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3.王宮
3-12.
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バタンッ
再びドアが勢いよく開いた。
「カロリーナ!助けに来たよ!」
兄、ブレイクだ。
走って来たのか、汗が顎からボタボタと落ちている。
「兄よ、見ての通り俺は無事だ」
「無事なものか!あーもう、こんなにも痣ついちゃってるじゃないか!今すぐ大聖堂に行くぞ!」
「あ、はい。では王太子殿下、助けてくれてありがとうな」
「いや、こちらこそ…」
まるで荷物を担ぐ様に俺を持ち運んだ兄は全力で走った。
が、どうにも体力不足な様で、しばらく走ると俺を降ろして息を整えていた。
「兄よ、ドンマイ。無理するなよな」
「仕方ないだろ、俺は兄なんだから」
「それもそうだな、兄よ、来てくれて嬉しいぞ」
「本当に俺がどれだけ心配したか…」
「俺は身代金の為の人質だったのだろう?それなら安全だっただろうに」
「身代金?何のことだ?やつらは王女殿下を連れて立てこもり、外に向かっていったんだよ。『もう一人の人質はみせしめにその血を汚してやる、ハーフオークに子でも産ませてな!』ってね。大丈夫だったよね?」
「ああ、結局何もされてない、大丈夫だ」
なんつー事を!
まさか貞操の危機だったとは、全く思いもよらなかったぞ。
こんな幼い姿に欲情できる奴がいる事自体が驚愕だ。
世の中は広いな。
しかし、ただの太ったおっさんかと思ってたのが、ハーフオークだったとはな。
王太子が殺したから顔も見てなかった。
……ところでハーフオークって食べられるのだろうか?
それから兄と手を繋ぎ、大聖堂に向かって歩いた。
途中、出店から漂う甘い匂いに俺は惹かれてしまった。
「兄よ、これ食べたい」
「いいぞ、買ってやる。店主、二本くれ」
「まいどありっ」
紙に包まれたそれはドーナツこん棒といい、少しこん棒ににた感じの丸くないドーナツだ。
はむっと咥えると、暴力的な黒砂糖の甘さが口の中に広がる。
これがまた癖になりそうなのがいいんだよな。
「兄、ありがとう、これ美味いな」
「ああ、こうやって妹と王都でデートできるなんて思わなかったよ」
「王子が連れ出してくれたお陰かもな。しかし、俺はこのまま婚約者でいいのだろうか」
「ウィリアムはそれを望んでるようだね。結婚たってまだまだ先なんだから、気にする事は無いよ」
本当にいいのだろうか。
そもそもこの体、まともにな人間なのかも怪しいのに。
それに王子と結婚とかイメージできないんだよな。
まぁ、夜伽くらいは腹くくってやるしかねーかな。
全然想像つかねーけど。
「出来たら誰とも結婚したくないんだよなぁ」
「いいんじゃないか?俺がずっと面倒みてやるよ」
「いや、兄はちゃんと結婚しろ。それが家長の務めだからな!」
「それでも面倒くらい見れるよ。大丈夫」
*
「兄よ、大聖堂についたぞ」
「もごもごもご、もげん、ごっぎょっぎょまっげ」
「口に物を入れて喋るんじゃない。というか、買い過ぎだ。それに大聖堂の中に食べ物を持ち込んではいけないと知っているだろうに」
「もご~」
「その細い体のどこに、それだけの食べ物が入るのやらだ、少しは筋肉に変えた方がいいのではないか?」
「(もぐごっくんっ)いいんだよ、それだけ頭脳に使うんだから」
「ふふ、兄はいつもそうだな」
「それより王太子にはあまり近づかないほうがいいよ」
「どうしてだ?」
「また滑って転んで池に落ちる何てことになったら大変だからだよ」
「まぁ、もうないだろう、大丈夫だ」
「そうだ、今日は俺の寮に泊まれ。学園も案内してやるぞ」
「本当か!?」
再びドアが勢いよく開いた。
「カロリーナ!助けに来たよ!」
兄、ブレイクだ。
走って来たのか、汗が顎からボタボタと落ちている。
「兄よ、見ての通り俺は無事だ」
「無事なものか!あーもう、こんなにも痣ついちゃってるじゃないか!今すぐ大聖堂に行くぞ!」
「あ、はい。では王太子殿下、助けてくれてありがとうな」
「いや、こちらこそ…」
まるで荷物を担ぐ様に俺を持ち運んだ兄は全力で走った。
が、どうにも体力不足な様で、しばらく走ると俺を降ろして息を整えていた。
「兄よ、ドンマイ。無理するなよな」
「仕方ないだろ、俺は兄なんだから」
「それもそうだな、兄よ、来てくれて嬉しいぞ」
「本当に俺がどれだけ心配したか…」
「俺は身代金の為の人質だったのだろう?それなら安全だっただろうに」
「身代金?何のことだ?やつらは王女殿下を連れて立てこもり、外に向かっていったんだよ。『もう一人の人質はみせしめにその血を汚してやる、ハーフオークに子でも産ませてな!』ってね。大丈夫だったよね?」
「ああ、結局何もされてない、大丈夫だ」
なんつー事を!
まさか貞操の危機だったとは、全く思いもよらなかったぞ。
こんな幼い姿に欲情できる奴がいる事自体が驚愕だ。
世の中は広いな。
しかし、ただの太ったおっさんかと思ってたのが、ハーフオークだったとはな。
王太子が殺したから顔も見てなかった。
……ところでハーフオークって食べられるのだろうか?
それから兄と手を繋ぎ、大聖堂に向かって歩いた。
途中、出店から漂う甘い匂いに俺は惹かれてしまった。
「兄よ、これ食べたい」
「いいぞ、買ってやる。店主、二本くれ」
「まいどありっ」
紙に包まれたそれはドーナツこん棒といい、少しこん棒ににた感じの丸くないドーナツだ。
はむっと咥えると、暴力的な黒砂糖の甘さが口の中に広がる。
これがまた癖になりそうなのがいいんだよな。
「兄、ありがとう、これ美味いな」
「ああ、こうやって妹と王都でデートできるなんて思わなかったよ」
「王子が連れ出してくれたお陰かもな。しかし、俺はこのまま婚約者でいいのだろうか」
「ウィリアムはそれを望んでるようだね。結婚たってまだまだ先なんだから、気にする事は無いよ」
本当にいいのだろうか。
そもそもこの体、まともにな人間なのかも怪しいのに。
それに王子と結婚とかイメージできないんだよな。
まぁ、夜伽くらいは腹くくってやるしかねーかな。
全然想像つかねーけど。
「出来たら誰とも結婚したくないんだよなぁ」
「いいんじゃないか?俺がずっと面倒みてやるよ」
「いや、兄はちゃんと結婚しろ。それが家長の務めだからな!」
「それでも面倒くらい見れるよ。大丈夫」
*
「兄よ、大聖堂についたぞ」
「もごもごもご、もげん、ごっぎょっぎょまっげ」
「口に物を入れて喋るんじゃない。というか、買い過ぎだ。それに大聖堂の中に食べ物を持ち込んではいけないと知っているだろうに」
「もご~」
「その細い体のどこに、それだけの食べ物が入るのやらだ、少しは筋肉に変えた方がいいのではないか?」
「(もぐごっくんっ)いいんだよ、それだけ頭脳に使うんだから」
「ふふ、兄はいつもそうだな」
「それより王太子にはあまり近づかないほうがいいよ」
「どうしてだ?」
「また滑って転んで池に落ちる何てことになったら大変だからだよ」
「まぁ、もうないだろう、大丈夫だ」
「そうだ、今日は俺の寮に泊まれ。学園も案内してやるぞ」
「本当か!?」
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