではあるが、何人かは目が合うたびに手を振ってきた。
 その中に、周りに女を侍らせつつも読書に勤しんでいる兄、ブレイクがこちらに気付き手を振った。
 ここで手を振るだけで声を掛けてこないのは生徒会長が話しているからだ。
 それは絶対的な上下関係があると言う事を示している。
 言うなれば、統率が取れてた軍隊とでも言うのだろうか。

 そして、自己紹介が始まるという段になって一つだけ注釈が入った。
 学園内で爵位は聞かれでもしない限り言わない方針で、呼び合いも基本は名前だけでファミリーネームは省略するそうだ。
 俺の場合であれば「カロリーナ・アバークロンビー」と名乗り、「カロリーナ」と呼ばれると言う具合だ。
 それは、学内に爵位での上下関係を持ち込まない為だという、それが例え平民であっても平等に扱いたいと言う理想論だ。

 最初の自己紹介は主要ファーストメンバーから──
 副会長はフラヴィア・リード、黄金に輝く長い髪が美しい女性だが、少々目つきが鋭い。
 こりゃあ一人二人っててもおかしくない程の眼力を持っている。

 会計はダグラス・ブライアント、横に細長い眼鏡をかけた知的に見える男性。
 如何にも事務向きと言った感じで細かい作業が得意そうだ。

 書記はカレン・カミングス、他の者と比べて少し幼く見える、小動物を彷彿とさせる女性。
 かわいらしい丸眼鏡は大人しい感じがした。

 以上の4名が3年生、次に2年生が6人、うち一人が俺の兄だ。
 2年については追々紹介しよう。

 生徒会であれば、庶務というポジションがありそうな物だが、そのポジションを2年生全員で担うらしい。
 1年の採用予定は8名、その人選は今もなお進行中らしい。
 今は働いている様には見えないがな。

 尚、1年は補助要員おてつだいさん風紀委員おまわりさんな役割で動くらしい。

 *

「兄よ、彼女達のどれが本命なのだ?」
「全員だよ。甲乙つけるなんて罪な事だ」
「ほう、ならその中に俺が入れば、誰を選ぶのだ」
「もちろん、カロリーナしか勝たん」
「うん?何か変な言い方だな、どういう意味だ?」
「お前が最高だって事だよ。最近流行り話し方だよ」
「若者言葉か、難しいよな」
「わか・・・」
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