30 / 193
3.王宮
3-1.アバークロンビー家
しおりを挟む
俺はブラックドラゴンのヴァンデに乗って公爵家の庭に降り立った。
明日は1の日、それに合わせの帰省なのだが俺としては面倒極まりないだけだ。
願わくばヴァンデの背中に乗って世界中を飛び回りたいものだ。
「よしよし、ありがとうなヴァンデ、また頼むよ」
『グワァァァァ!』
魔力を指先経由でヴァンデに流し込む。
ヴァンデはそれを食事とし喜んでくれる。
結局、俺以外の誰にも懐かないなんて考えもしなかった。
俺が死んだらどうなるのだろうかなんて、少し心配になる。
俺の到着を知って屋敷からわらわらと人が出てくる。
ここの使用人たちもヴァンデに慣れたのか、居るのがさも当たり前かの様に近寄って来た。
「「お嬢様、お帰りなさいませ」」
「今帰ったぞ、父よ」
「お帰り、カロリーナちゃん。リーナ食堂に送ったドレスを受け取ってくれたのだな、似合ってるぞ」
「丁度、学院にも行きたかったから、丁度良かったよ。ありがとな」
「それにしても、食堂を始めると聞いて驚いたよ。詳しい話は中でしようじゃないか」
「ああ、そうだな。おっとデライラ(※メイド長)、これお土産だ、皆で食べてくれ」
「ありがとうございます、まぁ、突然団子!これ私も好きなんですよ!」
「それは良かった」
そうして屋敷の中に入り廊下を歩いてる最中にグレッグとあいさつを交わす。
そして重大な事を知らされた。
「ウィリアム・フィッツロイ様が来られています」
「何!?どうしてそうなる?」
「お嬢様が1カ月間も恋文を無視し続けた結果でございましょうな。痺れを切らしてやってきた訳ですよ。なんとも御労しい」
「そう言えば忘れていた、あぁ悪い事をしたな」
「そうでなくても、お嬢様は死んでいた期間……コホン……昏睡状態にあった期間がありましたから、心配だったのでしょう」
「世間一般ではそんな事になってたのか」
「そうです、死んだことは隠され生き返った時には奇跡の生還として国内中に大々的に報じられたのですよ」
どうりで学院での俺の知名度が高い訳だな。
俺は貴族の事はとんと感心が無かったので、気にしてなかったがこれからは多少なりとアンテナを広げないといけないのだろう。
「それもう一つ」
「まだあるのか!?」
「ブレイク様、お嬢様の兄上様がお帰りになっておられます」
「客が多いな!」
「月に一度の御帰省に合わせたのかと」
ちなみに、俺が死んだ事自体を知っているのは父親とグレッグと一部の使用人だけらしい。
周りには記憶喪失という設定になっているのだとか。
ここにきて面倒な事が2つ…いや、3つか、先ずはスイーツからか!?
ダンダンっガッ。
と言った感じ(?)に、アップルパイを作る。
あとは20分待てば出来上がりと言う段になって、兄がやって来た。
「良い匂いだな、早く食べさせろよ」
「兄よ、もうすぐ出来上がるから待ってくれ。父と一緒に食べよう、ついでにウィリアムも呼ぼう」
アップルパイは5ホールも焼いたんだ、使用人たちの分も残るだろう。
と、思ってたさ。
いざ実食となり、父、ブレイク、ジェイク、ウィリアムと揃い、一斉に食べ始める。
結構大きく作ったはずなのに、一人4分の1切れも食べやがる。
流石に食べすぎだろうと思っていたが、全員が1ホールは自分の物だと主張を始めた。
「まてまて、俺、味見してないのだが」
「また作ればいいだろう」
「あ、はい、そうですね」
だが、そこで弟が遠慮してくれて1ホールが浮いた。
しかも、「はい、あーん」とか言いながら、自分の分を半分程俺にくれる。
マジ、弟天使だわ。娘の次くらいに愛おしいな。
ついつい撫でまくってしまった。もぐもぐしながら。
「兄よ、そんなに食べると太るぞ」
「勉強で頭を使うから、これ位の甘さが丁度いいんだよ」
「だがホールは食べすぎだ」
「他の奴らと、頭を使う量が違うんだ、これくらい食べないとばててしまうのだよ」
むぅ。
自分の主張を曲げない奴め……。
少し眼鏡がずれるのも気にせず食べ続けてやがる。
「父よ、それだけ食べると病気になるぞ、少しは自重しろ」
「ヤダヤダ!これはパパのだもん!ずっと保存して眺めるんだもん!」
「いやいや、食えよ、生もんだぞ」
「ちゃんと保存魔法使うから大丈夫だもん!}
むぅ。
駄々っ子め……。
「殿下……」
「僕の!」
「殿下……」
「寂しかったんだからな!これくらいいいだろ?」
むぅ。負けた。
*
「爺や、残った1ホールを使用人の皆で分けてくれ」
「ヤダヤダ!これ僕のだもん!」
「殴るぞ?」
「ほっほっほ、冗談ですよ冗談。ですが、流石に人数で割れませんな」
「そうだなぁ、ホールにしたのは失敗だったか」
「もう3ホール作るのはどうでしょう」
「それもそうか……、それで爺やはどれくらい食うつもりなんだ?」
「1ホ……」
「年を考えろって、お前に死なれたら困るんだからな」
「お嬢様……(きゅんっっ♡)」
そう言えば、1の日は明日だった。
明日は1の日、それに合わせの帰省なのだが俺としては面倒極まりないだけだ。
願わくばヴァンデの背中に乗って世界中を飛び回りたいものだ。
「よしよし、ありがとうなヴァンデ、また頼むよ」
『グワァァァァ!』
魔力を指先経由でヴァンデに流し込む。
ヴァンデはそれを食事とし喜んでくれる。
結局、俺以外の誰にも懐かないなんて考えもしなかった。
俺が死んだらどうなるのだろうかなんて、少し心配になる。
俺の到着を知って屋敷からわらわらと人が出てくる。
ここの使用人たちもヴァンデに慣れたのか、居るのがさも当たり前かの様に近寄って来た。
「「お嬢様、お帰りなさいませ」」
「今帰ったぞ、父よ」
「お帰り、カロリーナちゃん。リーナ食堂に送ったドレスを受け取ってくれたのだな、似合ってるぞ」
「丁度、学院にも行きたかったから、丁度良かったよ。ありがとな」
「それにしても、食堂を始めると聞いて驚いたよ。詳しい話は中でしようじゃないか」
「ああ、そうだな。おっとデライラ(※メイド長)、これお土産だ、皆で食べてくれ」
「ありがとうございます、まぁ、突然団子!これ私も好きなんですよ!」
「それは良かった」
そうして屋敷の中に入り廊下を歩いてる最中にグレッグとあいさつを交わす。
そして重大な事を知らされた。
「ウィリアム・フィッツロイ様が来られています」
「何!?どうしてそうなる?」
「お嬢様が1カ月間も恋文を無視し続けた結果でございましょうな。痺れを切らしてやってきた訳ですよ。なんとも御労しい」
「そう言えば忘れていた、あぁ悪い事をしたな」
「そうでなくても、お嬢様は死んでいた期間……コホン……昏睡状態にあった期間がありましたから、心配だったのでしょう」
「世間一般ではそんな事になってたのか」
「そうです、死んだことは隠され生き返った時には奇跡の生還として国内中に大々的に報じられたのですよ」
どうりで学院での俺の知名度が高い訳だな。
俺は貴族の事はとんと感心が無かったので、気にしてなかったがこれからは多少なりとアンテナを広げないといけないのだろう。
「それもう一つ」
「まだあるのか!?」
「ブレイク様、お嬢様の兄上様がお帰りになっておられます」
「客が多いな!」
「月に一度の御帰省に合わせたのかと」
ちなみに、俺が死んだ事自体を知っているのは父親とグレッグと一部の使用人だけらしい。
周りには記憶喪失という設定になっているのだとか。
ここにきて面倒な事が2つ…いや、3つか、先ずはスイーツからか!?
ダンダンっガッ。
と言った感じ(?)に、アップルパイを作る。
あとは20分待てば出来上がりと言う段になって、兄がやって来た。
「良い匂いだな、早く食べさせろよ」
「兄よ、もうすぐ出来上がるから待ってくれ。父と一緒に食べよう、ついでにウィリアムも呼ぼう」
アップルパイは5ホールも焼いたんだ、使用人たちの分も残るだろう。
と、思ってたさ。
いざ実食となり、父、ブレイク、ジェイク、ウィリアムと揃い、一斉に食べ始める。
結構大きく作ったはずなのに、一人4分の1切れも食べやがる。
流石に食べすぎだろうと思っていたが、全員が1ホールは自分の物だと主張を始めた。
「まてまて、俺、味見してないのだが」
「また作ればいいだろう」
「あ、はい、そうですね」
だが、そこで弟が遠慮してくれて1ホールが浮いた。
しかも、「はい、あーん」とか言いながら、自分の分を半分程俺にくれる。
マジ、弟天使だわ。娘の次くらいに愛おしいな。
ついつい撫でまくってしまった。もぐもぐしながら。
「兄よ、そんなに食べると太るぞ」
「勉強で頭を使うから、これ位の甘さが丁度いいんだよ」
「だがホールは食べすぎだ」
「他の奴らと、頭を使う量が違うんだ、これくらい食べないとばててしまうのだよ」
むぅ。
自分の主張を曲げない奴め……。
少し眼鏡がずれるのも気にせず食べ続けてやがる。
「父よ、それだけ食べると病気になるぞ、少しは自重しろ」
「ヤダヤダ!これはパパのだもん!ずっと保存して眺めるんだもん!」
「いやいや、食えよ、生もんだぞ」
「ちゃんと保存魔法使うから大丈夫だもん!}
むぅ。
駄々っ子め……。
「殿下……」
「僕の!」
「殿下……」
「寂しかったんだからな!これくらいいいだろ?」
むぅ。負けた。
*
「爺や、残った1ホールを使用人の皆で分けてくれ」
「ヤダヤダ!これ僕のだもん!」
「殴るぞ?」
「ほっほっほ、冗談ですよ冗談。ですが、流石に人数で割れませんな」
「そうだなぁ、ホールにしたのは失敗だったか」
「もう3ホール作るのはどうでしょう」
「それもそうか……、それで爺やはどれくらい食うつもりなんだ?」
「1ホ……」
「年を考えろって、お前に死なれたら困るんだからな」
「お嬢様……(きゅんっっ♡)」
そう言えば、1の日は明日だった。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
[完結:1話 1分読書]幼馴染を勇者に寝取られた不遇職の躍進
無責任
ファンタジー
<毎日更新 1分読書> 愛する幼馴染を失った不遇職の少年の物語
ユキムラは神託により不遇職となってしまう。
愛するエリスは、聖女となり、勇者のもとに行く事に・・・。
引き裂かれた関係をもがき苦しむ少年、少女の物語である。
アルファポリス版は、各ページに人物紹介などはありません。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
この物語の世界は、15歳が成年となる世界観の為、現実の日本社会とは異なる部分もあります。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる