上 下
36 / 193
3.王宮

3-7.大聖堂にて

しおりを挟む
 色々あったけど、片方は名無しの中では上位の天使になったらしい。
 ふーん。と言った感じである。
 正直よくわからん。
 きっと勇者特権みたいな感じで、公爵特権みたいなのが有るのだろう。

 光も収まった事で、ヒューゴも近づいて来た。

「やあ、やっと姿を見る事ができたよ、初めまして。ヒューゴだ」
「よろしく、カロリーナと呼んでくれ」
「それで僕に何の用だい?」
「率直に聞くけど勇者パーティーからの離脱理由を教えてくれないか?」
「──それは彼が神を侮辱したからだ」
「そこを詳しく知りたいんだ」
「どうしてそこまで?」
「いま、俺は勇者に勧誘を受けていて、それを断りたいというのもあるが、奴のした事を白日の下に晒したいんだ」
「ふむ、そうですか」

 大司祭様ともなると立場もあるし、関わりたくない事も分かる。
 しかし、陛下に報告できない程の何かがあったとすれば、俺も知りたいんだ。

「まぁ、いいでしょう」
「助かる」
「あの人は『空飛ぶパスタ・モンスター教』を信仰していると言うのだよ。他の宗教は信仰できない、つまりパトロネス・システムを受け入れないと言う事なのですよ、勇者がどれだけ強靭だとしてもこれでは何も成し得ないでしょう、つまり彼は何もする気がないのですよ、それが許されると思いますか?」

 その言葉に俺は即答できなかった。
 妻もパトロネス・システムは使いたくない、信仰変えたくないと言っていた。
 そもそも何かだけ・・を信仰しない、無宗教であり、全宗教であると。
 すべての宗教を満遍なく信仰するというのが妻の主張だった。

 恐らくこの国の風習に染まりたくなくて、ちょっと意固地になっただけだと思っていた。
 どのみち戦闘する訳ではないので、それを良しとしたのだ。
 だが、勇者がそれでは困る。話が全然違う。

「確かに、勇者であったとしても、成長が望めないなら意味はないな」
「国教、パトロネス教を信じない者が居ること自体が罪だというのに…」

 すまんな。
 妻と会う機会が無くて良かった。

「そうだ、君にはこれを上げよう」
「お、何だ?」
「ただのネックレスだよ。ちょっとした御まじないがかかっている。もし勇者と行動を共にするなら付けておいた方がいい」
「おう、アリガトな」

 何のまじないかは知らないが、くれる物は貰っておく。
 何やら宝石らしきものが嵌まっていて綺麗だしな。

「ところで、加護が二つ貰えるって普通の事なのか?」
「いや、え?そんな事が?いやいや、何の冗談ですか」
「さっき凄い光があったろ、あれがそうみたいなんだよ、びっくりだよな」
「ほぉ、また今度ゆっくりお話しさせてください。君に興味が湧きました」
「あ、はい」

 *

「興味が無い相手にネックレス渡したみたいだけど、本当にご利益あるんだろうな?」
「何言ってるんですか、ただのおまじないですよ」
「そうか、まぁ信じるけどさ」
「知ってます?御まじないって『御呪い』って書くんですよ。こわいですね」
「呪ったとか、まじかよ」
「ははは、冗談ですよ。たぶん」
「おおおおい!多分ってなんだよ!」
「(この子、なんだかアイツに似てるなぁ…)」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花
ファンタジー
 15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。  どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。  そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。  しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。 「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」  だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。  受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。  アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。 2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。

追放された最強令嬢は、新たな人生を自由に生きる

灯乃
ファンタジー
旧題:魔眼の守護者 ~用なし令嬢は踊らない~ 幼い頃から、スウィングラー辺境伯家の後継者として厳しい教育を受けてきたアレクシア。だがある日、両親の離縁と再婚により、後継者の地位を腹違いの兄に奪われる。彼女は、たったひとりの従者とともに、追い出されるように家を出た。 「……っ、自由だーーーーーーっっ!!」 「そうですね、アレクシアさま。とりあえずあなたは、世間の一般常識を身につけるところからはじめましょうか」 最高の淑女教育と最強の兵士教育を施されたアレクシアと、そんな彼女の従者兼護衛として育てられたウィルフレッド。ふたりにとって、『学校』というのは思いもよらない刺激に満ちた場所のようで……?

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

住所不定の引きこもりダンジョン配信者はのんびりと暮らしたい〜双子の人気アイドル配信者を助けたら、目立ちまくってしまった件〜

タジリユウ
ファンタジー
外の世界で仕事やお金や家すらも奪われた主人公。 自暴自棄になり、ダンジョンへ引きこもってひたすら攻略を進めていたある日、孤独に耐えられずにリスナーとコメントで会話ができるダンジョン配信というものを始めた。 数少ないリスナー達へ向けて配信をしながら、ダンジョンに引きこもって生活をしていたのだが、双子の人気アイドル配信者やリスナーを助けることによってだんだんと… ※掲示板回は少なめで、しばらくあとになります。

悪役令嬢ですが最強ですよ??

鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。 で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。 だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw 主人公最強系の話です。 苦手な方はバックで!

かわいいは正義(チート)でした!

孤子
ファンタジー
 ある日、親友と浜辺で遊んでからの帰り道。ついていない一日が終わりを告げようとしていたその時に、親友が海へ転落。  手を掴んで助けようとした私も一緒に溺れ、意識を失った私たち。気が付くと、そこは全く見知らぬ浜辺だった。あたりを見渡せど親友は見つからず、不意に自分の姿を見ると、それはまごうことなきスライムだった!  親友とともにスライムとなった私が異世界で生きる物語。ここに開幕!(なんつって)

本の虫令嬢は幼馴染に夢中な婚約者に愛想を尽かす

初瀬 叶
恋愛
『本の虫令嬢』 こんな通り名がつく様になったのは、いつの頃からだろうか?……もう随分前の事で忘れた。 私、マーガレット・ロビーには婚約者が居る。幼い頃に決められた婚約者、彼の名前はフェリックス・ハウエル侯爵令息。彼は私より二つ歳上の十九歳。いや、もうすぐ二十歳か。まだ新人だが、近衛騎士として王宮で働いている。 私は彼との初めての顔合せの時を思い出していた。あれはもう十年前だ。 『お前がマーガレットか。僕の名はフェリックスだ。僕は侯爵の息子、お前は伯爵の娘だから『フェリックス様』と呼ぶように」 十歳のフェリックス様から高圧的にそう言われた。まだ七つの私はなんだか威張った男の子だな……と思ったが『わかりました。フェリックス様』と素直に返事をした。 そして続けて、 『僕は将来立派な近衛騎士になって、ステファニーを守る。これは約束なんだ。だからお前よりステファニーを優先する事があっても文句を言うな』 挨拶もそこそこに彼の口から飛び出したのはこんな言葉だった。 ※中世ヨーロッパ風のお話ですが私の頭の中の異世界のお話です ※史実には則っておりませんのでご了承下さい ※相変わらずのゆるふわ設定です ※第26話でステファニーの事をスカーレットと書き間違えておりました。訂正しましたが、混乱させてしまって申し訳ありません

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

処理中です...